嵐
椅子
モンスター
心配性
霹靂鳴りやまぬ嵐の夜。
轟音はその男の鼓膜を劈き、元来脆弱な心を容赦なく責め立てる。
腰かける椅子に脂汗が滲み、顔を覆う両の掌は、恐怖に抗うために込められた力で青筋が浮き上がっていた。
その姿は、かつて彼が檀上で見せてきた快活な様子からは到底想像もできない程に弱弱しい。
期待を胸に意気揚々と足を運んだ約束の地にて発生したイレギュラーに、幾万の観衆達はなすすべもなく立ち尽くすしかなく、その手に握られた祭具だけが恒星のごとく赫々と煌めいていた。
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「明日は雲一つない快晴となるでしょう。洗濯物が乾きやすく・・・」
男は心配性だった。約束の日の天気予報が晴れだと聞き、多くのものが歓喜に沸く最中でも信用しきれない。
誰かが言った。
「何心配してんだよ。大丈夫だって!ほんと心配性だよな。」
『心配じゃない。予感がするんだ。』
男は喉から出かかったその言葉を押し込んだ。
とてもじゃないが、そんなこと言える空気ではないのだから。
「そ、そうだよな。・・・みんな、気張っていこうぜ!」
彼は気づくべきだったのだ。
単なる「予感」だと侮っていたそれは、長年の経験から発現したシックスセンスであり、
予知能力の域に達していたという事実に。
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依然、嵐は衰える気配もなく、吹き曝しの檀上は地獄の様相を呈している。
共に壇上に上がるはずだった仲間達を待つべく黒子に用意させた椅子は、
強風とともに襲い来る瓦礫によって抉られ、今にも拉げてしまいそうだ。
彼には待つことしかできなかった。
この人知を超えたモンスターに、仲間が喰われていない事を望みながら。
「モ ・・・ ター・・・ ン スター ・・・」
暴風の中に、声が聞こえる。
恐怖から来る幻聴だろうか。
「やめろっ・・やめてくれっ!!!」
「モーン ター・・ モーンッスター 」
・・・違う。これは幻聴なんかじゃない。
一体どこから・・・
「モーンッスター! モーンッスター!!!」
その声の主は、目の前にいた。
その四肢を捥がれ達磨と化した者。
雷に打たれ黒煙を上げる者。
鉄骨に肺を穿たれ、血反吐を吐く者。
友達の付き合いで来たから状況とかよく知らんけどなんかノリで叫んでる人。
幾万の観衆が嵐の轟音を押しのける程の声量で叫んでいるのだ。
まるでそれは、何かの始まりを嘆願しているかのように・・・
「・・・モン・・・スター・・・いったい何の事だ・・?」
「モンスター・・・モン痛っ」
男の脳天に何かが激突した。
男はそれを拾い上げる。
「時計・・・?掛け時計だ。」
その時刻は12時を少し過ぎる頃を指していた。
「本来なら月明かりが見えて草木が眠るころだったのに・・・」
男がそう呟いた瞬間だった。
-------風が・・・止んだ・・・?
空を見れば、先ほどまでの悪天候が夢だったと錯覚するほどに晴れ渡り、
かすかに残った雲間から差し込む月明かりが男を優しく包み込む。
あまりの急変ぶりに唖然とする男。
----------待たせたな、リーダー。
月明かりを遮り、そう語り掛けてくる人影。
それは着地と同時に華麗なバク転を決め、風を捉え続けぼろぼろになった傘を畳む。
「ーーー松潤!!」
そこにいたのは松潤だった。
安心したのもつかの間、背後で轟音が鳴り響く。
それはかすかに残った雲が最後の力を振り絞ったかの如く降り注いだ一筋の稲妻。
-----------ちょっとリーダー、なんでそんな泣きそうな顔してんのさ。パン君みたいだよ?
稲妻と共に舞い降りた彼は、少し男をからかいながら歩み寄る。
「ーーー相葉!!」
そこにいたのは志村動物園からの刺客、相葉だった。
突如、地面の水たまりが人の形を成して男の肩を叩く。
------------天気予報ってのは当てにならないもんだよね。
男が振り返ると、彼は天気予報のコーナーで使う予定だった手元の原稿を破り捨てた。
「ーーーZERO!!」
そこにいたのはニュースキャスター櫻井だった。
男は足元に気配を感じ、すぐさま座っていたボロボロの椅子が人間だったことに気が付く。
-------------ごめん死ぬかも
そう呟くと彼は地に伏した。
「ーーー月9ドラマ!!」
そこにいたのは家を買うフリーター二宮だった。
「悪いなリーダー、バク転の練習してたらちょっと遅れた!ってなんだ、相葉も遅刻か?」
「うん!今日はパン君連れてこようとしておくれちゃってさ。ほらパン君、ご挨拶は?」
「ウキッゥッキッキャーーーッッ(妻子持ちの猛獣連れまわすなよ)」
「僕も突然ZEROに呼ばれてさ。もうZEROに支配される人生だよ。いや僕自身がZEROなんだよ。
もうZERO無しじゃ生きていけないっていうかZEROがZEROでZEr」
「ヒュー・・・カヒュー・・・(瀕死二宮)」
「さあ、はじめようか。観客が待ってるんだ。」
「俺たち、「嵐」の事を!!」
「一曲目はこの曲だ!!」
------------monster
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空気的に自分が大野ではないとは言い出せず、中盤までうろ覚えの歌詞でなんとかごまかしていた城嶋茂だったが
ソロパートで普通にバレた。