仮面ライダーギーツ IF STORY ~sister of ACE~   作:朝陽祭

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今回の話は、独自解釈及び独自設定があります。


中編

 

 

兄の『真実』を知る為、デザイアグランプリに参加し第1回戦を乗り越えてから、数日後。

 

続けて行われた第2回戦『迷宮脱出ゲーム』でも、色々なことがあった。

 

ジャマトが接近すると締め付けが強くなる首輪を付けられた人々を守りながら、ジャマトが集う洋館から脱出するというゲームだったが……その中で、ケイロウこと丹波 一徹(たんば いってつ)さんが重傷を負い、そのエントリーを譲渡される形で、守られる人々の側に居た元デザイアグランプリ参加者、仮面ライダータイクーンこと桜井 景和(さくらい けいわ)さんが、途中エントリーすることになった。

 

祢音ちゃんもそうだが、途中参戦が認められる辺りそれだけ『ジャマト』を倒すという目的には真摯に思えるのだが、一方で、運営側のライダーでは?と言われていたパンクジャックが、兄の英寿を妨害しようとする動きも、ちらほら見えた。

 

……まぁ、運営が兄のことをどう思っているかは、私には余り関係がない。

 

私のやるべきことは、デザイアグランプリを勝ち抜いてデザ神になり……兄の『真実』を、知ることなのだから。

 

 

 

「……そっか。奈々さんが、英寿の妹さん。ご家族は、ご健在なんだよね?」

 

「はい……兄が何を考えているのか、わからなくて……」

 

 

第2回戦終了直後、サロンのカウンターで祢音ちゃんとお茶をしながら、私はデザイアグランプリに参加した理由等を打ち明けていた。

これは第2回戦の中で、私が兄のことを『お兄ちゃん』呼びしたことを祢音ちゃんに聞かれ、詳しい話を聞きたいと言われたからだ……あ、コンシュルジュの『ギロリ』さんが淹れてくれたこのお茶、美味しい。

 

 

「前回のデザイアグランプリで、ジャマトに襲われていた景和のお姉さんが、それ以前にデザイアグランプリに巻き込まれていたって記憶を思い出したことがあったの。だから、奈々さん達が記憶を忘れていたってこと自体は、不思議じゃないんだけれど……でも、英寿が前回叶えた『運営と家族になる』って願いより前から、ずっとなんだよね?どうして……」

 

「恐らくそれは、英寿様が過去にデザ神となられた際に願った、『自分が働かなくても暮らせる世界』、という願いによるものでしょう。」

 

 

祢音ちゃんの疑問に答えたのは、ギロリさんだった。

働かなくても……って、それだけだと、私達家族が記憶を失うのと、特に関係がないように聞こえるけど?

 

 

「デザ神になって叶えられる願いは額面通り叶えられる、という訳ではなく、そこにどのような想いが籠められているか、というのも影響するようです。例えば、脱落された丹波 一徹様は『若返りたい』という願いをデザイアカードに記載されていました。ですが、一徹様は見るからに高齢でいらっしゃる為、一般的にいえば中年という世代の40代頃に戻ったとしても、『若返りたい』という願いが叶ったことになってしまいます。」

 

 

……そっか。『若返りたい』って願いで想像するのはだいたい10代~20代だと思うけれど、逆に言うとそこまで願いを指定しなくても、ちゃんとその想像まで汲み取ってくれる、って訳か。お爺ちゃんからおじさんに若返っても、「こういうことを願ったんじゃない!!」って怒るだろうし。

 

 

「じゃあ、英寿の場合は……」

 

「『働く』という行為は金銭目的という意味ではシンプルですが、理由は人によって様々です。借金を返す為、趣味に使う為……家族を養う為。例え一生を遊んで暮らせる金銭が手に入ったとしても、ご家族が重い病気を患っていてその医療費に莫大な金額を支払い続けなくてはいけない、では真に願いが叶ったとは、言えないでしょう。」

 

「……だから、『自分が働かなくても暮らせる』という願いで、私達家族と兄は、関係のない他人になった、と?」

 

 

ギロリさんの話を聞けば、理屈はわかる。確かに、『働かなくても暮らせる』という願いは、浮世家そのものが億万長者になって、そのすねかじりとして遊んで暮らす……という形で叶っても、「文面に従ったまま」の叶え方という意味では正しいことになる。

でも、実際にそういう形になっていない、ということは……兄が望んだ結果、私達家族は『3人』家族として暮らすことになった、訳だ。思わず、涙が溢れ出してしまう。

 

 

「奈々さん……」

 

「……わからない、わからないよ。お兄ちゃんのことが、全然わからなくなってきた……家族だった、はずなのに。」

 

 

 

 

 

 

∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵

 

 

 

そんなことがあってから、更に数日後。

 

デザイアグランプリからの呼び出しで、私達参加者は集められていた。第3回戦が始まる、ということなのだろう。

 

問題は――

 

「……お前らも、ドライバーを取られたのか?」

 

 

――兄がそう祢音ちゃん達に切り出し、祢音ちゃん達が頷いた。

 

最悪だ、どうやら参加者全員デザイアドライバーを取られたらしい。デザイアドライバーがなくなるタイミングで赤い帽子の女の子を見かけたから、それが原因だろう。ろくでもないゲームが始まりそうで嫌な予感しかしない。

 

「これで参加条件が揃いました。それでは今から、デザイアグランプリ第3回戦、『椅子取りゲーム』を始めます。」

 

 

……そうして、ツムリさんがゲームの概要を説明する。

 

要約すると、『ターゲットのジャマトが倒されるまでにデザイアドライバーを確保しなければ脱落。ただし、デザイアドライバーのうち1つは敵が使用している為必ず脱落者が出るし、ジャマトにデザイアドライバーを確保されればされる程脱落者が増える』、ということだ。

 

……またろくでもないルールだと思ったが、同時にうっすらとこの『デザイアグランプリ』の全容が見えてきた。

 

『ジャマト』という外敵から人々を救う戦士『仮面ライダー』という構図はいい。その報酬として、『どんな願いでも叶う世界』というのもいい。

 

だが、明らかに既存の科学力をぶっちぎっているものが世界に出回っておらず、『ゲーム』と称して人知れず参加者を集めているのは、さすがにおかしいだろう。

それを隠しきるだけの影響力があるのだから……『ジャマトを倒す為』だけなら、いくらでも取れる手段がある。少なくとも、参加者の多くをド素人にする必要はない。

 

逆に言えば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

先日の祢音ちゃんとサロンでお茶を飲んでいた時、私が泣いたことで気を使わせてしまったのか、前回のデザイアグランプリがどのような感じだったのか聞くことができた。その時は、命を落とすだけではなく、ルールとして脱落者が発生するゲームが多かった、という。

 

そういった面を総合すると……私達がテレビ番組を観て笑ったり泣いたりするように、デザイアグランプリにも『()()()()』がいるのは、確実だろう。

 

 

 

まぁ、とはいえ今の問題は、どうやってデザイアドライバーを手に入れるか、だが……

 

 

 

 

 

∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵

 

 

 

 

 

 

「みなさんこんにちは、祢音です、ピカリ♪突然だけど、みんなに聞きたいの。赤い帽子を被った女の子の目撃情報を探してます!!知ってる人居たら、コメントくださーーーいっ!!」

 

 

――祢音ちゃんが配信を行うのを目の前で見ながら、私は祢音ちゃんの配信に映らないようにしつつ、自分のスマホで祢音ちゃんの配信をチェックし、目撃情報として有力そうなコメントを手元のメモ帳に記載し、この街の地図と照らしあわせていく。

 

こういう即効性のある情報を集める時、セレブインフルエンサーという面を持つ祢音ちゃんはとても強い。なにせコメントという形で、リアルタイムで集めることができるのだから。

 

とはいえこの形式は文字通りの世界中が見ることができて、なおかつ祢音ちゃん自身の認知度と、それに対するファンのこともある。祢音ちゃんの感謝の言葉を『自分』に言ってもらいたいというだけで、嘘の情報を書く者もいるだろう。そこは、周囲の場所を特定できそうな情報をさりげなく、それで意図的に映りこませることで情報の絞り込みと確度を高めているのは、色んな意味でさすがというべきか……

なお、よからぬ輩が場所を特定して祢音ちゃん自身に近寄ろうとする危険性はない訳ではないが、普段は家出配信をすぐ見つけてくる黒服の人達が、今回は私がカバーする、ということになる。それでなくても、祢音ちゃん自身も仮面ライダーとして実力をつけているので、それなりにあしらうことはできるとは思うが。

 

今回私が祢音ちゃんに協力しているのは、場所の絞り込みを効率化する為、祢音ちゃんの方から提案してくれたことだ。

コメントを読んだりする為の環境は整えているが、祢音ちゃん一人だとどうしても情報の精査にタイムラグが発生する。情報としては正確でも、ターゲットが移動する可能性がある以上はすぐ動けるようにした方がよいのだ。

 

 

「どう、奈々さん?」

 

「目撃情報が多いコメントを線で繋ぐと……この神社の雑木林、ここが一番可能性が高いですね。」

 

「そう、ありがとう!!それじゃあ、急ごっか!!」

 

 

そうして、私と祢音ちゃんは、コメントが多かった神社へと急ぐのだった。

 

 

 

 

∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵

 

 

 

 

≪≪≪SET≫≫≫

 

「「「変身っ!!」」」

 

≪MAGNUM READY FIGHT≫

 

≪NINJA READY FIGHT≫

 

≪BEAT READY FIGHT≫

 

 

神社で景和さんと合流して、なんとかジャマトの群れからデザイアドライバーを3つ奪い返した後、私達は次にジャマト達が集合しているポイントへ向かった。

 

そこには兄達も居て、景和さんが3人を助けようとして道長さんと揉めるということがあったが……祢音ちゃんと、兄の言葉でどうにかそれは収まった。

 

でも、「誰かの支えがなければ、生き残れない」という兄の言葉には……少し、胸にもやが残る。

 

ともかく、私、祢音ちゃん、景和さんは仮面ライダーに変身すると、ジャマト達の群れへと飛びかかった。

 

すると、兄がデザイアドライバーを奪って変身したライダー、『ジャマトライダー』に向かって飛びかかって行くのが見え……っ!?

 

 

「お兄ちゃん、何無茶してるのっ!?」

 

 

マグナムシューター40Xの銃撃で兄を迎撃しようとするジャマトライダーを抑え、私は兄とジャマトライダーの間に割り込む……このジャマトライダーって奴なんかやたら強いから、マグナム単独だけだとちょっと厳しいんだけどなぁ!?

 

 

「奈々、お前……」

 

「どうせジャマトライダーに奪われたドライバーの方を取り返して、参加枠自体を戻そうとしたんでしょ!?そのくらい読めるわよ!!」

 

「……さすが、俺の妹だな。」

 

「あっ、ちょっ!!頭撫でるな!?もう子供じゃないのっ!!」

 

 

そんなやりとりをしていると、どこからともなく飛来してきたバックルが、兄の手元に収まる。

 

何このバックル……初めて見るんだけど?

 

 

「……奈々、お前に頼みがある。」

 

「ドライバーを貸してくれって?……しょうがないなぁ。」

 

 

私は変身を解除すると、自分のIDコアを抜いてデザイアドライバーを兄へと差し出した。兄は笑顔を浮かべてそれに自分のIDコアを装填して受けとると、そのままデザイアドライバーを腰に装着し、更に先程の銀色のバックルを装着する。

 

 

≪SET≫

 

「いい子だ、終わったら俺の持ってるバックル全部くれてやる……変身!!」

 

≪GREAT READY FIGHT≫

 

 

そうして、兄は仮面ライダーギーツへと変身して、新しいアーマー……ではなく、ヘルメットの装飾が変わった、IDコアだけの状態「エントリーフォーム」に似た姿になった。

 

 

「……顔だけ!?」

 

「えぇっ!?」

 

「……っ!?」

 

「……マジ?」

 

 

ジャマト達と戦っていた他の人達が、四者四様の反応を見せる。いや、無理もない。私だって驚いてる。

 

兄は更に飛来してきた、バックルが鍔付近に装着された剣を手に取って色々試しているが……いやいや、これどう考えてもこの戦いを見ている『視聴者』辺りからのテコ入れでしょ?それがそんなショボイ訳が……

 

 

「こんな武器は初めてだな……まずは、試し斬りだ!!」

 

 

一方で兄は剣を構えると、ジャマトの群れに突撃してジャマト達をばっさばっさと斬り倒していく……いや、剣だけでもなんかやたら強くないあれ!?

 

 

≪FULL CHARGE≫

 

「おっ、抜けた……ってことは。」

 

≪TWIN SET≫

 

≪TAKE OFF COMPLETE JET & CANON≫

 

≪READY FIGHT≫

 

「……すげーな、これ!!」

 

 

そんなこんなでジャマト達を蹴散らした兄は、何やら剣に装着されていたバックルをデザイアドライバーに装着すると……肩にキャノン砲を載せた、ロボットみたいなアーマーを纏って、ジャマトライダーと戦い、そして勝利した。

 

……うわ、あれ強力だけどフルスペック発揮するのに時間かかるのでバランス取ってる系?私の趣味じゃないな……マジで兄がバックル全部くれてその中に含まれてたら、景和さんにでも譲るかぁ。道長さんは、なんかさっきの雰囲気だと受け取ってくれなさそうだし。

 

 

 

 

∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵

 

 

 

ところがその後、私にデザイアドライバーを返しつつバックルを全部渡す間に、兄はデザイアドライバーを道長さんに掠め取られ、更には大広間に戻ったらジャマト達が残り二つのドライバーを確保して、席が埋まったという情報が、ツムリさんから知らされる……ちょっと、どうすんのこれ?

 

「……今度は、俺のドライバー使う?ジャマトからドライバーを取り返せば、英寿君も……」

 

「またギーツに負けてもいいのか!?」

 

「そうそう、デザ神になりたかったら、こいつのことは忘れな。ただでさえ、いいバックル手に入れたデザ神候補が他に居るんだぜ?他人のこと気にしてる場合かよ?」

 

 

兄にデザイアドライバーを貸そうとする景和さんに対し、道長さんとウィンさんがそれを止める。

というかウィンさん、そこで私に矛先向けるの止めてほしいんですけど……?景和さんにこの銀色のバックル渡そうと思ってたのに渡しづらくなるじゃん。

後、状況は兄と同じなのになんでウィンさんはそんな余裕なんだろうか?道長さんがバックルを掠め取ったのもこの人の差し金みたいだし、やはり運営側なのだろうか?

だがそうすると、銀色のバックルの件がわからない。

『視聴者』と運営は、一枚岩じゃない……?

 

そんなことを考えつつ兄に視線を向けると、兄はいつもの不敵な笑みを、浮かべたままだった……何か策があるのか、はたして強がりか。

 

やはり、今の兄はわからない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――そして、私達がどうにか『椅子取りゲーム』を終わらせたその場に、兄とウィンさんは居らず。

 

『無敗のデザ神』、仮面ライダーギーツは、驚くほどあっけなく、脱落したのだった。

 

 

 To Be continued...

 

 

 

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