ホイールの回転音が軽快に響くサーキット。
片や恐るべき二頭の竜を率いるジャック・アトラス。
片や鋼の戦士たちで盤面を埋め尽くした不動遊星。
その内の一つ、 遊星の傍に控える竜の姿をとる一機が短く嘶き機体を輝かせた。
「特殊召喚された [スターダスト・シンクロン]の効果!」
「それは許さん!アビスッッ!」
それに呼応するように、 地の底から轟くような咆哮を上げた [琰魔竜 レッド・デーモン・アビス] 。 その身に湛えていた深い闇色のオーラが膨れ上がり、 まるで獰猛な肉食虫の群れのように生々しくうねり飛び、[スターダストシンクロン]を包み込んだ。
[スターダスト・シンクロン] はビープ音を鳴らすと共に、 赤いシグナルをアイカメラに灯して苦し気に身を捩った後で沈黙する。
「おい、こんなタイミングで貴重な無効効果を切って良かったのか?」
「この程度なら手が止まる事もあるまい。 貴様が言った通り、 俺はあくまで真のキングとしてお前を下す」
ジャックの傲岸な態度は変わらない。
「・・・・ あくまでも、 か・・・・」
ぽつり、と。遊星の唇から漏れた言葉は吹き荒ぶ風に押し流されてジャックの耳には届かない。
遊星の瞳に再び火が灯る。
「ならば![ジャンク・シンクロン]!」
再び[ジャンク・シンクロン]が胸のエンジンに火を灯し、碧い輪となり宙を飛ぶ。
「レベル5の [ジャンク・スピーダー]に、レベル3の[ジャンク・シンクロン]をチューニング!」
力強い雄たけびを上げて [ジャンク・スピーダー]が駆ける。
白銀の機体が透き通り、 その身の内に5つの星を煌かせた。
「集いし願いが、 新たに輝く星となる。 光差す道となれ!」
「来い!全て打ち砕いてみせる!」
二人の頭上で光の柱が真っすぐに伸びる。
一陣の風が吹き、光輝を巻き散らしながら翔ぶ流麗なシルエットが黒染めの夜空を満天に飾った。
「シンクロ召喚、 飛翔せよ![スターダスト・ドラゴン] !!」
遊星にとっての代名詞とも言うべき優麗なる竜。
白き風はサーキットの上空に一条の軌跡を描きながら翔ぶ。
「現れたな![スターダスト・ドラゴン] !」
遊星の手は止まらない。
「[ホイール・シンクロン] は、1ターンに一度、手札からレベル4以下のモンスターを召喚する権利を俺に与える。 [シンクロン・キャリアー] を召喚!」
再び埋まるモンスターゾーン。
遊星号を模したような赤い装甲がもう加速し、 宙へと飛び立った。
「[ホイール・シンクロン]はチューナー以外のモンスターとしても扱う事ができる!俺はレベル2の[サテライト・シンクロン] をレベル5の [ホイール・シンクロン] にチューニング!」
遊星の止めどない無いモンスター召喚の連続で、サーキットはストロボでも焚いたように頻りに呟く照らし出される。
「集いし絆を、 束ねて速さの地平に挑む。 光差す道となれ!」
素体となった [ホイール・シンクロン]が透き通り、 解け、その形伸ばし、組み換え、新たな姿へと見る見る内に変えていく。
やがて結ばれた幾重もの線が面になり、 深紅の鎧を纏う戦士がサーキットに降り立った。
「シンクロ召喚!此処に在れ![シグナル・ウォリアー]!!」
それはまるで、 遊星号のあらゆるパーツをその身に纏う機械戦士。鋼の脚でコースをガツンと蹴り、そのシルエットを重ねるように無地のD-ホイールの隣を走り出す。
その傍らにいた [シンクロン・キャリアー] の背面にあるクレーンが首を擡げ、[シグナル・ウォリアー] の足元に生まれた虚空にワイヤーを飛ばす。 鋭いモーター音と共に引き上げられたのは [サテライト・シンクロン]の頭、パレポラアンテナの部分だった。
「[シンクロン・キャリアー] の効果で 「[シンクロン・トークン] を生成し、 レベル2のトークンと [シンクロン・キャリアー] にレベル1の [ジェット・シンクロン] をチューニング!」
三体が解け、白い光の中へ消えていく。
「集いし絆の結晶が、 新たな速さの果てへと導く。 光差す道となれ!シンクロ召喚!可能性の光、シンクロチューナー [アクセル・シンクロン]!」
ホイール、シグナルに続き三度、遊星号を模したモンスターが遊星と並走を始めた。
「[アクセル・シンクロン]でデッキの「ドリル・シンクロン」を墓地に送り、自身のレベルをそのモンスターのレベル分下げる!
「ようやくシンクロチューナーの登場か。[シューティング・スター・ドラゴン] の連続攻撃で一気に決める腹か!」
「それは違うなジャック、俺はお前に見せなければならない。俺達、“チーム5D's” の絆の深さを!」
ギュギュギュッとコースを削り、無骨な車体が加速してジャックの前へと徐々に進み出ていく。
追い抜き様、ジャックの目には瞳を閉ざし、胸に手を当てる遊星の姿が映った。
「一らを——てくれ——————ノ・・・・」
風切音に遮られて聞き取れない言葉。
しかし、そこに込められた切実な想いだけは、何故かジャックの耳を通って胸に熱く伝わる物があった。
「ッ!クリアマインド!」
遊星がアクセルを絞り、更に加速する。
遊星は正に星を掴まんばかりに掌を天に翳した。
「レベル8の [スターダスト・ドラゴン」に、レベル2となったシンクロチューナー [アクセル・シンクロン] をチューニング!」
次第に機体を純粋なる赤の光が包み込んでいく。
しかし、それに従うスターダスト達の様子はジャックの知る物とは異なっていた。
[スターダスト・ドラゴン] が二つの輪を潜る時、 中空に見慣れぬ数式やプログラムコードらしき文字列、 様々なメーター、グラフが次々と表示されていく。
「リミッター解放、 レベル10!フレームワークアップデート、コンプリート!」
「な、なんだっ、 それは?!」
ジャックは知らない。
だが、 遊星の横顔、 後ろ姿から伝わる痛切な情動。
届かぬ物に手を伸ばす、 哀れさだけではない何か。
何故かジャックの脳裏に、 かつての日々が去来した。
「集いし絆が、仲間の魂と重なり合う。照らし出せ!俺たちの未来のその先を!アァァクセルシンクロォォオオオオ!!」
これまでで最も強い光の奔流が全てを包み、 星屑の煌めきを残して鈍色の車体が姿を消す。
僅かの後、ジャックの後ろから猛スピードで現れた遊星が従えるのは、純白の外装から灼熱を噴き上げ空を爆走する鋼の竜。
「カモン![シューティングスター・ドラゴン
機械化された [シューティング・スター・ドラゴン] 。 ジャックはまず、そう印象を受けた。
その[シューティング・スター・ドラゴン] がなんなのか、ジャックは知る由もない。
遊星にしても、この局面でこのモンスターを出す利点は少ない。ジャックの言う通り、[シューティング・スター・ドラゴン] に望みをかける事も出来た。
しかし遊星は示したかった。
今のジャックが失っている物。
その心の
一言では語り尽くせない稀なる巡り合わせを経て得た力。届かないはずの彼方へ伸ばした手が確かに掴んだ絆の破片。
今のジャックに届くのはこのモンスターしか有り得ない。
(思い出せジャック。キングでも道化でもない、お前自身を!それこそが彼女の!)
灼熱の陽炎がサーキットに幽玄な軌跡を引いて駆け抜けていく。
遅くなり申し訳ございません。
次回更新は17日以降、とだけお伝えさせてください。
引き続きよろしくお願いします。
遊星の展開なっっっっっが
※追記
TGEXのシンクロ口上はオリジナルでしたが、デュエルオペラで宮下さんが口上を披露していましたのでそちらを正としました。調べが足りず申し訳ございません。
現在執筆中で、次は今週中に更新予定です。
気長にお待ち頂いけると幸いです。