1年1組は緊張感が漂っていた。転入して来た直後に、いきなり自分達なりに気遣っていたシャルルを平手打ちしたラウラ、それに対して専用機の腕を部分展開して鉄拳による過剰報復に出たシャルル。
事なきを得て、織斑先生が釘を刺したが・・・・『溜め込んでいたもの』があるとは思っていたが、あれ程とは想像出来なかった。初日の一夏を遥かに上回るものだった・・・・つまり、一夏のお陰で耐性が僅かに出来ていたともなる。
1日経ってどうなるかと思っていたが?
「シャ、ルル・・・・その、この・・・・」
「う、ん・・・・そ・・・・の単、語・・・・意、味」
国語の授業後、まだ慣れてないラウラは単語の意味をシャルルに質問しながら何やら、歩み寄ろうとしているが?片や明らかに抜けてない恐怖に震え、片やテロの後遺症が抜けないシャルルで会話すら上手くいかない・・・・何が起きたかは知らないが、昨日のままよりはマシだ。離れた場で心配そうに本音が一夏に話し掛ける。
「おりむ~、あの二人~?大丈夫、かな~?」
「連中次第だ」
「お厳しいですわね・・・・何かアドバイスくらい、は・・・・」
セシリアは、自分が言えた義理では無いと凹んでしまった。考えてみれば、家の再興等に構いがちだったので、何も参考になる事は言えない・・・・何か、話題を変えようとして・・・・大事な事に気付いた。
「あの、一夏さんは、タッグマッチトーナメント・・・・『パートナーをどうなさいますの』?」
クラスに違った緊張感が走った。先日の騒動で忘れていた。これに対して、真っ先に反応したのは箒だったが?
「一夏、私と組め!」
「ああ、俺は『クロエと組む事にしてる』」
「はい、昨夜に『いっくん様』から誘われました」
『いっくん様』?
「何それ~?『いっくん』って、おりむ~の事だよね~?」
「ああ、束さんからそう呼ばれてた。クロエの前で時々俺の話題出したらしくて?つい。そう言っちまったらしい、様付けしても妙な感じになってるから?別に良いかって?何とか・チャンがさん付けで呼ばれる違和感とかでそう考えるのかどうかわかんねえけど」
喚き始めた箒を卍固めして黙らせながら淡々と説明する一夏、クラスで木刀振り回しながら暴れては多種多様にこうされているが、やはり薄々周りに気付かれてはいる。要は箒は自分より束か、それ絡みを優先させる一夏に我慢ならないのだ。
その点に関しては、推測される限りで箒に同情出来ないとされている事にまだ本人は気付いていない、直接筋を通して堂々と文句を言うマドカが良い見本になっている。
そして、放課後の訓練用アリーナにおいて、次のトーナメントに向けて練習を開始する者達が何組かいたが、その中で?
「「・・・・」」
会話すらままならない二人、フランスとドイツの代表候補生なだけはあって実力だけはあるのだが、連携以前の問題だとして当日は敢えて連携しないで個々でやろうかとすら考えていたが?
「よお、お前等が噂の『問題児なガキ二人』かよ?」
後ろから掛かった声にドキっとしてしまう、問題児呼ばわりは良いが、声の主からはどうも獲物を見つけたような声色があった。
「オレは三年のダリル・ケイシーだ。一応はアメリカの国家代表候補生・・・・こいつは専用機のヘル・ハウンド・・・・おい、どうした?」
長い金髪をホーステールにした気の強そうな金髪美女・・・・だが、その鋭い目線が二人を怯ませていた。後ずさり、震えている様子・・・・自分は決して弱い者いじめをしに来たワケではないから拍子抜けしていた。
一方で、ラウラはダリルから感じたものに覚えがある。マドカを含めた部隊がドイツに現れた時、黒ウサギ隊の総出で足留めがやっとだった部隊にそっくりな空気、まさかとは思ったが確信が持てない。
そして、シャルルは本能で察していた。自分達を見下ろす上級生から感じるのは、自分が日本に向かう途中に乗ってた飛行機を撃墜された時に感じた空気と似ている・・・・つまり、この女性は普通の学生ではなく?
ザッザッと、歩を進めて来るダリルが何か恐ろしい死神のように感じた。ダリルは何となく二人の状態を理解し、予定変更してラウラの専用機、黒い雨(シュバルツェア・レーゲン)の肩をヘル・ハウンドの足で起動ユニットを蹴り飛ばし、ラウラを転倒させた。何を?と思ったシャルルの首部分を掴んで見据えた際の表情をじぃっと除き、考え通りで?
『誘いのチャンスと思った』
「あの織斑先生が目を掛けたした奴等な割には情けねえなあ?お前等の起こした騒ぎは噂で聞いた。IS学園には、毎年勘違いして使い方を誤ったり?意気がって問題行動起こす割には口程にもねえ奴等がいて、卒業後も見苦しい事になってる奴等が増えててなあ?まだ二人でもIS使える男が出た事まで含めてで社会問題秒読みなんだ。どうやらお前等、来たばかりでお先真っ暗方面行き待った無しのようだな?」
言っている事は事実、ダリルはシャルルをラウラの方に投げて、持論を説くと見せ掛けた揺さぶりを開始した。
コアの数が少ないのを含め、IS学園はある意味で卒業してもお先真っ暗な場に近い。
例えば、専用機を貰うかテスト担当にでもなるのは例外として、勉強さえすれば男性でもなれるような技術者となるにも必死さが違い過ぎる。そんな相手には公平な勝負では勝てない。
学園の卒業生だけでも年々増えて、コアが467しかないISは予備の使い手だけ増える事態になるが、それが何になると言うのか?篠ノ之博士がコアを新たに作ってくれたり誰かが独自にコアを作ってくれる保証は無い。
競争で敗れた場合、女性だからとして何もかも度外視で贔屓されても全うにIS関連を志した者達にそんなのは耐えられない。
IS関連で一線にいようにも、今のように競技として続く場合?現役の国家代表が引退するまで約10年はあるとした場合、後に続く者達がどうなるのかと?考える程に悪夢だ。
マトモな感性であればある程に時間が経てば苦しむ事になるのだとダリルはそれっぽく力説をした。ラウラが言ったようなファッション感覚しかない者達より更に踏み込んでいる。
周りで様子を見ていた側も痛いとこを突かれたか、ダリルに同意する目になっている。
(まあ、正にお前が言うなの見本だがな、オレもマトモな方じゃねえし・・・・けど、それなりの意地はある・・・・だからこうするのさ)
「長話しをしちまったな、お詫びに?この場でオレに全力で向かって来てみな?特にシャルル・デュノアだっけ?お前は飛行機をテロで撃ち落とされたショックが抜けねえままだけじゃなくて、見つかってない犯人を憎む事も自分で探す事すら出来ねえくらいになっちまってるようだな?」
ビクっとなったシャルルを見て取ったダリルは、敢えて『危険域に土足で踏み入った』・・・・そう、これが良い・・・・傍目には戦闘狂程度に見える程度に口端を吊り上げて告げた。
「オレをお前の飛行機撃ち落とした奴のつもりで掛かってきてみな?案外、そのままでいるよりはマシかもしれねえぞ?」
「・・・・」
ラウラは、シャルルから立ち上ったドス黒いオーラに身を震わせた。周りも同様で、笑ってるけど笑ってない顔になったシャルルに腰を抜かしている。いけない・・・・これではと思っても声すら録に出ない、ダリルはその光景に目論見通りだと笑った。
(・・・・ク、ククっ・・・・そうそう、怒れ!怒れ・・・・!更に怒れ・・・・ドス黒い怒りと憎しみに身を任せちまえ、血筋の呪いなんか関係ねえぜ・・・・鬼を通り越して、『獣』になるくらいに怒って、憎んで!狂っちまえよ!)
ダリルの言った事って、要は467しかない兵器に関われるかどうかな競争になって、場合によっては?とこ。
↓
キャラ紹介。
ダリル・ケイシー。
アメリカ代表候補生であり、近年で学園上位の実力者となる三年生。オレっ娘であり、何故か厳しい態度で周りを見据える結果、妙な人望を得てしまっている。