前世の記憶が戻ったので、シャーレでハッピーエンドを手に入れたい   作:うどんそば

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話の内容

「……ん、あれ、先生、今帰ってきたんだ」

 

 ちょうど皆も休憩の時間という時、先生は少しうつむきながら、何かを考えるようにして帰ってきた。

 

”……ああ、キタノ。帰ってきたよ。ごめんね、急に抜けちゃって”

 

「全然いいよ。そういうときのための私でしょ?」

 

 先生は、それもそうだね、と呟いて、椅子に座る。やっぱりその顔は少しだけ浮かないような気がした。

 

「どうかした? 難しい顔してるけど」

 

 思い切って聞いてみる。それに、このタイミングで呼び出されたのだから、どうせミカちゃんだろう。

 でもだ、この世界では少なくと一ヶ月ちょっと前まではセイアちゃんは確実に生きていた。私のためにアビドス支援の許可をくれた。

 それでも今ここに集められているということは、事は起こっていると考えていいだろう。

 

 じゃあ、ミカちゃんが話した内容も少し変わっているんじゃないか? なんとなく、そう思った。

 

”……うーん、キタノになら、話してもいいかな”

 

 先生は机に肘を突き、少し困った顔でそのまま頬杖をついて、話し始めた。

 

”呼び出しの相手っていうのが、ミカだったんだよ”

 

「ミカちゃん? あのミカちゃん?」

 

 本当は知っていたけれど、すっとぼけておく。ここで私はミカちゃんと先生が会っていることなど、知っているわけがないから。

 

”そう。多分想像している通りのミカだよ”

 

「今ティーパーティーって、厳重な体制なんじゃないっけ。そんな簡単に出てきていいのかなあ……」

 

”わかんないけど、本人だったし大丈夫なんじゃない?”

 

「まあ、ミカちゃんなら多分襲われても返り討ちにするか!」

 

 私は学校での話なんかもしている中で、ミカちゃんとの訓練の話もしたことがある。私も強い方だと思うけど、ミカちゃんもなかなかの強者だし、一緒に訓練している時の話には、明らかにネタとしか思えない超人的な話も混じっている。だからか、先生はミカちゃんの強さをざっくりとだけど知っており、全く心配している様子はない。

 

「……ね、元気そうだった?」

 

 もうしばらく会えていないミカちゃんの顔を思い出しながら、先生にそう聞く。

 

”うん。……ミカからも同じこと聞かれたよ。やっぱり仲いいんだね”

 

 先生は微笑ましそうに笑うと、今度は少し姿勢を正すように座り直した。

 

”……じゃあ、今回話されたことを、共有しておくね”

 

「うん」

 

”キタノもお手伝いしてくれている中で、エデン条約っていうのについて知ってるでしょ?”

 

「まあね。ナギサちゃんたちからも聞いてたりしてたし」

 

”あれは、第一回公会議の再現なんだって。強大なもの同士が結託して、更に強いものを作る……”

 

 先生は暗い顔でそう言う。

 

「あのさ、先生はそう思ってるの?」

 

”正直、そうは思えない”

 

「じゃあさ、ミカちゃんの言うことなんてそのまま言わなくてもいいから。先生が、先生の解釈でどう思ったか。それを教えて?」

 

”第一回公会議は、アリウスが異端として追放されたって聞いた。でも、私はそれが正しかったとは思えない。今からでも、仲良くできるなら仲良くできるに越したことはないと思ってる”

 

「うんうん。それで?」

 

”ミカは、アリウスからの転校生として、アズサを送ってきたんだって。その和解の第一歩として、あえてこの時期に。それで、ナギサは裏切り者を探せって躍起になってるとも”

 

 先生は、なにかに引っかかったように、そう言葉を紡いでいく。ただ、それはただ一方を正義と決めつけるようなものではなく、あくまで先生の願いだけを話しているように見える。

 

”……ただ、どうにもそれだけじゃ納得できなくて。……セイアはヘイローを壊されたらしいし、ティーパーティーは混乱に陥ったんだって”

 

「セイアちゃんが?」

 

”あ、ごめん。キタノはセイアとすごく仲が良かったんだよね……”

 

「いや、あんまり気にしないでいいよ。今はその理由は言えないけれど、先生もわかるから」

 

 実はと言えば、セイアちゃんは既に何度か夢の中であっている。話すことと言えば、本当に雑談だけ。甘えてくるセイアちゃんを愛でながら話す夢の世界は至高だし、終焉の未来を見てしまったときは特に、ただただ甘えてくるから、可愛くてしょうがない。だから、ヘイローが壊されたとは言っても死んで無いことを知っている。

 

”まあ、そういう事もあって、色々混乱している中に、もうシャーレに深く関係していると言っても過言ではない上、ものすごい影響力のあるキタノとか、強盗団の頭領をやっている噂のヒフミとか、そういうのが重なってここに皆は送られたらしいんだ”

 

 強盗団、というところではすっと目を逸しながら、先生は言った。まあそうだよね……強盗団の件は私達にも関係ないとは言い切れないし。

 

”そういった事もあって、本当の裏切り者を探すための部活においてのトリニティの裏切り者というのは、アリウス出身のアズサなんだって。でも、頼みは、そのアズサを護ってってことだった”

 

「ふうん。先生はどうしたい?」

 

 あえて問いかける。アビドスに行った時、先生が私にしてきたのと同じ様に。

 

”もちろん、私はアズサを守るよ。裏切り者なんかじゃないと思うから”

 

「そうだね。私もそう思うよ」

 

 私が少し表情を緩めながらそう言うと、先生は安心したように撫で降ろし、脱力させた。

 

”ふう……肩肘張っちゃったけど、これがメインの話だったよ”

 

「そっか。もっと秘密の逢瀬でもしてたのかと思ったよ」

 

”そ、そんな事しないって……”

 

 からかうように言うと、やけに焦った先生がわたわたとそれを否定した。……なんだか、妻の冗談で焦ってしまう夫みたいで面白い。

 

「さ、じゃあ教室にでも行こっか。皆待ってるし」

 

 休憩時間とは言え、結構話していたこともある。そろそろ皆教室に戻ってくる頃だろう。そろそろ戻って置いたほうがいい。

 先生はゆっくり椅子から立ち上がると、一つ伸びをした。

 

”んーっと! なんだか、キタノと秘密を共有できただけで、随分楽になったよ。やっぱり私にはキタノがいないと駄目なのかも”

 

「そう? それは良かった。帰ってきたときは本当に難しい顔だったから、あの顔のままで教室に行くことにならなくてよかったね」

 

”本当だよ。……ありがとう。キタノ”

 

 先生はお礼と一緒に、私の頭をぽんぽんと小さくなでた。

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