「お母さん、どうすればいいと思う?」
もう三人の対応に困り果てた俺は苦肉の策としてアイドルを止めて女優をやっているアイに相談することにした。きっとアイなら素晴らしい解決策を出してくれるはずだ。
『ねえ、アクアは知ってる?その理子ちゃんって女の子のいる世界の法律だと重婚は当たり前にできるし、なんなら兄妹でも結婚できるんだってさ』
「………えと、つまり?」
『ハーレム上等!好むものなり、酒池肉林!!』
俺はそっと通話を切った。
ちょっとだけアイはバカになったのかもしれない。そうじゃなければ、あんな変なことは言わないだろう。うん、きっとそうだ、そうに違いない。
俺の最推しアイドルからハーレムとか酒池肉林なんて下品な言葉が出るわけない。しかし、次に出演する『今からガチ恋始めます』という番組に出たら俺は確実に終わるだろう。
〈今からガチ恋始めます〉
なぜか俺の両隣を埋める黒川あかねとMEMちょに困惑する。他の出演者も彼女達の行動に驚きつつ、彼ら彼女らはすごく面白そうなモノを見つけたような目で見ている。
「んふふっ、アクたんってばどうしたの?」
「アクア君、こっち見てください」
いったい、どうなっているんだ。確かに前世はプレイボーイを気取ったりしていたが、こんなことになるほど悪いことはしていないぞ。
「黒川ちゃん、どうしてアクたんの腕を掴んでるの?そんなことしたらアクたんが困るじゃん、ほら早く離してあげなよ」
「貴女こそアクア君に近づきすぎです。彼は私の恋人なんですから抱き付こうがチューしようが私の自由だと思います」
えっ、そうなの?と言わんばかりに俺を見てくる出演者に全力で首を振って否定する。まずは落ち着け、落ち着くんだ。こうなっているのには必ず理由と原因があるはずだ。
「ねぇねぇ、あかねの言う『恋人』ってどういうことなのか私達にも教えてよ」
「いいですよ、私とアクア君の馴れ初めは」
にこやかに黒川あかねら語り始める。
〈黒川あかねの
私とアクア君の出会いは公園でした。
アクア君は引っ込み思案で中々友達の出来なかった私の手を引いて、色んな事を教えてくれました。鬼ごっこやかくれんぼ、他にも沢山のお遊びをやって、夏祭りにも一緒に行ったのに夏休みが終わったらアクア君は転校してたんです。
でも、こうやってまた会えたから良いんです。
アクア君、あの時の
〈回想終わり〉
黒川あかねはやばいやつだ。
しかし、俺とMEMちょ以外のやつらは全く気が付いていない。それだけ彼女の語ってくれた思い出は迫力を持っており、これ下手したらなにもしていない俺が炎上する可能性もあるぞ。
「あれぇ?それだと私が可笑しいみたいになるんだけど、どういうことかな?」
「え、どういうこと?」
「アクたんと遊んでたのは私だよ?」
そんなことを考えているとMEMちょが黒川あかねに対して反論する。よし、いいぞ。いや、よくはないのかもしれないが黒川あかねの暴挙を止めてくれ。
……ちょっと待ってくれ、お前なのか?
〈MEMちょの
アクたんと遊んでいたのは私だよ。
さすがにアクたんは覚えてないみたいだけど。ずっとお姉ちゃんお姉ちゃんって後ろを着いてきてのをよく覚えてる。
あの頃のアクたんは女の子みたいに可愛くて、今日会うまでずーっと女の子だと思ってたんだよね。それが楽屋で一人の時に「ひさしぶり、お姉ちゃん。ようやく追い付いたよ」なんて言われたら、ねぇ?
こりゃあ向き合うしかないでしょ?
〈回想終わり〉
とりあえず、もうやめてくれ。
お前、そんなことしたのかよ。みたいな目でめちゃくちゃ見られてるからホントにやめてくれ。というか、ルビーや有馬だけでも大変なのに、さらに二人も増えるとか無理だ。