前世の記憶が戻ったので、シャーレでハッピーエンドを手に入れたい   作:うどんそば

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お久しぶりです。まだごたごたは終わってませんが、一応生存報告の投稿です。
またすこし空きますが、一月二月でまたペースは戻せるんじゃないかなと思ってます!

投稿はまたこれからちょくちょくしていきますのでよろしくお願いします!


容疑者:美食研究会−1+1

”ごめんね。なんだか変な所見せちゃって”

 

「いやいや。まあ先生もたまにはこういう事あるよね」

 

 よく考えたら先生もたまには精神が不安定なときもあるよ。なんであんなに取り乱してたのかはよくわかんないけど、多分私のせいだしね。

 

「んじゃあ、そろそろ落ち着いたし行こっか」

 

”そうだね。あの子達も悪いことをしたとはいえ、縛られたままっていうのはかわいそうだし”

 

「……どうだろ。割といつも縛られてるからそれは思わないかも。あっフウカちゃんは可哀想だからやっぱ急ごう!」

 

 忘れてた。今回はフウカちゃんも巻き込まれてるんだ。ゲヘナだったら巻き込まれてただけっていうのがわかるから割とすぐに開放されてたけど、ここはトリニティ。そういう事情なんてわかるわけなく、そのまま捕縛されているはず。かわいそうだね……例の顔してるんだろうなあ。

 

「ちょっと走ろっか」

 

”……キタノ、大丈夫? 喘息って走ったりすると悪くなるんじゃないの?”

 

「まあ多少は。でも気にしなくてもいいでしょ。吸入があるし」

 

”薬があるからって増悪するような事するのはいけないよ”

 

「まあそうかも知れないけどさ」

 

 でも、そうでもしないとなんにもできなくなっちゃう。これからどうなって、何がどうして、ハッピーエンドに向かうかなんて、誰も知らないんだからさ。下手したら私がいるせいで想定より悪くなっちゃうこともあるかもしれない。

 

 私はあくまで大きく影響を与えたいわけじゃない。でも、先生が傷ついたり、この世界で仲良くなった子たちが絶望したりするのを止めたいだけなんだ。だから、私は先生に強く干渉しないし、先生に付いていくだけ。でも、それで先生の足を引っ張っちゃったら元も子もないし。

 

「あ、見えてきた。あれだね」

 

 廃ビルのような様相を呈している、トリニティの端の臨時収容所。そんなに使われることはなかったらしいけど、今回みたいなことがあるからなくすことはできないし、もちろん常駐の子たちもいるから、外見ほど中はぼろぼろになっていない。数年前にティーパーティー候補だった三人といっしょに差し入れをしに来たことがあるから、私は入ったことがあるのだ。

 

”なんとも……味のある建物だね”

 

 入口に立った先生は言う。

 

「まあまあ。とりあえず入ってみようよ」

 

 そう促すと、先生は少しだけ建付けが悪くなったドアを開けた。

 そこに広がっていたのは作りは古いけどきれいなエントランス。収容所のみならず、正義実現委員会運営の診療所も兼ねているため、きれいに整備されている上、調度品も結構良い施設である。その上、凶悪犯と直接戦うことは少ない部署でもあるので、武闘派じゃない正実の子たちには人気の所属先らしい。

 

”思ってたよりきれい……だね”

 

「でしょ。……美食研究会の身柄引き渡しのために来ました」

 

 エントランスの委員ちゃんに一言告げると、「お待ちしておりました。この名札をかけて、七階にお願いいたします」との言葉とともにプラスチックのそこそこ立派な名前札を渡される。シャーレと立場上何度かこの場所に来る可能性もあるので、その配慮かな?

 先の方に進んで、待合室の奥にあるエレベーターに向かう。エレベーターは止まる階が違うものが二種類あって、片方には簡単に乗れないように警備員が立っている。私と先生は、その子に少し会釈をしてエレベータに乗り込んだ。

 

”あの二種類のエレベーター、なんで別れてるの?”

 

「ああ、あれは凶悪犯とか危険度の高い容疑者を収容してる階と、普通の容疑者を収容してる階で間違いが起きないように別れてるらしいよ。どうしても、普通の部員じゃもし襲われたとき対処できないからって」

 

”ああ、なるほど……”

 

 誰を思い出しているのか、死んだ目になる先生。まあ納得だよね。普通に治安最悪だし、先生死にかけたこと何度もあるし。

 

 ぴんぽーんという音とともに七階と表示され、扉が開いた。そこには硬そうなコンクリ造の壁に鉄扉が備えられた、明らかに厳重な扉があった。その隣には前に模擬戦をしたことのある子が立っている。……あの子の実力なら、まあ最悪暴れられても初期対応できるだろうからかな。

 

「久しぶり」

 

「ん……って、先生だけじゃなくてキタノさんも来てたんですか?」

 

”キタノさん? 同級生なんじゃないの?”

 

「同級生ではあるのですが、キタノさんを教官として模擬戦の指導を受けたことがありますので!」

 

”へえ、キタノそんなこともしてたんだ”

 

「ゲヘナで訓練したときに、トリニティ生徒なのに向こうにだけに訓練するのは良くないって言われて訓練したんだよ。この子はすごく強いんだよ〜! 多分将来のエース候補ってやつ!」

 

”それはすごいね。あれだけいる正義実現委員会のエース候補なんて”

 

「恐縮です! これからも邁進してまいります!……さて、ご要件は承っております。中の容疑者たちの引き渡しでしたね。今鍵を開けますので」

 

 物々しい複雑な錠を取り出し、扉の鍵穴に差し、解錠する。ぎい、と重い音を鳴らしながら開けたその中には、綺麗さは残るつつも、脱出できないようにか、物という物が極力置かれていない部屋が広がっていた。そうして、部屋の真ん中には縛られた四人が。

 

「久しぶり?」

 

 中の四人に声をかける。イズミちゃんを除く三人と……巻き込まれたフウカちゃん。美食研究会組は割とにぎやかだけど、フウカちゃんは例の顔でたたずんでいた。

 

「お久しぶりです、キタノさん。早速お聞きしたいのですが、私たちはどうなるのでしょう? このまま正義実現委員会の方に引き渡されるものだと思っていましたが、シャーレが来たとなると?」

 

「うん。今回はもうゲヘナ側に引き渡すことにしよっかなってことになってさ。その護送役に私たちが選ばれたの」

 

「そうですか。では護送車に移動ですか?」

 

「うん。そこの扉を出たところにいる子に案内してもらってね。ちなみに一応だけど、逃げようとしても私がすぐ行くから」

 

「ええ!? キタノが来るの!? ぶるぶる……」

 

 私が来ると知るや否や、突如震えだすジュンコちゃんをかわいそうな顔で見つめるアカリちゃんとハルナちゃん。なんで震えてるんだろ……。

 

「ま、まあ護送車に乗ればいいんですね? では皆さん行きましょうか」

 

「うん、行って行って! フウカちゃんがかわいそうだったから、ちょっといいやつにしてるからね」

 

 そういうと、フウカちゃんの顔が少し明るくなる。

 

「ほ、ほんと!? キタノ、ありがとう」

 

「全然いいよ! フウカちゃんはなんなら巻き込まれた方じゃん!」

 

 フウカちゃんは少し目をうるませて、「あ、ありがとうキタノ」と言うと、三人の後をついていった。これからみんなが乗る護送車のランクはかなり高いものだ。具体的に言うと、要人向けの護送車……つまり、お偉いさんがなにか問題を起こしたとき用ということ。

 トリニティには、こういった要人用の何々っていうのが多い。けど、最近の要人クラスの人で誰か逮捕されたとかそういうのは聞かないし、実際この護送車にしてとお願いしに言ったときも、手入れはしても使うことはなかったからと、二つ返事で許可が出た。まあ、使わなかったらもったいないしね。

 

 少し牢の中を掃除して、私達もメッセージでハスミちゃんにこれから出発する旨を送ったあと、ドアの外で敬礼をする守衛ちゃんに敬礼を返しつつ、下に降りた。

 建物から出て、正面に停めてあったのは見た目は地味な普通の護送車。物々しい雰囲気が漂ってはいるが、内装は随分と豪華。後ろはスモークガラスになっているので、外からは判別つかないけども。

 

「じゃ、先生。助手席ね」

 

”うん。ありがとう”

 

 本来なら先生が運転してもいいのかもしれないけど、運転席よりちょっとだけ助手席のほうがセキュリテイがいいから先生が助手席に座るように促した。中に入るのが要人なら、一緒に護送する側もそこそこの階級のものを伴うことがあるから――らしい。

 

「ええっと……大橋、だよね?」

 

”そうだね。キタノ、運転大丈夫?”

 

「うん。慣れてるから大丈夫だよ」

 

 これでも色々あってそこら辺の人より慣れてるのだ。体の感覚が変わるたびに修正はいるけど、感覚全てが新しくなるわけじゃないからね! ちゃんと最近も練習してるし、問題ないはず!

 

「じゃあ、いこっか」

 

”そうだね”

 

 カチ、という先生がシートベルトをつける音を聞いた私は、一速にギアを入れた。

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