「おはようございます、真奈美さん」
私はそうマンションの一室を出ようとしていた麻生真奈美に言葉を掛ける。どこか嫌そうに眉間にシワを寄せる彼女を無視して、九郎先輩に送りつけた道具と呪符の補充をお願いする。
しかし、まあ、よく実ったものですね。
本当に妬ましい。
これで私より二つ年下というのもあれです、詐欺なんじゃないですか?等々と考えていると新しい怪異について友人知人に連絡を掛け、ようやく『魔化魍』という名前があることを調べ終えたそうです。
「よく見つけられましたね。あとでコーヒーを奢ってあげましょう、ふふふ」
「カフェラテがいいです」
「やれやれ、貴女もお子ちゃまですね。あの酸味と苦味のアクセントが分からないとは………ところで、そのカバンに入っているものはなんです?」
「あーっ、知り合いが来るので」
「おお、ついに貴女の話に現れる『友達』が見れるんですね!」
ほんの少しだけワクワクする。
彼女の話によれば怪異に詳しく道具製作のアドバイスや道具作りの手助けをしてくれる人物だ。私と同じようになにかしら怪異の恩恵を受けている可能性もある人なのは間違いない。
「そう言えば知っていますか?また九郎先輩が逃げてしまったんですよ、おそらくまた六花さん関係のものを見つけたんだと思うんですけど」
「………そうっすね」
「真奈美さん、貴女が『いや、それはお前から逃げたいだけなんじゃ?』と考えているのはお見通しです。それはもう既に紗季さんにこっぴどいほど言われていますので」
「岩永先輩ってあれですよね。よく元カノとメル友だったり遊びに行ったりできますよね。そういう神経の図太さは見習いたい」
「………何故でしょうか。全く褒められた気がしないのですが、さっきのは私への悪口ですか?」
私の問いかけを麻生真奈美は否定する。
確かに元カノの弓原紗季と交遊を関係を持つのは可笑しいのだろう。しかし、麻生真奈美も言ってしまえば紗季さんと友達としてまだ関係を持っている。
むしろ彼女の地元にいる紗季さんと交流を持つことは自然と言えるのかもしれないが。なぜ、紗季さんに道具まで貸し出している?彼女は怪異と戦えるほど優れた能力は有していない。
やはり彼女の考えている事は不思議だ。
「………ところで、なぜ楽器なんですか?」
「さあ、なんでですかね」
「私も一つ欲しいのですが、さすがに重たすぎるのは持てませんし、どうにかできますか?」
「まあ、やろうと思えば……試作品いります?」
おや、もう作り終わってたんですね。私は金属で出来たディスクを受け取る。どうやって使うのだろうかと考えていると音叉を手渡された。
ご丁寧に魔除けの鬼つきですね。
キイィィィンッ
「おお、これは!!」
「音式神"茜鷹"です。あまり動けない先輩のためにスピードを重視していますが、攻撃や録音など状況によって使い分ける事も出来ます。ただ、人目のあるところだとすごい目立ちます」
「それは紗季さん案件ですか?」
「………はい」
なるほど、紗季さんにテスターを頼んだところ犯人追跡や違法駐車された車の持ち主の捜索に使われまくったのだろう。なんともおもしろ……んんんっ、かわいそうなことです。