岩永琴子の追求 -1-
私、岩永琴子の後輩は不思議ちゃんである。
謎の怪電波を受信しているとかエイリアンと交信しているとかそういうSFチックな話ではなく、本当に不思議な能力や武具など様々なモノに詳しい。
そんな彼女と過ごしていると不可解な行動を取るということが分かった。彼女の作っているモノの素材となる木材や金属、鉱石はホームセンターに売っているものが殆んどだ。
私の呪符や護符に関する道具は専門店の商品を買っている様子もある。また、彼女の証言によれば和紙の出来や大きさ、枚数によって威力も範囲も変わってしまうため適切なサイズの物だけを送ってくれている。
そんな彼女の道具では対処できない怪異と遭遇してしまった。いわゆる『藁人形』と呼ばれる呪術道具の等身大バージョンの様な怪異だ。
その怪異を『藁人形』と呼称しているけれど。実際に対面すると『藁人形』とは思えない異形の怪異であり藁の中に仕込まれた五寸釘やハサミ、カッターなど殺意溢れる道具が私を狙って飛び出てくる。
「全く乙女の柔肌を切り裂こうとするとは野蛮極まりないですね。しかし、大体の事は把握出来ましたし、今日は帰るとしましょう」
私は先んじて形成していた『陣地』の外側に飛び退く。彼女の呪符による効果で結界のようなものは作れる。しかし、アニメや漫画のように長くは続かないのが欠点である。
「はあ、九郎先輩の食事が恋しいですね」
私は簡易拠点のキャンプベースに戻り、彼女の纏めてくれた新しく増え始めた怪異について調査している資料と先程の『藁人形』の共通点を調べる。
彼女の見解によると桜川六花に助っ人、あるいは共犯者となった人物はいるそうだ。なぜ、そう思うのかと一度だけ訊ねると困ったように笑いながら「まあ、話せるようになったら言いますよ」と呟いた。
やはり、彼女は実に興味深い人間だ。
〈桜川九郎宅〉
あの『藁人形』の退治をやり終えた私は数日も会えていなかった恋人の九郎先輩とお家にお泊まりしている。最初は「女の子が男の部屋に泊まるのは」と嫌がっていた九郎先輩も既に懐柔済みだ。
「そう言えば知っていますか」
「また、良からぬ揉め事か?」
「いえ、今回の件とは無関係です。私がお話ししたいのは麻生真奈美さんについてです。やはり彼女も九郎先輩と似た能力、あるいは近しい能力を持っているのは確実です」
「その根拠と理由はなんだ?まさか『彼女は怪異の増殖と関係している』なんてことを言うつもりじゃないだろうな。お前も知っているだろ、あいつは自分の地元を守っただけだ」
「えぇ、全く以てその通りでしょう」
しかし、今になって考えると不審すぎるのだ。なぜ、麻生真奈美は鋼人七瀬と高確率で遭遇する事が出来たのか。なぜ、麻生真奈美は怪異と殴り合える武術を身に付けているのか。
まだまだ探そうと思えば幾らでも出てきそうですが、彼女の作る呪符や護符は魅力的です。反感を買って貰えなくなるのは非常に困ります。
「それはお前の都合だろ。まあ、俺も梵術の指導を受けられなくなるのは困りはするが、さすがにお前ほど図太く要求していないぞ」
「九郎先輩、私は先輩なんです。多少の図太さは必要と判断していますし、彼女もなんとなく察しているので損得勘定はありません。まあ、あの生意気に実ったモノはムカつきますが」
「いや、それもお前の都合だろ」
「………ところで、九郎先輩。私の記憶違いでなければこの前まで撥と鼓はなかったと思うのですが、あれは誰に貰ったんですか?」
「流石に露骨すぎるぞ。……麻生に渡されたやつだ、なんでもこれから現れる新しい怪異を効率良く退治するために必要になるそうだ」
やはり、彼女は何かを知っているのでは?