前世の記憶が戻ったので、シャーレでハッピーエンドを手に入れたい   作:うどんそば

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早く行かなきゃ

 大きな爆発音とともに、ぼっーっとしていた意識が戻ってきた。

 柵から校庭を見下ろすと、戦った覚えのある兵士たちが突入してきている。空気の読めない奴らだ。

 一応持ってきていた武器から、ロクヨンちゃんを取り出す。これでも、程度のいいものは狙撃銃として使用されるくらいの精度はある。これくらいの距離なら十分だ。

 

 二脚を出して、固定する。そうして照準器越しによく狙って……一撃で仕留める。スコープではないとは言え、だから当たらないというわけじゃない。サイトで狙って当てればいい。そういう事だ。

 

 どんどんと校内に入っていくが、それはきっと皆がなんとかしてくれる。とりあえず狙撃で奥をちまちま減らしていって……。うん。指揮官らしきものを撃った瞬間、一気に瓦解したね。目に見えて焦ってる。

 こうなればすぐに自然に崩壊してくれるのが、体系化され過ぎた軍隊だ。それに比べ、前世は良くも悪くも戦争になれすぎてたせいで、軍に関する技術だけはよくあったからね。そういうことは起こらないのが普通だった。でも、こっちでは違う。学校同士の撃ち合いはあっても、軍隊対軍隊の近代戦争のような形の戦闘には、カイザーが関わってないから効くんだ。

 

 それに、この前風紀を倒した時も思ったけれども、こういう事になりがちなところは、良くも悪くも、上の命令を大切にしすぎている。もしものときは誰が指揮するとか、自分で考えて作戦をしないといけないこともあるとか、そういったことを全く考えていないのだ。

 

「うん。弱いね」

 

 思わず溢れてしまった言葉。これが究極の答えだ。もしここにホシノがいたら……きっともうこの辺りは敵一人いなかったんじゃないかな。皆を悪く言うわけじゃないけど、なんだかそう思う。

 

 階段を急いで降りると、部室の前で戦闘が行われていた。詰めかけた戦闘員達を、ひたすら倒していく作業だ。

 私がトップを倒しちゃったせいで、指示を失った兵士がこっちに詰めかけたこともあって、ストーリーで見たより苦しそうだ。

 

「助けに来たよ」

 

「キタノ!? ごめん、そっちからも倒してくれない? 流石に多すぎて……!」

 

 声をかけると、中からセリカちゃんの焦った声が聞こえる。

 肩からミニくんを取って、少し奥のほうからとにかく急所を狙った射撃を行う。すると、上を取られている上に、障害物の多い学校であることも忘れて、焦ったように何人かがこちらにやってきた。

 

 その辺りに積んである机を倒すと、もう向こうからの射線は遮られる。そうして経過しながらやってきたロボットを……叩き切った。

 青いまるで水のような流れを認識した直後だったろう。ロボットは機能を停止した。

 あえて倒れたそのロボットの首を刎ねて、言う。

 

「首、頂戴?」

 

 その瞬間、周囲にいたロボットは、錯乱した様子で逃げ出すかこちらに向かってきた。銃を乱射するものもいたが、机に隠れてしまえば、当たるのは仲間にだけだ。近づいてきたやつは、容赦なく切った。そうしたらあれだけいた兵士たちが、もうすっかりいなくなってしまったのだ。根性がないのか、はたまた脅かしすぎたのか。……ロボットに根性ってあるのかな?

 

「キタノ、えげつないわね……」

 

 こちらを覗き込んできていたセリカちゃんが、恐れるように言った。

 

「そんな怖がらなくても」

 

「いや、怖いわよ……あんな顔で首を頂戴なんて言われたら、ほんとに泣いちゃうってば……」

 

 扉の中に通され、中の雰囲気を見る。皆真剣な表情でいる。

 

「ああ先生。お怪我はありませんでしたか」

 

”キタノ……ホシノが”

 

「うん。知ってます」

 

 手紙の封筒を取り出すと、皆一つ頷いて、重い空気の中で沈黙していた。

 

「……なにしてるの? 早く行かなきゃ」

 

「……うん」

 

 やっぱり、みんなどこか元気がない。……ああ、なるほど。

 

「大丈夫。別に奪われたら取り返しに行けばいいだけでしょ? しかも、私はホシノに言ってあるから。迎えに来るから待っててねって」

 

 一番に外に出ると、それを追うように、覚悟を決めた皆は着いてきた。校庭にはすでに兵士はいない。しかし……

 

「柴関ラーメン付近に多数敵影です!」

 

「じゃあ行こうか。ホシノを取り返しに」

 

「ん。ホシノ先輩を助ける」

 

「そもそもここを襲うっていうのが気に入らないわよね! ここはアビドスの土地! 許されないわ!」

 

「そうですねー。早く助けに行きましょう!」

 

 皆はいる。ホシノを助けて、この自治区も守ろうとする、このメンバーは。

 暗い雰囲気は霧散し、張り詰めた空気と、絶対に助けるという希望に満ち溢れたこの状態。これでこそアビドスだ。

 

”ねえ、キタノ”

 

「ん? どうしたの? 先生」

 

”ありがとうね。皆を元気づけてくれて”

 

「これは、みんなの気持ちのおかげだよ。私じゃない」

 

”それに、ホシノを慰めてくれたんでしょ?”

 

「……どこでそれを?」

 

”私宛の手紙。惚気けられてるのかなって思うくらい、キタノのことが書かれてた。でも、最後はさよなら、だったよ”

 

「……うん」

 

”こんなに未練たらたらな別れの手紙なんて、後で笑いばなしにしてあげなきゃ。だから、早く取り返しに行かなきゃね”

 

 先生が微笑む。

 ゆっくりその体に抱きつくと、今まで全く出てこなかった涙が、ほんの少しだけ、出たような気がした。ほんの少しだけだよ?

 

 町中をどんどん進んでいくと、徐々に警備が固くなっていく。こんなの、見なくてもわかるじゃないか。

 

「……この先に、カイザー理事がいるのかな?」

 

「は……はい!」

 

 私が予想を言うと、それを肯定するアヤネちゃんの声が響く。まあ、折角近くにいるんだから、少し脅かしてやろうか。

 みんなに目線で先に突入する合図をする。頷いたのを確認すると、銃を背中にかけ直して、刀を握った。この路地を開けたところには、もうカイザー理事がいる。ゲームで見ただけでは分からなかったが、相当でかい。

 

 あくまでこれは脅かすためだ。あえてカイザー理事は狙わず、その隣に立った護衛を切った。強く踏み込んで、体全体を使った一閃は、全く手応えもなくその体を通り抜けた。

 すぱん、となめらかに切れた護衛ロボットは、即座に機能を停止し、崩れ落ちる。それに気がついたカイザーの理事は、明らかに慌てた様子で周囲に声をかける。

 

「おい! 誰かいるぞ!」

 

 そうしてそれに気がついてきた戦闘用ロボットが集まったときを見計らって……後方からの一斉射撃が繰り出された。

 一気に一網打尽にした私達は、これで堂々とカイザー理事の目の前に姿を現す。

 

「残念だったね」

 

 煽るように言うと、激高した様子で、地団駄を踏み、指を差してきた。

 

「お、お前! お前ら! なにをしたかわかっているのか!」

 

 その言葉に、みんなもまた、怒りをあらわにして言う。

 

「なにをしたかわかっているか! って、そっちこそよ! ここはアビドスよ!」

 

「そうです! そちらこそ突然攻めてくるなんて!」

 

 それにまた反論、といった形で、ぴりぴりとした空気は更に重くなっていく。言葉の応酬に、お互いの精神もより逆なでされ、怒りも膨れ上がっていく。やがて、それに耐えられなくなったか、カイザー理事は武器を取り出した。

 しかし、この人数に一人で対抗できるほどカイザー理事は強くない。結局、あっけなく倒れてしまった。

 

「し、しかし、これから援軍も来る……! 覚悟しておけよ……!」

 

 捨て台詞のような言葉を吐いた理事に、私以外の全員は、思わず眉をしかめる。さっきは作戦がうまくはまって一気に倒せたかもしれないが、次もそうなるとは限らないからだ。

 しかし、その心配は早々に打ち砕かれることになる。

 

「べ、便利屋の皆さん!?」

 

 アヤネちゃんが驚いたような声を上げる。そう。便利屋がやってきたのだ。

 

「キタノ。背後のは始末してきた」

 

「ふふ! これこそアウトローって感じだわ!」

 

「雇われ主を裏切るくらい、アウトローなら当然でしょ!」

 

 その姿を見て、地に伏したはずのカイザー理事は、余りの怒りから、再び上体を起こす。

 

「便利屋! 飼い犬の分際で良くもやってくれたな!」

 

 しかし、ゆっくりと近づいたカイザー理事は、爆発する地面に巻き込まれ、再び倒れた。

 

「あ、アル様!? 大丈夫ですか!?」

 

 駆け寄ってくるハルカの手痛い攻撃だ。ただ、それによって位置もバレてしまった。理事! と言いながら来る兵士たちに運ばれ、カイザーは退却していく。

 それを見ていたカヨコは、一つため息を吐いて、

 

「また面倒ごとなんだね……まあ、キタノのことだから、きっと誰かを助けるためなんだろうけど」

 

 そう言って、信頼を強く感じる笑みを見せてくれた。

 

「ん、これで終わったね。とりあえず戻って、探しに行く準備をしよう」

 

 シロコがそういったのを皮切りに、それぞれは動き出した。

 




1000文字くらいの大きい追加しました。ちょっといろいろあってめちゃくちゃ忙しいため、次の話はほんの少し遅れるかも……?
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