鋼人七瀬。
私が二度も遭遇してしまった怪異だ。
一度目の遭遇で物理的攻撃は不可能と断定していたけれど。掲示板のお姉さんたちのおかげで攻撃手段を手に入れた。そこまでは良かったのだ。
現在、私はよく分からない少女(私より年上?)に鋼人七瀬とまともに戦える理由と両手に巻いているビニールテープについて問われる。こういう場合、どう答えれば正解なのだろうか。
「それで先程の技を私に教えてもらえますか?」
「あれは技って程のものじゃ…」
「そう御謙遜なさらずとも。あの鋼人七瀬の脇腹を吹き飛ばす破壊力、鉄骨を避ける素早い動き、何かしらの格闘技をやっているのは事実ですよね?真奈美さん」
「というか。なんで私の名前を知ってるんですか?自分で言うのもあれですけど。私は普通の女子高生ですよ?まだJKですよ?」
それなのだ。彼女は、岩永琴子さんは私の名前を知っている。どうやって調べたのかと聞けば地元の学校を調べれば分かると平然と言われたが、私にはなにも分からない。
「まず岩永琴子さん。私のやったのは気力をぶつける、ただの子供騙しです。本物だったら確実に鋼人七瀬を吹き飛ばすか、粉々にしています」
そうマジカル☆マザーも言っていた。あの人は気だるそうな雰囲気の人だから信用できるのかは怪しいけど、今回のことで信用できると思う。
ただ、こうなったのは掲示板のせいだ。私が安全で平穏な生活を送れるようになるまで徹底的に利用してやる。そうしないと釣り合わないのだ。
「本物ということはあるんですね?鋼人七瀬のように不死身の怪異と渡り合える格闘技が」
「…あるにはあります。けど、岩永さんには扱えないと思う。さっきのは『剄嚶』という身体を保てなくなるぐらい気力を流し込む技なんですが、踏み込みが効かないと無理です」
「そうですか。では、他の攻撃手段はありますか?その『ケイオウ』を一度放っただけで衰弱していたようですし、奥の手はあるんでしょう?」
この人すごいな。私の動きが悪くなった理由を的確に言い当ててる。しかし、私が掲示板で教えてもらった事を自分で知り得たように話すのは、とてつもなく申し訳ない気がする。
〈頭の中の掲示板〉
201:レズに捕まった喪女
私は思ったわけですよ、女の子って怖いなと。
202:日本の秘密兵器
まあ、分からなくもない。
私の娘もレズになっちゃったし。
203:世界最強
お前達の世界は混沌としているな。
204:ウルトラお母さん
私の友達も似たようなことしてくるけど。
なるほど、そういうことだったんですね!
205:マジカル☆マザー
お母さん、やっぱり天然だよね?
206:なにも分からぬ
ちょっといいですか?
207:旧支配者の娘
私が聞こう!
208:なにも分からぬ
教えて貰った技なんですけど。
他の子にも教えてもいいですかね?
209:マジカル☆マザー
べつにいいよ。
210:日本の秘密兵器
私も教えたし問題ないと思う。
211:なにも分からぬ
ありがとう、それじゃあまた。
212:日本の秘密兵器
えぇ、気を付けるのよ。
213:旧支配者の娘
また、無視された
214:腹ペコゲーマー
仕方ないですよ、下手したら発狂しますから
215:ガチ恋剣道小町
そうですよ
〈なにも分からぬ:LIVEモード中〉
とりあえず許可は貰えた。
私は岩永琴子さんの目の前に正方形に切り取った和紙を並べていく。日本の秘密兵器さんの教えてくれた「陣」はまだ使っていないし、あんまりオススメしたくないんだけど。
「これは妖掴みの陣の呪符です。怪異や妖怪、悪しきモノを地中に引きずり込み封印するお札です。私は一度も使っていないので効力があるのかも不明の代物です。それと、予備のビニールテープも貸しておきます」
「おお、呪符ですか。しかし、陰陽師や霊媒師の用いるものと絵柄が違いますね」
そりゃあアニメのやつだからね。
そんなことを考えながら会計を済ませて走り出そうとする岩永琴子さんを見送る。…ところで、この幽霊は連れていってくれないんですかね?
わりと怖いんですけど。