前世の記憶が戻ったので、シャーレでハッピーエンドを手に入れたい   作:うどんそば

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美食研究会!?

「それで、どこであってるか聞いたの?」

 

「はい。今向かっている先です」

 

 全員で走ってハスミちゃんを追いかける。少し先を行くハスミちゃんは落ち着いていないようには見えつつも、どこで暴れてるかはきちんと聞いていたようだ。近くで音がしたとはいえ、正確に位置が測れているかによって天と地の差があるからね。

 

「先生、大丈夫?」

 

”これくらいならまあ、大丈夫だよ”

 

 先生は書類仕事が多いし、私達ほど元気があるわけないから一応聞いてみたけど、この調子なら大丈夫そうだ。まあ、書類が終わったら終わったで生徒に引っ張りだこだろうし、今まで何度か戦闘に巻き込まれたりもしている。ある程度は動けて当たり前かもしれない。

 

 ちなみに、アズサちゃんとヒフミ先輩は全く堪えている様子はない。まだまだ余裕そうだ。ハナコは余裕はあるのかないのかわからないし、コハルちゃんはきつそうだけどなんとか着いてきている。

 

 かくいう私といえば……

 

「ごほっごほっ! あー……まあこうなるか……げほっ」

 

”キタノこそ大丈夫?”

 

「まあ、喘息が悪いときに走るとちょっとね。後で着いたら吸入するから大丈夫だよ」

 

 走りながらの咳がきついのなんのって。肺がひゅーひゅーと音を鳴らし、うまく酸素を吸えていないのか、なんだかほのかに風船の中の空気の味がする。……吸入器持ってきててよかった。

 

「そろそろです! あそこ!」

 

 小道を抜けたそこからは、大きな音が鳴り響いている。角から飛び出し、その大通りに出る……が、私は少しだけ小道に留まって、制服のポケットに忍ばせておいた吸入器を取り出し、それを吸う。

 

「すう……」

 

”キタノ、大丈夫?”

 

「うん。とりあえずは……ごほ。しばらくすれば、止まると思うから」

 

 セリナから貰った、強めの吸入薬。「これを使うようなときは、一応診せてくださいね」とは言われたけれど、今日はまあしょうがないかな。でも、ちょっと最近はあんまりひどいから、ちゃんとしっかり診て貰ったほうがいいかもしれない。

 

「うわーっ! マグロがー!」

 

 割りと聞き馴染みのある声が聞こえてくる。

 

「お造りにと思っていたんですが、これでは天ぷらですわね……」

 

「囲まれてもしまいましたしね☆どうしましょう?」

 

「皆でバラバラに逃げたほうが助かるんじゃないの!?」

 

 三人分ののんきで、かつ堂々とした声。それに、一人の焦った声。そう、ゲヘナのテロリスト集団、美食研究会だ。……まあそうだとは思ってたし知ってたけれども、やっぱりこれテロだよなあ、と音を聞きながら思う。

 

 薬も少しだけ効いたような気がしてきたので、路地から大通りに顔を出す。すると、ちょうどハスミちゃんがモブの子達に指示を出して追撃をしようとしているところだった。

 

「各自追撃してください! このトリニティ自治区で、私達から逃げるのは不可能です!」

 

 あ、これは……私は皆に断って、自分で追いかけてみることにした。

 

 もう一回路地に入って、しばらく進んだところにある、スイーツ店のテラス席の近く。そこに、赤い姿が座っていた。

 

「こ、ここまでくれば大丈夫よね?」

 

「さあ、どうかな?」

 

「わああああああああああ!!!!!!!!!! って、キタノ!?」

 

「や、ジュンコちゃん久しぶり」

 

 まあ例の如く私と美食も知り合いだ。この子達は、美食に対する探究心は本物だから、たまにはご一緒したいときもある。まあ大体店に行かないときだけど。バーベーキューとかね。「誰かと食べるのもまた美食」だって。まあ私もわかるよ。でもそれ、原作では先生とともにつかんだ崇高では……?

 

 あ、そういえばここに来た理由忘れてた。

 

「はい、いる?」

 

 手元から出したのは、マカロンの残り。いっつもかわいそうな目にあってるし、たまにはこういう約得が会ってもいいよね、ってことで、ジュンコちゃんに持ってきたのだ。

 

「い、良いの!? ありがとう!」

 

 ジュンコは、マカロンを取るとゆっくり、大切に口に運び始めた。

 

「お、美味しい! ほんとありがとう!」

 

 そうして黙々と、それでいて表情豊かにマカロンを食べるジュンコちゃんを眺める。本当に美味しそうに食べるなあ。こうやって美味しくご飯を食べられると、こっちまで幸せな気分になる。

 でも……その幸せも残念だけどここまでなんだよなあ。

 

「ジュンコちゃん……」

 

 そこに、ぬっと現れたのは、アカリ。心なしか諦めきったような顔をしている。

 

「あ、アカリ!? 助かったの?」

 

「いえ……簡単に言うと……終わりました」

 

 アカリが倒れると同時に、私は引き金を引く。ちょっと隙を突いちゃったみたいで申し訳ないけど、ツルギ先輩に思いっきり打たれるよりはマシだとおもう。これは介錯みたいなものだから! ごめん!

 

 バタリ、と倒れる音がして、ジュンコちゃんを支える。かろうじて頭を打つ前に支えられた。

 

「はい、ツルギ先輩」

 

「……ああ。すまないな」

 

 あら、今日は落ち着きモード。

 

「もっと大暴れしてるものかと思いましたけど……我慢できたんですね。えらいえらい」

 

 ツルギ先輩の頭を撫でると、抵抗はなく、少し気恥ずかしそうに頬を染めた。

 

「……ここで暴れたら迷惑になる人もいるって、キタノに言われてからは自制してるんだ」

 

 そんないじらしいことを言うツルギ先輩に、ジュンコちゃんの身柄を渡す。

 

「……うん。私が言ったこと、守ってくれてるんですね。嬉しいです」

 

「……じゃあ今度模擬戦を」

 

「無理です」

 

 これは食い気味に言わせてもらう。今のこの体でやったら死んじゃうよ。

 ツルギ先輩は、しょぼんとなりながら帰っていった。

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