僕の名前は禪院直哉、禪院家次期当主や。
正直に言ってしまうと当主になったら面倒事が増えそうな気がしてなるのが嫌になってる半ば無理やり当主にされそうになっとる次期当主なんやけど。
一番の困り事は許嫁についてやねん。普通に考えたらあの子もは過保護でえぇお嫁さんになるんやろうけど。僕に対する執着心がスゴすぎる。
なんせ、あの扇のおっちゃんも諦めるほどやで?僕の言うことなんか曲解して突進する女の子、ハッキリと言えばかなり扱いに困っとる。
加茂家や五条家の連中は従順なヤツやって羨ましがっとるけど。僕の言うことも聞かんときがあるお転婆さんやねんで?
ほんまに、それでもえぇんか?
「ウゲェーッ、禪院直哉じゃん」
「なんや五条悟くんやん、久しぶりやね。とりあえず、僕のこと見たら『ウゲェーッ』っていうのやめてくれん?わりと悲しくなるんやけど」
「お前なんか可笑しくねぇか?」
「いや、そないなことないで?僕は許嫁のお弁当のおかげで元気やでって、そういえば悟くんの彼女さんはどっちなん?」
そう巫女装束の女の子と高専の制服の女の子を見比べる。いや、もしかして、こっちの変な前髪の男の子と付き合ってるんか?
いや、いやいやいや、さすがに悟くんやからな。それはありえへんやろうけど、万が一のことを考えると五条のみなさんに報告せんとあかんねんけど。
えぇ、どないしよう?
「直哉様、直哉様、おそらくこの方です!」
「なんで私が五条と付き合うのよ!?」
「私の術式と似てるからですよ?」
「………へぇ、そうなんだ」
〈五条悟VS禪院直哉〉
これはほんまにアカンや。
僕は許嫁の術式『催馬楽恋歌』によって身体能力・呪力量・術式強化など様々な恩恵を受けつつ、にやけている悟くんと向かい合う。
彼女の『催馬楽恋歌』は愛情=術式の強さ。つまり、彼女は僕の事が好きであればあるほど術式の効果を爆発的に向上させる。
いわゆる愛情ドーピングを僕は受ける。
対して悟くんと一緒にいる庵歌姫の術式『単独禁句』は自他のスペック限界を越えて、120%も引き出す術式である。僕の許嫁と似てるけど、あんまり似てない術式や。
「術式順転『赫』ッ!!」
「アカンって、いきなりぃ!!」
悟くんの『赫』を避けずに弾き飛ばす。
これも許嫁に教えて貰ったヤツの一つ。まあ、投射呪法の応用とも言える。まず相手の攻撃に触れる。即座に投射呪法でフリーズさせて、そのまま角度を変えて攻撃を弾いたり返したりする。
さすがに無限はズラすんで精一杯やったけど。これなら悟くんに負ける心配はない。ただ、どうやって無限を避けて進むのかが問題やねんなぁ……。
トンッ、トンッ、トンッ………。
ゆっくりと跳ねる。
イメージするのは悟くんの後ろまで駆け抜ける姿だけでいい。いくら悟くんでも
轟音。爆音。まあ、どっちでもええけど。
地面を抉りながら突進したせいで、僕の制服と身体はボロボロで悟くんも制服と身体がボロボロになっとる。よし、ここは棄権しよう。
「ゴホッ、イッテェ………なんだよそれ」
「な、直哉ファントム?」
「………直哉ファントム?」
「うん、許嫁につけられた」
「……えと、なんかワルいな」
やめて、そないな顔で見んといて!?