なんか気づいたら高校生になっていた。
うっすらと記憶に残っているのはルビーに襲われる瞬間と、やたらと撮影現場で絡んでくるようになった有馬かなという少女にストーキングされたり楽屋に押し入り強盗のごとくやって来ては休日のスケジュールを確認される光景だ。
「おはよう、アクア。私の事、見えてたのに無視するなんて酷いじゃない。今日と明日と明明後日、あんたに仕事ないのは分かってるから、どこか遊べる場所に行くわよ」
「(なにこれ?なんかこれやばくね?)」
あまり考えたくない未来を想像し、ちょっと泣きそうになりながら入学式を終えてお家に帰ろうとしたところを有馬かなに捕まった。
この前の時よりもパワーアップして現れた有馬かなの腕をペチンッと叩き落とし、ギュウゥゥゥゥッと俺の腕に絡み付くルビーを見る。
いつもの天真爛漫な笑顔は消え失せて、じっとりとした瞳が精神を蝕んでくる。俺のかわいい妹は何処へ行ったのだろうか。
「あはは、ダメですよ?…
「アンタ、いっつもタイミング悪いわね」
二人ともやめてくれ。
そう言えたらどれだけ良かっただろうか。
ミヤコさんとアイは仕事でいない。つまり、この恐ろしい状況を壊してくれる人間はいないということだ。チラチラと俺達のやり取りを見ている人を見れば顔を反らされる。
「「
「すまん、俺の最推しはアイだ。イテテテッ!つねるな、踏むな!そういうのはまだ早いって言われてるんだから仕方ないだろ!?」
とりあえず、こうなってしまったのは斎藤社長の教育方針によるものだと誤魔化す。しかし、それで引き下がってくれるわけもなくルビーは譫言のように「置いてくんだ、お兄ちゃんも置いてくんだ」と呟き、有馬かなも「私だけを見るって言ったくせに」と壊れた玩具のように言葉を繰り返す。
〈五反田宅〉
俺の安住の地は監督の家だけだ。
「はい、泰志さんアーン♡」
「………うまいよ、うん」
やっぱり、監督の家もだめだった。
なにをやらかしたのかは知らないけど、監督も俺と同じようにミオさんに好かれまくっている。いや、ミオさんと監督の二人の関係は事実上の夫婦といっていいだろう。
というか。この二人の熱愛報道でふたりは炎上することはなかった。むしろ、ミオさんに関しては「思い止まってくれて良かった」など。そういうコメントしかなく、監督には「良かった、お前になら任せられる」なんてコメントが送られていた。