星野アイの生存 -1-
ミオちゃんとヘビクラP、あとクレナイDと一緒にお酒を飲んでいると「うひゃはははははっ!」と笑う声が聴こえてきた。どうやらヘビクラPのイタズラで子供たちはお酒を飲んじゃったみたい。
「それにしても平行世界かぁ~っ、もしもとかたらればっていうのは好きじゃないんだけど。うん、ミオちゃんに会えなかった私がどうなっちゃうのかは少しだけ気になる」
「それは確かに気になるね…たぶん、私は世界からするとバグみたいな扱いだろうし。あ、そうだ。クレナイDとヘビクラPは異世界とか行けたよね?ちょっとだけ私達のこと連れてって!」
「……なるほど、面白そうだ。ガイ、お前も来い。こいつらを連れてあり得たかも知れない世界へ楽しい楽しい旅行だ!」
「おお、よく分からんがわかった!」
おっと、その前に書き置きはしておかないとね。
〈平行世界"原作"〉
ありふれた日本の都心部。行き交う人。宇宙人の気配も無ければ怪人の発する嫌な臭いも無くて、魔法の力も感じない。うわ、ホントに私達って異世界に来ちゃってるんだ。
「星野、あまり離れるなよ?」
「分かってるよ、ばろばろーっ」
「あいつらの笑い声、気に入ったのか?」
「うん、わりとね!」
そんな他愛もない会話をしながら歩いているとヘビクラPの動きが止まった。
いったい、どうしたのかと視線の先を見るとアクアとルビー、ミヤコさんが私を見て、どこか有り得ないものと遭遇したようなスゴい顔をしている。
「おい、逃げるぞ!」
「えっ、ちょっと!?」
いきなり俵担ぎされてアクア達から逃げることになった。いくらなんでも、それは可哀想なんじゃないの?と思っていると泣きそうなルビーが見えて、気がついたらヘビクPの後頭部に肘を叩き込む。
しかし、どうなっているのかな?
こっちの世界だと私はいないのだろうか?
それとも仕事の都合で二人と離れちゃっているのかな?なんて考えながら呆然としたまま立ち尽くす三人の目の前に移動する。
「みんなのアイドル、星野アイだよ~っ☆」
「ほ、んとに?ホントにママ……なの?」
「う~ん、ヘビクラP殴ったから説明が………そう、あれだ!パラレルワールドに行きたいって言ったら連れてきてもらったんだ!!あれ、ちがう?うーん、なんだっけ、ありえた?ありえない?」
「平行世界、近くて遠い場所にプチ旅行だ。俺じゃなかったらさっきの肘で気絶してるか失神してるぞ、少しはPを労れ」
「え、やだ」
私達の会話を聞いていたミヤコさんが、そっとお腹を押さえる。ああ、そうだ、そうだったよね、うん、ミヤコさんにも似たことしちゃってたね。
〈苺プロダクション〉
私達のいる世界と大きさが違うね。まあ、そういうこともあるって聞いてたし、そういうものなんだって納得しておこう。
「流石は平行世界、ミオもいないのか」
「ミオ?」
「ミオちゃんは私の親友だよ。いやーっ、私と張り合える女優もアイドルもミオちゃん以外にいなかったから合わせるのも大変だったよ」
私の嘘も偽りもない言葉に三人がまた驚く。
しかし、そうなると私は
「ママは、その、えっと」
「ルビー、落ち着け」
「それにしても此方のアクアは普通だね!」
どう話しかければいいのか悩んでいるルビーと、そんな彼女を優しく落ち着かせるアクア、うちの子とは少しだけ性格が違うようだ。
「それは、どういうことだ?」
「ヘビクラP、これって言ってもいいの?」
「まあ、大丈夫だろ、たぶん」
「いい加減だねぇ?んんっ、私の世界のアクアはなんて言えば良いのかな?『ハーレム上等!好むものなり、酒池肉林!』だね!」
「え゛っ」
「………さいてぇ……」
「……それはさすがに…」
ルビーとミヤコさんに軽蔑の視線を向けられるアクアに助け船を出してあげる。私のファンのヤプールさんが作ってくれた小型端末を操作して、立体映像のアクア達の写真を見せる。
「なんで私がウェディングドレス着て…まさか」
ルビーはバッと身体を守るように抱き締める。
うーん、どちらかと言えばルビーが襲って半泣きのアクアを無理やりタキシードに着替えさせたんだけど。こっちのほうが面白そうだから黙っていよう。
「こんに……アイ………ゆうれい?」
私の姿を見て恐怖するかなちゃんを見つめる。
あれ?ヤンデレの気配を感じない?むしろ清らかな風に感じる?すごいね、こっちの世界の女の子はまだアクアも未攻略みたいだ。
「はじめましてでいいのかな?もしくは、こんにちは?ルビーとアクアのママの星野アイだよ、気軽に義母さんって呼んでね!」
「……アイ、まさかとは思うけど」
「かなちゃんもアクアのお嫁さんだよ!」
私はまた写真を見せる。すると、どこか照れたようにモジモジとし始めるかなちゃん。アクアはなんか「うそだろ」とか呟き、天を仰いでショックを受けちゃっている。