「では、王の話をするとしよう」
俺とマシュと所長はフォスキアさんが引っ張り出したのは理想郷に存命する(アルトリア曰くクソ・オブ・クソのゴミカス野郎と名高き)魔術師のマーリンだった。
…というよりも。いきなり食堂で空中に穴を開け、マーリンを引っ張り出すところを俺達は思いっきり見てしまったのが今日のビックリニュースだ。
「マーリン、ちょっとストップ!」
「どうしたんだい、立香君?」
「王様の話ってアルトリアのことだよね?」
「如何にもそうだが、それが?」
「…じゃあ、エミヤとアルトリアのことも?」
俺の問いかけに笑うマーリン。ゆっくりと本を閉じたかと思えば新しい本を取り出して俺達に話を聞かせようと近付いてくる。
「では、とある剣の英雄の少女と見習い魔術師の少年の恋の物語をするとしよう。そう、あれは寒い冬の日の出来事だ。いつものように友人の手助けをしていた。しかし、その日は学業も重なり夜遅くまで頼まれ事をやっていた少年は見てしまう」
ごくり。俺達はまだ話し始めたばかりなのに緊張した面持ちでマーリンの話に集中する。しかし、物凄く赤面したエミヤとアルトリアにマーリンはあっさりと拐われてしまった。
えぇ、そこでなの?
「どうしましょう、すごく気になります!」
「……ま、まあ、興味は惹かれたわね」
「エミヤ、そんなに恥ずかしかったのか」
なんとも言えない微妙な空気で過ごしているとクー兄さんと異世界おばさんがやって来た。あの二人もなんだかんだで一緒にいることが多い。
まあ、おばさんはドラえもんだけど。クー兄さんが自分のコピーロボットや転ばし屋と楽しく戦っているのはよく見掛ける。
さすがは未来の道具ということもあり、クー兄さんは完コピされた自分と戦うために、いつもシミュレーションルームに居たり食堂で異世界おばさんにご飯をタカっている。
「そういえばマシュのお母さんとロマンの馴れ初めってどんなのだったんだろうね」
ふと思ったことを呟く。
するとさっきまでワイワイと賑わっていた食堂が静かになった。えぇ、また俺って余計なことを言っちゃったの?とショックを受けつつ、ロマンの方を見ると必死に視線の逃げ場を探していた。
なんか、ごめんなさい。
「先輩、私のお母さんは『どこかの町で会った』とは言っていましたよ。ちなみにドクターはカルデアで再会したときに『えっ、君と会ったことあるの!?』と驚いたそうです」
「違うんだよ、マシュ。あれは、そう、あれなんだ。ちょっと仕事で忙しくて五日ほど徹夜していたから記憶が混濁していたんだよ………たぶん」
なるほど、これがダメな大人か!