ハチドリはなぜ   作:三人天人

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[スピード・ワールド//リライズ]
フィールド魔法
このカードはカードの効果を受けず、
フィールド魔法カードをセット及び発動できない。

①お互いのスタンバイフェイズ時に
 自分用スピードカウンターを1つ置く(最大12個まで)。
②「Sp(スピードスペル)」 魔法カード以外の魔法カードは発動できず、
 効果は無効化される。
③お互いのプレイヤーは、自身のメインフェイズに
 自分用スピードカウンターを以下の数だけ取り除いて発動できる。
●4個:手札の「Sp(スピードスペル)魔法カード1枚につき、
相手に800ポイントのダメージを与える。
●6個:このターンのエンドフェイズまで、魔法カードを
 一種類につき1枚までこのカードの②の効果を無視して発動できる。
 (通常、永続、速攻、装備、儀式、Pの六種類迄)
●7個:自分のデッキからカード1枚ドローする。
●10個:フィールド上のカード1枚選んで破壊する。




第二回KRGP決勝戦

 

陽炎を焼いて鈍色の車輪が轍を刻む。

 

『さぁ!キングス・ライディング・グランプリ!真の王者を決めるこの闘いもいよいよ大詰めッッ!!追い詰められた不屈のキング!新時代の王者がその喉笛を食い破るのか?!ショーン選手の若き牙が迫るゥ!!』

 

その軌跡を切り裂きながら迫る車体が怒号を上げて並びかけ、二台三輪が大気を焦がしながら晴れ渡る空の下を駆け抜けていく。

「ここまでだキングッ、いや・・・・ジャック・アトラスッッ!!」

翠の稲妻を帯びる巨魁を引き連れた若き決闘者が、現王者―ジャック・アトラスと肩を並べて疾走する。

灼熱を纏って突き進む白金の機体と群青の機体は"D-ホイール"。

 

此方 王者の"ホイール・オブ・フォーチュン"

彼方 勇者の"ディープ・スカイ"

 

「いくぞ[サイコ・エンド・パニッシャー]!これで王手だッッ!」

急加速したディープ・スカイがホイール・オブ・フォーチュンの前に躍り出る。巧みなハンドル捌きでバック走状態になり、二人の決闘者の視線が交錯する。

「バトルだ!」

モニターにフェイズ進行の表示。

雷を迸らせ、[サイコ・エンド・パニッシャー]がキングに肉薄する。

「喰らえぇ!≪停滞の終焉(スタグネイション・エンド)≫ォォォオオオオオオ!!!!!」

コースを抉るように繰り出される巨大な拳を眼前にしながら、それを見つめていたジャックの静かな瞳にギラリと光が宿る。

「俺は墓地の[絶対王・バック・ジャック]を除外!」

墓地ポケットから差し出されたカードを除外ゾーンのスリットに滑り込ませるジャック。

自分を粉砕せんと躍りかかる威容を前にしても、その手つきには些かの乱れも無い。

「[絶対王・バック・ジャック]の効果を発動した。このデッキトップが勝敗を分ける。覚悟はいいか挑戦者」

低く静かに、しかしながら傲然と吹き荒れる闘志を隠すことの無いジャックの言葉。それは己が(ライフ)を削り、獰猛にライバルたちの(ライフ)を噛み千切ることで勝ち抜いてきた若き歴戦の戦士であるショーンをしても息を吞むほどの威圧感を孕んでいた。

依然有利にも関わらず、心臓に氷柱を差し込まれたような怖気が走る。

「ッ――チェーンは無い!往生際が悪いなジャック・アトラス!」

「それは違うな挑戦者。これは正しき勝利への一手、王者の闘い方だッッ!」

デッキトップを抜き放ち、ドローカードをそのままショーンに向けて突きつけた。

途端、ショーンの顔が歪む。

「俺が引いたカードは・・・・[王者の調和]!俺は場の無効化されたスカーレッドノヴァと墓地のモンスターでシンクロ召喚を行う!」

再び墓地からカードが吐き出され、流れるような手捌きで除外する。

「クッ―――だ、だが、俺のサイコエンドは止められない!」

「知ったことか。だが誉めてやろう。この俺に、この最高の場で真の切り札を使わせたことをな!!」

墓地から除外されたモンスター達がジャックの背後から飛び出し宙を飛ぶ。

「俺は墓地のレベル2、[レッド・リゾネーター]と、レベル10の[スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン]を除外ッ。そのレベルの合計と同じレベルのシンクロモンスターをシンクロ召喚するッッ」

幻影の如く揺らめく[レッド・リゾネーター]が弾け二つの輪となり、[スカーレッド・ノヴァ・ドラゴン]がその中空へ向かい嘶きを上げ翔ぶ。

「眠れる魂が王を迎える。紅き星は滅びず、ただ愚者を滅するのみ!荒ぶる魂よ!!天地開闢の刻を刻めッ!!」

閃光が奔る。眩い光は直後、深紅に染まり轟音と共に二人を吞み込んだ。

「新生せよ我が魂![スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン]ッッッッ!!!」

渦巻く炎に浮かぶ巨影。紅蓮を身に纏いながら尚赤き緋色の体躯。伸びた大翼が羽搏き、上げる咆哮が大気を揺さぶる。

ソリッドヴィジョンが見せる赫灼の業火に炙られるショーンは苦渋の表情を浮かべる。

それでも。

『あーーーーーーーーっとぉぉおおお!現王者ジャック・アトラス選手ゥ!この土壇場でなんとなんとなんと!まさかの新エースのお披露目だァァアアアアア!!!』

それでも若き勇者の瞳には、未だ勝利への確信が宿りギラついた光を放っていた。

「こいつはスカーレッドノヴァと同じく、墓地のチューナーの数につき攻撃力を500上げる。よって攻撃力は、貴様のサイコエンドを超える6000だ!」

「無駄だと言っているんだジャック!1ターンの命を存える為だけに使われるそのモンスターが心底哀れだぜ、バトルを終了する!」

僅かに生じた怯みを置き去りにするようにハンドルを絞る。

ホイール・オブ・フォーチュンから離れた[サイコ・エンド・パニッシャー]だが、その両腕は稲妻を迸らせながら激しい炸裂音を上げていた。

「[増殖するG]を召喚、[サイコ・エンド・パニッシャー]の効果だ!ライフを1000払い、[増殖するG]と[スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン]を除外する!」

「ならば[スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン]の効果!貴様の効果に反応し、自身と貴様の場の全てを除外する!!」

[スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン]が吼え、深紅の炎が辺りに満ちる。

炎熱に晒されながらもショーンは獰猛な笑みを浮かべ、勝利の確信と共に拳を固く握った。

「忘れたのか![サイコ・エンド・パニッシャー]はお前の発動する効果を一切受け付けない!次のバトルで俺のサイコエンドの攻撃力は更に上がりそいつを上回る、お前の負けなんだよ!」

炎の猛り狂う中、ショーンの目に映るジャックは静かに瞼を閉じ、微笑んでいた。

「それはどうかな」

「な――」

「罠カードオープン![三位一択]!」

一瞬、ショーンにはそのカードの意味が理解できず、しかしすぐに絶望の表情を浮かべ全てを悟ったことを示した。

「俺のEXデッキに存在せず、お前のEXデッキに一枚だけ存在するカード・・・・即ち!俺は"融合モンスター"を指定!」

確認の為にモニターへ表示された二人のEXデッキ。自分のカードの一番端に表示されたたった一枚の紫色のカードを見て、ショーンは沈痛な面持ちと共に俯いた。

表示されたショーンのライフが変動し、3500を示す。

「これで俺のライフ2700を越え、サイコエンドの耐性は」

燃え盛る渦に巻かれ、[サイコ・エンド・パニッシャー]が苦悶の声を上げ

「消滅する」

次の瞬間、コースには疾走する二台のD-ホイールだけが残されていた。

顔を伏せたままのショーンは何も言わない。しばしの沈黙の後、ジャックのモニターにターンエンドの表示が現れた。

加速したホイール・オブ・フォーチュンがディープ・スカイに並び掛け、群青の機体が翻り並走が始めた。

「貴様は誇っていい」

ジャックが静かに語りかける。

「まさか、2ターン目から伏せたまんまだったカードがそんなカードとはね・・・・」

「あぁ。貴様の戦術は見事と言う他無かった。俺が今大会で個人を意識して投入したのは、この一枚だけだ」

短く、端的に述べられたジャックの評。言葉にすればそれだけだった。それだけで、ショーンは折れかかった心から熱い物が溢れ出てくるのを感じた。

天を仰ぎ、何かを堪える様に呻いた後、彼は真っすぐにジャックの瞳を見た。

「次は勝つ」

「ならばまた上がってこい。俺は変わらず待っている」

ホイール・オブ・フォーチュンが唸り上げる。

車体を翻し、ディープ・スカイをとらえたジャックが叫ぶ。

「バトルだ!」

中空から炎が噴き出し、紅蓮の悪魔が姿を現す。

それをじっと見つめるショーンの瞳は澄み渡り、一点の曇りも宿さず赤く燃えていた。

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