前世の記憶が戻ったので、シャーレでハッピーエンドを手に入れたい   作:うどんそば

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補習授業部

 補習授業部。ただただ補習授業をするだけの部だけど、正直なにをすればいいかわからない。これでも、結構成績優秀で、テストはほぼ満点。それに、ナギサちゃんたちに勉強を教わることもあったから、範囲がどれだけ広くなっても合格できる自信がある。だから、正直補習の勉強をする必要がないのだ。

 今回も先生を手伝って、皆に教える側になるのだろうか。そうだとしたら、自分で勉強するものというより、勉強を教える道具を揃えていったほうがいいかも。

 どうせ最初はただ通うだけだし、泊まる道具なんかは必要ない。まあなにかあれば先生と一緒に帰って、シャーレで泊まればいいんだけど。もしそれがだめでも、先生の家にでも転がり込むという手があるし。

 

「よし、こんなものでいいかな」

 

 通学用の鞄に、いつもより少しだけ多い荷物を入れた。BDが基本の学習の方法ではあるけど、成績が悪い子はやっぱり直接教えたほうがいい。一方的に聞くだけじゃいけないこともあるだろうから。というわけで、それ用の本が大抵を占めている。

 スマホを取り出して、その画面を開く。そこには、昨日ナギサちゃんから送られてきた謝罪だけの短い文。それに、先生からの大丈夫かの確認の文があった。

 私はそれぞれに一言ずつ言葉を送り、家を出た。

 

 

 ●●●

 

 

”おはよう。キタノ”

 

「おはよ。先生」

 

 トリニティへの通学路を少し外れた場所。そこで私は先生と待ち合わせていた。先生は既にいたけど、隈とかはないようで安心。流石に徹夜はして無いと思う。

 

”……ナギサから言われたこと、気にしないでね。あの様子、きっと本心からじゃないと思うから”

 

「ふふっ、わかってる。伊達にティーパーティーの友達やってないから。……あの苦しそうなナギサちゃんは、すぐに治してあげたいな」

 

 私がそう言うと、先生は微笑んだ。

 

「じゃあいこっか」

 

 手を引いて一緒に歩く、いつも通りの私達。出向が終わって、少しはこのいつも通りが変わってしまうかと思ったけど、やっぱりあんまり変わらなさそうで、少し安心した。

 

 通学路を通っていく。が、普段と違うことが一つ。なぜかはわからないけれども、周囲から見られているみたいな感覚がするのだ。先生はそれに気がついていないみたいだけど。

 しかし、悪意のような、そういった類のものではないように感じる。興味? もしかしたら、先生を初めて見た子たちが興味を持っているのかも。それなら納得だ。

 まあ、悪意じゃないなら反応する理由もない。好意的な視線なら、なんならシャーレの評判にもつながるかも。

 

 指定された教室は、普通にただの教室だった。何の変哲もない。今は使われていないけれども、明日からでも問題なく使えるような教室。……先生は少し緊張していたけれども。

 

「先生。なんで緊張してるの?」

 

”いや、こんな大きな教室だとは思わなくて”

 

「ああ……トリニティはそういったところが少しアビドスとかとは違うからね」

 

 アビドスは普通の高校といった見た目だけれど、トリニティはもはや高校と言っていいのか? と言うほどの内装だから、先生が困惑するのも無理はないかも。ティーパーティーのセーフハウスやらが豪華なのはさておき、一般生徒の過ごす場所まできっちりこだわられてるのだから。当の生徒である私もたまに思う。やりすぎじゃない?って。

 

 扉を開ける。そこには、どう見ても困惑した表情の生徒が、四人いた。

 四人はこちらを見て、うちひとりは驚いた表情でこちらを見た。言うまでもなく、覆面水着団のリーダーさんだ。

 

”皆揃っているかな?”

 

 先生が声をかけると、お互いを見合せて、静かにうなずいた。

 

「……見たところ、全員揃ってるみたいだね」

 

 私も一度見回して確認する。しっかりと顔ぶれは揃っているようだ。

 

”じゃあ、自己紹介からしようか。私はシャーレの先生で、今回補習授業部の手伝いをすることになったから、よろしく”

 

 先生は軽く挨拶をすると、いつものように少し微笑んだ。そうして、私の方に目線を向けてくる。

 

「私は夜永キタノです。理由は……たぶんシャーレの出向中のテストが受けていない扱いになり、ここに来ることになったのかな?」

 

 私がこう自己紹介すると、何人かは不思議そうな顔をした。

 

「……あの、キタノちゃんって、一回テストを受けなかったくらいじゃなんともならないような成績なんじゃ……?」

 

「本当は、ですね。まあいろいろあるんじゃないですかね?」

 

 ヒフミ先輩の疑問に答えると、すすす……と離れていきながらその話題を止めた。流石ブラックマーケットによくいるだけある。あ、知ってはいけないことなのかな、と思ったところで話題を止める勘みたいなのがすごい。……まあ、ヒフミ先輩も当事者なんだけどね。

 

「じゃあヒフミ先輩。次は自己紹介お願いしますね」

 

「は、はい。私は阿慈谷ヒフミです。ペロロ様のゲリラライブに行って、テストを受けられず、補習になってしまいました……皆さん、よろしくおねがいします」

 

「じゃあ次は私が。私は浦和ハナコです。皆さんよろしくお願いしますね♡」

 

 二年生コンビが、私の誘導から連続で自己紹介する。じゃあ次は一年生コンビだ。

 

「じゃあ、今度はコハルちゃんよろしく」

 

「え? あ……あ、あぅ……キタノぉ……」

 

 私がコハルちゃんに振ると、顔を赤くして私の背中に隠れてしまった。かわいい。……じゃなくて、まだ初対面だからか、コハルちゃんの人見知りが出てる。

 

「ほら、自己紹介しないと。皆にピンクの子って言われるようになるよ?」

 

「ぴ、ピンクの子!? 駄目! 死刑!」

 

「じゃあ自己紹介しないと」

 

「うう……下江コハル……本当はこんなところに来るはずじゃなかったんだから! ま、間違って上級生用のテストを受けてしまって……」

 

「な、なにやってるんですか……?」

 

 コハルちゃんのツッコミどころの多さに、思わずヒフミ先輩がツッコんだ。それにコハルちゃんは「し、しかたないじゃない!」とか、謎の言い訳をする。

 

 ……私含め五人の自己紹介が終わったところで、最後の問題児の方を、全員で見る。

 

「ふしゅー……ふしゅー」

 

「な、なんでガスマスクなんですか……!?」

 

 堂々とした佇まいの、アズサちゃんだ。しかし、立派なガスマスクを付けた、である。

 

「常いかなるときも襲撃に備えないといけない」

 

「ここは流石にないと思うよ?」

 

「それでも、この世界は虚しいから」

 

 謎理論でふしゅーふしゅー言いながら話すアズサちゃん。……まあいいか。

 

「じゃあそれでもいいから自己紹介よろしく」

 

「白洲アズサだ。よろしく」

 

「はい! 自己紹介終わり!」

 

 ようやく自己紹介が終わった……このメンバー、本当に個性が強すぎる……

 

 ちなみに、私が初対面なのはアズサちゃんだけだったりする。ハナコは向こうから接触してきたし、コハルはツルギ先輩に誘われて正実に遊びに行った時に何回も会った。クラスも実は一緒だから話すときもある。ヒフミ先輩は……ブラックマーケットに行ったりするときだとか、ティーパーティーの皆とお茶するときだとか、色々な時に関わっている。

 もともと画面越しでも個性の塊みたいだった子たちなのに、こうやって現に集まったら、想像よりもずっと混沌とした空間になった。面白い。

 

「さあ先生。自己紹介も終わったし、どうする?」

 

 先生の方に向き直ってそう言うと、先生はうなずいて言った。

 

”じゃあ、補習授業部はじまり! わからないとこは、私に聞くか、本で確かめよう! BDももちろん使っていいし、お互いで学び合うのも大切だからね”

 

「一応私は三年生までの学習が終わっているので、先輩方も聞いてもらっていいですよ?」

 

 こうして、実質、シャーレによる補習授業がスタートした。

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