前世の記憶が戻ったので、シャーレでハッピーエンドを手に入れたい 作:うどんそば
「うーん、暇だ!」
本当に暇。学校もない日だし、スイーツ部も特になにもないらしい。ナギサちゃんもミカちゃんも今日は用事があるらしいし、セイアちゃんに至っては入院している。
レイサは最近悪化した治安のせいで、パトロールの用事に追われている。ゲヘナは……同じく治安の関係で風紀は忙しいらしいし、給食部は時間的に忙しいだろうし、どうしようもない。ミレニアムに知り合いはいないし……
「うーん、エンジェル24にでも遊びに行こうかな」
今はまだ先生がいるわけじゃないけど、シャーレの中のエンジェル24は開いていて、入れる。最近、ソラちゃんが店員として入ってきて、それからそこそこの頻度で遊びに行っている。あの子は可愛いし、健気だし、目の保養になる。それに、モモフレンズのコンビニ限定グッズを買いに行かないといけないしね。
シャーレ店は客が少ないのか、そこそこ時間が経ってても残っていることが多いのでありがたい。学校があると、どうしても販売初日にはいけないこともあるしね。
外出着の女袴を着る。この世界補正なのか、めちゃくちゃ動きやすいし、戦うときとかなら、たすき掛けすれば着崩れしすぎない。それに、ズボンとシャツみたいなのは着てるとナギサちゃんに、「もうちょっときちっとした服装を」と、咎めてくることもある。そういうのの心配もないし、結構気に入っている。
袴の方は膝くらいの長さで、どっちかと言うとスカートみたいなイメージなので、足元も動かしやすい。見た目も気に入っている。私に似合ってるからね!
生徒証と財布とスマホを持って、外に出る。今日は晴れているみたいだ。
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着いた……遠かった。そこそこの距離あるんだよなあ、ここまで。まあ、通う価値あるから来てるんだけども。
特に、この場所自体がD.U.の外郭部にあるのがね……治安も悪いから、何回も襲われた。よくここに来れるなソラちゃん。実は強かったりする? それとも泊まり込み?……まあまさか、中学生が泊まり込みで働いているわけはないか……。ないよね?
「どうもー」
「あ、い、いらっしゃいませ!」
「暇だから来たよ」
「ああ、なるほど……遠かったんじゃありませんか?」
「まあ遠かったけど……移動もまた楽しめばいいんだよ。外の景色とかね。それに、ここには来る価値があるから来てるんだよ?」
「そ、そうですか……ありがとうございます!」
レジから近いところの棚に、グッズなどが置かれている。そういったような基本の配置というのはだいたい前世の記憶とも一致している。意外と落ち着く場所かもしれない。
あ、ペロロ様限定グッズやっぱ残ってる。ぬいぐるみが……五千円。大きさを考えると妥当か……そういえば、ヒフミ先輩はこのグッズを持ってないって言ってたな。一緒に買って行っとこう。お金には余裕があるし。
目線を替え、おにぎりとお弁当が陳列された棚を見る。前世との相違点は、お弁当がかなりお買い得なくらい安く、もりもりに盛られている、学生に優しいボリューム抜群なものであることか。
まあ、これは「ここの」エンジェル24に限った話なんだけれども。店長さんが優しいのだ。話した時、正直聖人かと思った。
私がバイトしたいなあ、って言ったら、「じゃあ雇おうか?」って言ってくれるほどの優しさだ。当然面接もないし、履歴書も必要ない。勿論、知らない人が来たら面接も履歴書もいるそうだけど、知り合いだから問題ないらしい。
「ソラちゃーん。こんなに並んでるけど、売れるの?」
棚いっぱいの弁当を差して、聞いてみる。
「え、えっと……正直、売れない、です。でも残ったのは、賞味期限が切れる前に交換して、孤児の子たちに渡してるらしいです」
ほら、聖人でしょ? まあ、この店が直営店じゃないからできるんだろうけれども。
ホットスナックは……お、チキンがある。
「じゃあお会計でこれと……あとペロロ様のぬいぐるみを二つ。チキンも二つお願いね」
「わかりました」
あまり店に来る人がいないものだから、まだあまり慣れていないのか。一つ一つ丁寧にレジを通す様子を眺めながら、ニコニコして待つ。微笑ましい……
「えっと、合計は11200クレジットです」
「ほい」
私はカードを渡す。すると、問題なく決済され、一瞬で会計が終わった。便利だ……クレジットカード……
レジ袋に入れ、それを渡してくれるので、その中からチキンを二つ取り出して、片方を手渡した。
「えっと……?」
「たべていーよ。私のおごり」
そう言うと、少し迷った顔をしながらも、結局受け取ってくれる。そうして私が袋を開けて、食べ始めると、遠慮がちに開いて、ソラちゃんも食べ始める。
「美味しいね」
「はい。あ、あんまり食べる機会がないので……」
「そっか。店長さんに、余ったの食べていいですかって聞いてみたら?多分許されると思うけど」
「健康にも悪いかなって」
おぅ……思ったより現実的な回答。私的には若いうちにどんどん食べちゃっていいと思うんだけどなあ。どうせ年食ったら食べられなくなってくるし。
「まあ、たまに食べる分には大丈夫だよ。まだ若いから、今のうちじゃない? 食べてもその分動けばいいし」
「まあ……そうですね……なんだか上手く言いくるめられたような気がします……」
少し不服そうにソラちゃんがチキンを一口かじる。
「美味しくない?」
「美味しいです……」
二人で黙々とチキンを食べていく。旨味が出てて、ちゃんと美味しい味がする。良くも悪くもコンビニらしくない味だ。パクパク食べていると、あっという間になくなってしまう。
「あ、そういえばさ」
「あ、はい、何でしょう?」
私が声をかけると、まだ食べている途中だったソラちゃんは、急いで残りを口に突っ込んで、飲み込んだ後返してくる。
「ごめん、食べてる途中だったね。……それでさ、この建物に、誰か来るとか聞いてない?」
「誰か、ですか?」
ソラちゃんはうーん、と頭を捻った後「ちょっとまってくださいね」と、裏の方に回り、メモ帳を持って戻ってきた。
「ここに誰かが……あ、これですか?」
メモ帳に几帳面に記された文字……そこには、
『シャーレに”先生”がいらっしゃる。たぶん一ヶ月後までに?』
と、記されていた。
「この、たぶんって、どういう事?」
「なんか。正確なタイミングがわからないそうで……特に何か問題があるわけではないそうなので、特に気にしてませんでした」
「へえ……まあ、何があるかわからないから。気をつけといてね」
「はい。……でも、ここに人がいらっしゃるってことは、お客さんが増えるってことですかね? 今まではキタノさんしか来てくださってなかったので、少し安心、かもです」
「へえ……それにしても、先生ってどんな人だろうね?」
勿論私は知っているのだが、あえて知らない体で話す。まだ誰も先生にあっていないのに、私だけ知っているのはおかしな話だからだ。
「わかりませんけど……いいひとだったら、いいなあ」
残念ソラちゃん。多分だけど、毎日のように栄養ドリンクを買いに来るやばい人が来ると思うよ。まあ商品は売れるだろうけれども。
「まあ、どなたでも、来ていただけるだけで……」
ドーン! と、ソラちゃんが話している途中に爆発音がする。
「は?」
急いでコンビニから出て、窓から外の様子を見る。
「あれ、スケバン共か……?」
大量の不良たちが、戦車なども動員して、正面を占拠するように屯していた。その中心には……
「ワカモ……」
災厄の狐が、不敵に立っていた。