アイツはおれより強い女だ。
おれより一本多く刀を使っている三刀流の女だ。荒々しく力強いクセに優しい匂いのする。アイツに稽古を受けていると身体の底から強くなっているのがなんとなく分かるようになってきた。
「参ノ牙"切り裂き"ッ!!」
幾度となく鬼の首を切り裂き、塵に還してやったおれの技は掠るどころかただの爪楊枝で防がれる。ふざけるな、ふざけるなよ、こんなに遠いなんてあるわけがねえんだ。
おれは誰よりも強くなるんだ。
あの柱とかいうやつらよりも十二鬼月よりも強くならなくちゃアイツらを守れねぇ……!
「ああ、なんて狂暴な剣…もう少し柔らかさを取り入れないと簡単に折れちゃいますよ?」
「ウルセェ、ウルセエェ!!おれの剣は強くなけりゃダメなんだ、あんなチビの鬼に良いようにあしらわれるのなんざ御免なんだよォ!!」
「傲り、慢心、油断、それが嘴平君の悪いところです。貴方は強くなるかもしれない。けれど、今の貴方は剣を振り回すだけの獣でしかない」
その言葉を聞き終えると同時におれの木刀は砕け、おれの身体を裂くように右斜めに一筋の痣が出来た。また負けた、これでもう何度目だろうか。
そんなことを考えているとおれを見下ろすように三刀流の女が現れる。あのチビ鬼より強くて速いこいつを倒せればおれはまだまだ強くなれるんだ。
「嘴平君、私と約束してください。貴方の我流とも言える呼吸は控えめに言っても素晴らしいものです。ですすから乱暴で狂暴な剣筋を整えて、より強く、より鋭く、より速く、誰もが認める剣士になると」
「…そんなの当たり前だ。おれは山の王だ、誰よりも強くなきゃ仲間は守れねぇ!」
〈十日後〉
ようやく刀が届いた。
鋸の様に細かくついた刃、腰紐になる鞘、すべて三刀流の
女がおれのために頼んだ刀だ。………一瞬だけ色のついた黒い刀になった。
「伊之助殿の刀は藍鼠色なのですね。とても良い色だ。ただ、彼女の黒刀に成るのはまだ無理なようですね。少し残念です」
「えっ、あの人って黒刀なんですか?」
「おや、竈門殿も知らなかったのですか。彼女…いえ霜月楪殿曰く『真の色変わりは二度起こる』そうです。そして、真の色こそ『黒刀』である……そう言っていました」
「じゃあ、おれの刀は…」
「それはただ黒いだけです。彼女は『刃こぼれ一つ己の恥』と思っています。ただ黒くなるのと、黒刀に成るのは似て非なるものです。あと鋼鐵塚、貴方の刀が折れたのは竈門殿の未熟さと貴方の腕前がう合っていないだけです」
おれの刀を作った刀鍛冶はそう言うと研ぎ直されたアイツの刀を見せた。紫色の刃紋、真っ直ぐと突き抜ける刃紋、乱れた刃紋、その全てを塗りつぶす黒刀におれたちは目を奪われた。