私は『愛』を知らないアイドルだ。
好きだよ、愛してるよ、ずぅーっと嘘をついてアイドルをやっていた。最初は仲良くやっていたメンバーと私が贔屓されるのが目に見えて分かってから拗れて嫌がらせを受けたりもした。
そんな時だ。
私がミオちゃんと出会ったのは彼女は私が嘘つきだと理解してくれて、私とB小町の衝突を押さえたり無かったことにしたりするのが上手くてファンのみんなにも本気の『愛』を貰っている女の子だ。
最初は羨ましくて愛される方法を聞いたけど。ミオちゃんも『愛』は分からなくて大人になったら分かるんだと勝手に思っていると教えてくれた。
そういうものなのかな?と私は考える。
でも彼女の考えていることが私には分からない。そんな私をメンバーのように突き放したりせず、ミオちゃんは「これからよろしくね」と言ってくれた。たぶん、すごく嬉しかったと思う。
ミオちゃんは私のはじめての友達だ。好きなものを言い合えて、どうやったら『愛』が分かるようになるのかを真剣に語り合える大切な親友だ。
そのミオちゃんの片腕が動かなくなった。
腕が動かなくなった原因は私の子持ちだと知ったファンによる凶行と運悪くミオちゃんが犯人と居合わせてしまった事だ。
ちがう、ぜんぶ私のせいだ。
私がアイドルになったからだ。
私が嘘つきでみんなを騙していたからこうなったんだ。そうじゃなかったらミオちゃんの腕が動かなくなるわけがない。
私を優しく抱き締めてくれるミオちゃんの腕が、愛を振り撒いてくれる腕が、私なんかのせいで一生使えなくなっちゃったんだ。
そんなことを考えているとミオちゃんが私の肩に寄り掛かってきた。どこか不満げな視線と納得してしまったような表情だ。
「アイちゃんは悪くないよ。私とアイちゃんが出会えたのはアイドルをやっていたおかげ。ずぅーっとキラキラできたのもアイちゃんのおかげ。たぶん、私はアイちゃんに会うために生まれてきた」
「……どうして?…」
「そんなの決まってるでしょ?」
そう言うと立ち上がったミオちゃんは片腕を広げ、にっこりと笑いながら私を抱き締めてくれた。なに?どうしたの?と問いかけたいのに言葉が出ない。
「愛してるよ、アイ。私の完璧で究極な最高にかわいい
「それはやだ」
「じゃあ、早くドームに行こっ?」
「………うん!」
私は『愛』を知らないアイドルだ。
それでも私を『愛してくれる人たち』はいる。
きっと、それは嘘じゃない。