前世の記憶が戻ったので、シャーレでハッピーエンドを手に入れたい 作:うどんそば
目が覚めた。結局部屋は先生と一緒。結局あのあと、ヒフミ先輩と一緒に模試を作るのを手伝ったりしたんだけど、晩酌はそのまま続いた。ヒフミ先輩が寝ても、結局二人で他愛のない話をしたりとか。
流石に深夜に向こうの部屋に行くのもちょっと憚られたし、別に先生と同じ部屋だからどうというわけでもないから、そのまま同じ部屋で寝た。
朝日が差してくる。カーテンの隙間から、神々しく昨日三人で語り合ったテーブルを照らしている。先生はまだぐっすりだ。
「とりあえず、シャワーでも浴びようかな」
私は洗面道具を持って、シャワーを浴びに向かった。
シャワーはきれいだ。旧校舎とはいえ、昔はトリニティだったわけで。昨日掃除したのもあって、正直そのあたりの公共施設なんかよりもよっぽど良い設備が整っているような気がする。
シャンプーとか、リンスとかは色々試して、自分に一番合うのを使ってる。最近はシャーレに置いてるから、先生にも使っていいよって言ったら使い始めた。おんなじ匂い。まあお金にもそう困ってるわけじゃないからいいかな、と思ってたんだけど、それからは先生が替えを買ってくれてる。やさしい。
「あれ? 枝毛増えてきたなあ……」
元々私はキューティクルがばっちりの髪質で、枝毛は出来にくい。そのはずなんだけど、最近は砂漠に行ったり色々あったから髪が傷んでいる。前世の男のときは気にしてなかったけど、案外悲しい気持ち。後で先生に言ったら切ってくれるかな? いざとなればヒフミ先輩にでも切ってもらおう。いっそ髪型を変えるのもあり。伸びてきたしね。
シャワーを浴び終わったら、タオルでしっかりと髪から水分を拭き取って、若干濡れている髪にヘアオイル。その後はきちんとドライヤーして、おっけー。
シャワールームを出て、部屋に戻ってくる。私がドアを開けた音に、先生はもぞもぞしながらベッドから出てくる。
”……ん? キタノ? おはよう……早いね”
「ごめん先生。起こしちゃった?」
”大丈夫だよ……そろそろ起きないといけない時間だし”
先生はあくびをしながらベッドに座り、少しぼーっとする。昨日遅かったのが少し残っているのかもしれない。
「先生。もうしばらく寝てて大丈夫だよ。今から朝ごはんの支度してくるから、終わったら起こすね」
”うん。ありがと……キタノ”
いつもより少し気が抜けたような声とともに、先生はベッドに再び潜り込み、すこし経つと小さい寝息を立て始めた。やっぱり眠かったみたいだ。
朝ごはんと言っても、何を作ろう。きっとナギサちゃんが手配してるんだろうけど、大体なんでもあるから、選択肢が多すぎてなんとも言えない。外はさっきコハルちゃんたちが騒いでいる音もしていたし、起きているのだろう。だったら、余り時間がかかりすぎるのは良くないかな。
そう言えば、原作ではこの模試、結構ひどい内容だった気がする。まあ、私が介入したこともあって、全体的に点数はあがってたけど、それでも十分な気がしない。じゃあ、少しでも皆の手助けになるように、ご飯と魚で頭を働かせる朝食で行こうかな。後は、栄養が足りてない先生と育ち盛りの皆のために、少し食べごたえがある系を一品……重すぎても体に悪いし、具だくさんな豚汁がいいかな。
案外、料理をしているこの時間は好きだ。皆の騒がしい声、外の鳥のさえずり、朝らしい気持ちのいい日差し。それに、食べてもらったら皆笑顔をみせてくれるのだ。例えば、シャーレで偶に朝食を作ってあげると、先生はいつも喜んでくれる。たまに来るユウカも褒めてくれた。それだけで作った側としてはものすごく嬉しいもの。
「よし、これでいいかな」
まあまあな感じに作れた。それにしても、ナギサちゃんはやっぱり甘い。この部活をゴミ箱みたいに言っていたけれども、食材はどれも調理していてわかるくらい超一品。下手したら、食堂のメニューよりもいい具材かもしれない。
こんなの、本当に本心からゴミだとか思っている人に出すわけ無いのにね。
一旦私達の部屋に戻る。そこには先生が、いつもの制服姿で立っていた。
「あ、起きてたんだ。もう出来たよ」
”ありがとう。キタノ”
隣の部屋は騒がしい。とにかく私達はその部屋に入った。
「皆おはよう。バッチリ寝れた?」
「あ、キタノ!」
「あら、おはようございます」
「ご飯できたから皆で食べよう?」
私は未だ寝ているヒフミ先輩の体を揺らす。
「起きてください。朝ですよ?」
眠たいのは仕方ないけれども、もうそろそろ動き出さないと勉強の時間が減ってくる。それは本意じゃないだろう。
「う、ううん……あれ、キタノちゃん?」
「朝ごはんですよ。みんなで食べましょう?」
「わかりました……」
ヒフミ先輩はのそのそ起き上がると、洗面所へ歩いていった。
「私達は先に食堂に向かってますね?」
「はい。私がヒフミ先輩を連れていきます」
”じゃあ私が皆に朝食を食べる準備をしてもらってるね”
先生が皆を連れて食堂へ行ってくれたので、私はヒフミ先輩を見に行く。
「ヒフミ先輩? 大丈夫ですか?」
「だいじょうぶって、何がですか?」
「昨日、結構疲れてたでしょう?」
「まあ……はい。でも、私には皆もいますから!」
ニコッと笑ったヒフミ先輩は、本当に大丈夫そうで、強い顔をしていた。……まあ、伊達に常日頃から私と一緒にブラックマーケットに出向いたりしてる人じゃないか。
ヒフミ先輩と連れて食堂につく。そこには既に私が作った者たちが人数分広げられており、私の分も、ヒフミ先輩の分もよそわれていた。
「来ましたね。じゃあ頂きますをしましょうか」
ハナコがそういって、真っ先に手を合わせる。それに続くように皆で手をあわせて……
頂きますの声が響いた。
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「それにしても、キタノのご飯、美味しかった……」
「うん、食べたこと無い美味しさだった……あれをなんとかして戦闘用に出来ないか……」
私の朝食は大好評で皆の口にあったようだ。トリニティは割りと洋食好きが多かったこともあるし、合わなかったらどうしようかと思っていたから良かった。
と、言うわけで私達は教室に入って、ついに活動を始めようとしていた。
「とりあえず模試をしましょう!」
その一言で始まった模試の結果は……
ハナコ、 3点
アズサ、37点
コハル、45点
ヒフミ、79点
キタノ、100点
という結果だった。
模試の合格点数は60点。まあ……落第ですね……というわけだ。やっぱり朝ごはんは効果あったみたいだけど、流石に合格まで持っていくことは出来なかったか……まあでも、私が教えたところは正解できてたみたいで良かった。ハナコはまた別の事情だしね。
「このままでは次のテストもまた合格できません! ですから、今回のテストで間違えたところを中心に皆で頑張っていきましょう! 一年生組は私とハナコちゃんが教えます! 二年生組は先生やキタノちゃんに聞きます!」
「……わかった」
「私達ももちろん、キタノに聞いてもいいのよね?」
「いいですよ! もちろん! 先生もお勉強については出来ますので、先生に聞いてもらうのも大丈夫です!」
そこまで言って、ヒフミ先輩はバッグをゴソゴソしだし、その中から沢山のぬいぐるみを取り出した。
「ちなみに、頑張ったらこの中からご褒美です!」
モモフレンズコレクションたち。一緒に買いに行った私だからわかるけれども、レア物だらけ。まあ、多くは私の部屋にもあるんだけれども。
「え……? なにそれ……?」
コハルはそれを見てドン引きしたような顔をしている。
「確か、モモフレンズ、でしたっけ? ヒフミちゃんの鞄やストラップとしてよくついている」
「そうです! かわいいでしょう!」
胸を張るヒフミ先輩と、モモフレンズのぬいぐるみに近づいていく人影が一つ。
「か、かわいい……」
アズサちゃんだ。
あ、ヒフミ先輩の顔が明るくなった。