「どぉもぉ…邪神ちゃんですよぉ」
どこからか「去れ!」という言葉が聴こえてきたような気がする。しかし、あれですね。この人も立派なものをお持ちのようで妬ましい。
「初めまして、私は岩永琴子と申します」
「知ってますよぉ、知恵の神なんですよねぇ。いやぁ、嬉しいなあ、嬉しいなあ、私とおんなじ神様に会えるなんて幸せだなあ」
「それは、どういう意味でしょうか?」
「そのままの意味だよぉ?私と琴子ちゃんは同じ神にされて化け物の神様をやっているぅ……ああ、あなたは自分でなったんでしたねぇ」
甘ったるい声だ。
脳髄を刺激する声だ。
耳を閉ざせ、目を閉じろ、
コレは見てはいけないモノだ。
コレは知ってはいけないモノだ。
コレは恐ろしきモノだ。
私と同じ生物ではない。彼女は化け物だ。恐ろしく雄々しく猛々しく仰がなければいけない御方だ。
あ、やばい、これは呑まれ─────。
「岩永先輩にちょっかい出すの止めて下さい」
その声で意識が呼び戻された。
「真奈美さん、彼女は?」
「あーっ、ラヴクラフトって知ってますか?」
「えぇ、確かに『クトゥルフ神話』あるいは『クトゥルー神話』と呼ばれる宇宙的恐怖の創作神話の創設者ですね。それが……まさか」
「はい、この人はマジの邪神です。どの邪神なのかは知ろうとしないでくださいね?下手したら廃人になるかもしれないので」
「もお、そんなことしないよぉ?でも琴子ちゃんは可愛いからお持ち帰りしたいなぁ……」
この人は目が笑ってない。
三日月のように口は裂けている。
しかし、彼女の言葉・行動と感情は結び付いていない。ただ、そうすれば良いのだろうといった無機質な感情かも分からないものを感じるだけだ。
「とりあえず、私の知り合いです。岩永先輩と会うのは控えるように伝えましたけど、この人は言うこと聞いてくれないので諦めてもらえます?」
「まあ、大体の事は理解しました。それで?彼女と会おうとした理由を聞いてもいいですか?」
「ああ、それは邪神の作った道具を見るためですよ。私の作ったやつより高性能なのは知っているのでダメージはないです」
「そうですか。では、私は離れて待っていますね」
全くあの様な生き物と普通にごく当たり前のように麻生真奈知がり合っているのは予想外すぎる。下手したら私の頭が壊れて、九郎先輩の欲望を満たすためだけに存在する人形になるところでした。
………………まあ、それもそれでありですが、しっかりと愛し合える間柄ではなくてはいけません。私と九郎先輩は仲睦まじく愛し合い、やがては夫婦になっていくのですから。