家の前でしばし待つ事10分ほど。
大きなトラックが敷地の前で緩やかに停まる。
銀色の車体にはAI大型タクシーとあり、24時間いつでも呼び出せる運搬システムである事をジャックも知っていた。
遊星はジャックに宿泊先のホテルをAIに伝えるように言うと、シートに座ってまたどこかに連絡を始めた。
それからホテルに寄り、
「遊星、まさかとは思うがデュエルとはライディングデュエルの事か?」
「スタンディングデュエルの為にわざわざ場所を変えると思ってたのか?」
「喧しいわ!俺たちは今酒を飲んでいるんだぞ!?」
「まぁそう焦るなよ。ほら、飲んどけ」
放られるスポーツドリンクのボトルを受け取ったジャックは苛立たしげにボトルの半分程まで飲み干すと、乱暴にシートに足を投げ出した。
運転席のモニターに表示される行き先はあのカフェから5分ほどの場所。
沈黙の車内、モーメントエンジンの稼働音とタイヤが地面を駆ける音だけが荷台に満ちる中で、やがて辿り着いたのは四角く真白い建物。
遊星の自宅がある準工業地域にはよくある企業の研究棟、遊星の勤め先だった。
守衛と二、三言交わして敷地に入ると、トラックは建物の一角、ガレージへと入る。
そこには白衣姿の男が待っていた。
「課長ー、今日はもう帰ったって聞いてたのにまた来たんですかぁ?寝て来いってそういう意味じゃないと思いますよ?」
「夜勤中に悪い。準備は?」
「出来てますよぉ。でもこんな夜中に一体」
背の低い男はトラックから降りてきたもう一人に釘付けになる。
それもそのはず。ジャック・アトラスは不動遊星と並びこの街の英雄。そして世界的スターでもあるのだ。
そして彼の中で稲妻が走る。カードが捲れ、それが電極を伝う電流のように繋がっていく。
不動遊星
ジャック・アトラス
新型エンジンのテスト
コースの予約
思考は閃光となり、男の脳を弾けさせた。
「ひ、ひええええ!ままままじですか?!課長マジですかい?!!」
瞬く間に答えに辿り着いた研究員は失禁寸前だった。
「あぁ、すまないが内密に頼む。キーを」
「は、はいぃ」
部下からカードキーを受け取った遊星はジャックを伴って棟内へと消えていった。
はわわわわとあたふたする彼もまた、部屋に戻って仕事をしないといけないのだが最早手がつきそうにない。
「デュデュデュデュデュデュエルキング不動遊星と世界王者ジャック・アトラスが新型エンジンのDーホイールでデュデュデュデュエルゥ?!あわわわわわわいいいいいのか?ああでも内密にって、ううぅぅぅぅ」
とりあえず研究室に駆け込んだ彼は、使用中のランプが点る実験用コースのモニターを開くと、そっと、出来るだけそっと録画のボタンを押した。
「エンジンの、エンジンの経過は、観察しないとだから、ね!」
ギラギラに血走った目が35基のカメラが睨むコース内の様子を凝視する。
彼の夜勤業務が大型船艇用の図面作成から新型エンジンの稼働テストの記録に変わった瞬間であった。
引き続きデュエル構成しつつの投稿となります。
デュエル自体は次々回からとなります。
何卒宜しくお願い致します。