私は風鳴夫婦の修行を受けている九郎先輩を応援しながら『魔化魍』に関する資料と文献について照らし合わせている。
おおよそ真奈美さんの纏めてくれた資料と同じですが、少しだけ資料に差異など細かいところで違う文章もあれば造形の異なるこ『魔化魍』も存在する。
その事を風鳴さんに問えば「地域や生息圏によって異なる成長を遂げる魔化魍もいれば劣化・未成熟の魔化魍もいる」とのことだ。
そうなれば対処も大変だ。
鬼の方も大勢いるわけではなく、シフトを組んで活動しているのは真奈美さんの家で既に予習しているけれど。些か『魔化魍』の発生率と鬼の方の人数が合っていないのも事実です。
「うむ、中々に強い打ち込みだ!」
九郎先輩と風鳴さんの旦那さんの大太鼓の音は素晴らしいものです。ここだけ清められているのが分かるほど空気が清んでいる。ですが、こうも清らかすぎると妖怪も寄り付けませんね。
「ふぅ………岩永、お前もやるか?」
「郎先輩のお誘いは嬉しいのですが、如何せん踏ん張りの効かない私では大太鼓を打ち鳴らす事は出来ませって、何するんです!?」
いきなり半裸の九郎先輩に抱き上げられてしまった。ど、どうしましょう、すごく嬉しいのに恥ずかしくて九郎先輩の顔が見れないです。ああ、すごい、ほんの少し前よりも腕が逞しくなっています。
「トランペット、こっちだと音撃管か。こいつは肺活量があれば使えると思う。ほら、後ろで支えてやるからやってみろ」
「は、はい…」
これは、いわゆる『あすなろ抱き』というやつなのでは!?九郎先輩がここまで積極的に抱き締めてくれるのは、もしかしたら初めてかもしれませんね。いや、本当に初めてでしたね。
ああ、ドキドキしてしまう。
プアァァァァァッ………プァ!!
私の目の前でボホォンッ!と轟音を響かせて爆散する巻き藁に驚きつつ、私は改めて音撃道の強さに感心し、そして畏敬を示す。
音撃道を築き上げた人は紛れもなく天才だ。
これだけの強さを得れば大多数の人間は私利私欲のために使っているはずだ。しかし、彼あるいは彼女は悪道に逸れることなく『魔化魍』を退治するために音撃道を極めて人々のために使っている。
とても素晴らしい事だ。
だが、今はそんなことよりも九郎先輩に包まれている幸せを堪能するべきですね。ああ、ほんのり漂っているのは九郎先輩の汗の臭いですかね、これはとんでもなく良いものです。
「………邪な気配を感じるんだが?」
「それは気のせいですよ。それより、もっと強く支えて頂かないと怪我をするかもしれません。ほら、早く私をぎゅーーっとしてください!」
「えと、こうか?」
「はい、それが最高です!!」
ああ、やばい、私は九郎先輩に包まれてます。