前世の記憶が戻ったので、シャーレでハッピーエンドを手に入れたい 作:うどんそば
校舎に帰ってきた私達に、みんなはお帰りの言葉をくれる。
「その顔は、なにか掴んできたような顔だね」
そんなシロコの言葉に、思わず笑みが溢れる。
”ホシノを助けに行こう!!!”
先生は高らかに言う。
”助けて、その後は厳しく叱ってあげないと!”
その言葉に、みんなで頷いて同意を示す。
「自分で言ったことを守れなかったんですから、お仕置きですね!」
そうして、先生は一番の自信に溢れた顔で、宣言するように言った。
”おかえり、って言って、ただいまって言わせよう!”
「うん……え!? なにそれ! 恥ずかしい! 背筋が!」
青春らしいことに少し恥ずかしそうにするセリカちゃんは顔を赤くしてもじもじした。でも、その顔は決して本心から嫌がっている様子ではない。
「私はする」
「セリカちゃんがしなくても、私がします!」
「私も、ちょっと恥ずかしいけど……」
みんながすると言うと、セリカちゃんは赤い顔をこちらに向けてくる。
「もちろん、私もするよ」
ぷん、とそっぽを向いたセリカちゃんは、「勝手にして!」と言うが、どう見ても照れてるだけだ。
少し冷静になり、再び話し合いは続く。
「でも、今の私達だけじゃ勝てない。誰か協力者を……」
シロコの冷静な言葉に、セリカちゃんは「便利屋は?」と声を上げる。
「一度助けてもらったのに、またお願いしてもいいのでしょうか……」
「こっちは何回だって迷惑を掛けられてるんだから、これくらいのお願いは聞いて貰わないと!」
ノノミちゃんの発言に、いつもと同じ様子で強気に主張するセリカちゃん。そこに、先生が一声上げた。
”……私に考えがある”
「うん。私にもあるよ」
先生はきっと、あそこに行くんだろう。じゃあ、私にもできることを。
●●●
長い階段を登っていく。随分久しぶりな気がしてくる。長いと言っても、長期休みと対して変わらないくらいだったはずなのだけれど、いろいろあったからか、より長く感じているのかも。
登り終わったところから校舎に入り、迷いなくティーパーティーの部屋に向かう。どん、と扉を開けたところには、珍しいことに三人がそろい踏みだった。
「おかえりなさい。キタノさん。随分と急いでいるようですが、まずは椅子にでもお座りください」
ちら、と目線で差した先には、私が来ることがわかっていたかのような椅子が、一脚置かれていた。それに腰掛けると、全員はふっと微笑んで、
「久しぶりに会えてよかった」
と言う。……それは私こそいいたかったことなんだけど。
「それにしても、今日はセイアちゃんもいるんだね」
「ああ、今日だけだ。やはりあまり体調が芳しくないのでね。……今日は、君のためにきたのさ。親友のためにね」
「今日だけは、私がホスト代理ではなく、セイアさんがホストを」
「ふふ……こうやって待ってたのも、セイアちゃんが教えてくれたからなんだよ?」
ミカちゃんが私の前に紅茶を出しながら、そう言ってくれる。そうして、それを一口飲んだところで、話は始まった。
「さて……本題だね?」
「うん。簡単に言うと、助けてほしいんだ」
「それは、あのアビドスのことですか?」
ナギサちゃんもやはりこの時点で知っていたのか。ならば話は早い。
「そうだよ。セイアちゃんも見た?」
「うん。見たし、みんなにも共有してある。安心するといい。……それで、私は聞きたいんだよ。なんで、今私達が力を貸さなくても問題ないのに、ここにきたんだい?」
それには、明確な答えがあった。
「セイアちゃんも見た通り、問題ないよ。でも、私は私ができる精一杯、彼女達を助けたい。シャーレの一員として、未来が決まっているからってできることを放棄したくない。それなら、その未来をなぞりつつ、更に良い未来が欲しい。だからだよ」
「ふうん、なるほど。よくわかった。私の親友、キタノらしい答えだね。でも、この学園にも少なからず面子というものがある。それに、強大なこの学校が、弱小校に手を貸すとなると、色々な所が面倒だ。せめて、大義名分がないと……」
「今回攻略を手伝ってほしいところに、トリニティ生である私は二度殺されかけた。それだけで十分だったりしないかな?」
私がそう言うと、三人は口を開け、ぽかんとした様子で静止した。
「……それは本当なのかい?」
「冗談じゃなくて?」
「だ、大丈夫なんですか? お体は、なにか悪いところとか……」
一気に焦りだしたので、少し自分まで焦ってくる。え? 私はてっきりバレてるものかと……
「あ、証人を! セリナ! 来て!」
「はい、お呼びでしょうか?」
「!? 一体どこから……って、その姿は、救護騎士団のセリナさんですか?」
「うん。セリナが私を治してくれたから。なんでいるのかは……気にしないであげて」
「では、せんせ……キタノさんの怪我についてですか。……えっと、キタノさん、服を上げられますか? お腹です」
セリナに言われた通り、服をめくってお腹を見せる。すると、そこには薄っすらと怪我の跡が残っている。
「この薄っすらと残る跡が怪我の跡です。ここの辺りが抉れるような形で怪我をされていました。特殊な状況下で戦車砲を撃たれたことによる怪我です。二度目は敵地で肺疾患で動けなくなりました。あのままなら危なかった可能性も十分あります」
その説明を聞いて、厳しい顔をしていたナギサちゃんが、ゆっくりと口を開く。
「それは、本当なのですね?」
「はい、本当です」
断言するセリナに、場の空気は一気に重くなる。
「よし。わかった。この学校からは、最大限支援しよう。……これは、ティーパーティーからの報復攻撃ということにする。いいかな?」
「うん、もちろん! キタノちゃんに怪我をさせるなんて、絶対に許せないから」
「許せません。確かに、学校としてではなく、ティーパーティーとしてであれば、他校とのトラブルも多少減るでしょうし、私達の怒りを買ったということを強調できますしいい事ずくめですね」
「では、そういうことにする。報告ありがとう。……では、ナギサ。時が来たらアビドスに向かってくれ」
「わかりました」
では、また後で。そう言われ、慌ただしく動き始めたティーパーティーの茶会を出た。セリナは丁寧に礼をして、先に出ると、慌ただしく救護騎士団に戻っていった。
……あの空気が重くなったとき、自分が思っているよりも心配してくれてるんだな、とか、なんだか、愛されているんだな感じがして、嬉しくなったのはないしょ。
ティーパーティーから重感情載っけられてる子、いい。