前世の記憶が戻ったので、シャーレでハッピーエンドを手に入れたい   作:うどんそば

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わたし達だけじゃなくて

 アビドス校舎前、そこに全員が集まってきていた。

 

「ありゃりゃ、私が一番遅かった感じだね?」

 

”キタノ、準備はできた?”

 

「うん。もちろん。先生こそどうなの?」

 

”大丈夫。うまく行ったよ”

 

 うん、と頷いて、みんなの方を見る。全員で真剣な表情を見合わせると、アヤネちゃんが宣言する。

 

「それでは! ホシノ先輩奪還作戦を開始します!」

 

 

 ●●●

 

 

 道中は色々な敵だらけだ。それはロボットだったり、ドローンだったり、はたまた戦車だったりする。それをできるだけ最小限の速さで破壊しつつ、どんどんと進んでいく。

 

「すごいわね……あの速さであの精度、威力……怖いくらいね」

 

「この力は、皆を守るための力だから……あ、ほら、基地だよ」

 

 ほぼ立ち止まらずに第一の基地にたどり着く。もちろんのことながら、中は厳戒態勢だ。そう簡単には入れそうにない。だけれども、私達はそこを強引に突破した。

 

「先生、どう動こうか」

 

 通信で、少し離れた安全なところから指示を出してくれている先生の判断を仰ぐ。流石に大量の傭兵相手に下手な立ち回りはできない。

 

”キタノは遊撃しながら奥に浸透して。余力があれば、指揮官クラスか、大型火力兵器を無力化して”

 

「了解」

 

 皆を置いて、一人で一気に飛び込んでいく。そうして前線の兵を思い切り薙いた。すぱん、ときれいに切れた兵はゆっくり崩れ落ちる。そのまま、できるだけ勢いを殺すことなく第一陣を片付ける。

 

 少し離れたところにある、第二陣。そこには、戦車がいるのが見えた。戦車にはいい思い出がない。だから、とっとと片付けないといけない。刀で突進するなんて以ての外だ。

 私はロクヨンちゃんを取り出して、サイトを覗いた。きっと向こうからも届く範囲だ。一発で終わらせないとこっちに火砲を打ち込んでくるだろうから、ミスはないように。私だって、セリナに何回も何回も世話になる訳にはいかない。

 

 一発。

 

 ドカンという大きな爆発の音で周囲ごと吹き飛んだ戦車。まさかここからアサルトライフル一発で破壊させるとは思っていなかったのだろう、向こうは大混乱に陥ってしまった。これでほとんど機能しなくなったはずだ。第三陣、第四陣は後ろで対策委員会のみんなが戦ってくれている。だから問題は……

 

「あれ、多すぎるよねえ……」

 

 何人いるかもわからない程の巨大な軍団。下手すると、この前の風紀委員会よりも多い。規模としては、連隊……いや、旅団規模はあるかもしれない。

 

「先生……あれはまずいね。……ふう。突入してくる」

 

”キタノ!……気をつけて。帰ってきてね”

 

 あえてそれには返さずに単騎突入を開始する。ゲームの描写では、ここまで多いようには思えなかった。とすると、きっとこの規模がここにいるのは、きっと私がこの前理事をこてんぱんにしすぎたせいだ。こんなところに影響が及んでくるなんて……

 私はともかく、ホシノがいない対策委員会には荷が重すぎる相手だ。何としてでも私がなんとかする。今度こそ、帰ってこれない可能性も……

 

 そう思った瞬間、さっき破壊した戦車なんて比にならない程の巨大な砲弾が、その相手に突き刺さるように降った。

 着弾とともに爆発で地面を抉り、凄まじい轟音がなる。

 

 砂煙が晴れたとき、そこにあった旅団クラスの兵は、半分ほどまで減っていた。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「あ……ナギサちゃん……」

 

 ぱっとそこに浮かんだ姿はナギサちゃん。早速こちらに来てくれたみたいだ。

 

「あはは……結構まだ残ってますね。ナギサ様!」

「はい。もちろん。皆さん、よろしくお願いします」

 

 ナギサちゃんがそういった瞬間、もう一度砲弾の雨が降ってくる。それにより、規模はこの前の風紀委員会くらいまで少なくなり、更にかなり動揺が広がっていた。なんでトリニティが……そんな声が聞こえてくる。

 

「ここにいるキタノさんに怪我をさせたようですね。彼女は私達ティーパーティー全員の大切な人なのです。そんな人を攻撃したとあれば……やることは一つですよね? これは、私達からの報復と捉えてもらって構いません。あなた達は、それだけのことをしたのです」

 

 いつもと違い、少し怒ったように行ったナギサちゃんは、紅茶を飲んで心を落ち着かせた。

 

「すいません、わたしたちはここまでしかできないようです……それでも、少しでもお力になれましたか?」

 

「十分だよ。本当にありがとう。ナギサちゃん、ヒフミ先輩。ティーパーティーの皆と、砲手の皆さんにも伝えてて」

 

「キタノちゃんには普段からお世話になってるので、当然です!」

 

 ぱっと映像が途切れる。これからは私の時間だ。相手が手練れとは言えど、これくらいならやれないことはないはずだ。

 

「よいしょっと、ここあたりかな?」

 

「うわあ……本当に砂漠なんですね」

 

「砂漠のデザートと、スイーツのデザートを上手く掛けたってわけね」

 

「キタノ。早速来たよ。ここは私達に任せて」

 

 スイーツ部の皆が飛び出てくる。きょろきょろとするナツとアイリ、今になってナツの洒落に気がついた様子のヨシミ、こちらに微笑みを向けてくれるカズサ。戦場とは思えないほど緩い空気が流れ……そうして安心した。

 

「ここは置いて行って。私達だけでも大丈夫だから」

 

「でも、流石にスイーツ部と言っても、この数は……」

 

 その言葉に、ふっと微笑んで、カズサは言う。

 

「大丈夫。……ほら」

 

「トリニティを守る者! 宇沢レイサ! 登場です! さあさあ! キタノさんに仇なす人はどこですか!」

 

「レイサさん! そっちはまだ行かないほうが……!」

 

「……ちょっとうざったいけど、キタノの信じる親友たちなんでしょ?……ほら」

 

 カズサは私の胸を押す。

 

「ここは私達に任せて」

 

 目線の先では、皆がコンビネーションを上手く使って、蹂躙を見せている。私はそれに背を向けた。

 

「ありがと」

 

「うん。頑張ってきな」

 

 走って入口付近まで行く。そこには戦闘が終わったアビドスの面々が神妙な顔で待っていた。

 言葉をかわさず、うなずく。もうすぐでホシノが待つ地点なのだろう。

 

”キタノ……良かった。ホシノもきっとこの先で待ってるよ”

 

 先生が言う。

 私はみんなの背を追って、走り出した。

 

 ●●●

 

 

「ここ、かな」

 

「でも、ここって……学校?」

 

「うん。すごく大きい」

 

 砂漠の中に一人寂しそうに建つ建造物。それは、下手すると今使っているアビドスよりも、二回り以上大きな学校だった。

 

「……ああ、そこは昔アビドス本館だった場所だ」

 

 ゆっくりと、機械の大男が近づいてくる。ところどころ未だ修理が終わっていないところがある様子のまま、後ろに兵士を引き連れてだ。

 

「カイザー理事……!」

 

「ゲマトリアはこの場所に実験室を作るよう要求してきた。小鳥遊ホシノもそこにいる。もっとも、実験はもう始まっているかもしれないがな」

 

「それならできるだけ急いで助けに行くだけよ!」

 

 セリカちゃんが啖呵を切るが、カイザー理事はただこちらをじっと見つめる。その間にも、続々と兵士の数は増えてきた。……が、ある一定の人数でそれは終わった。きっと先程のところにかなり人員を割いていたのだろう。

 

「これだけでも、精鋭は精鋭に変わりない。小鳥遊ホシノを助けたくば、ここにいる全員を押しのけて行くんだな!」

 

 カイザー理事が言い切ると、その瞬間地面が大きく爆発した。今回は砲弾ではない。爆弾だ。……ということは、彼女らだ。

 

「あれは……便利屋!」

 

「今私達がここにいるってことは……わかるでしょ?」

 

 一息ためて、アルちゃんは言う。

 

「ここは私達に任せて行きなさい!」

 

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