ハチドリはなぜ   作:三人天人

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※デュエル内容に関する重大なミスについて
端的に申しますとアビスの無効効果をスペルスピード3のカウンター罠に対して使ってしまっています。
展開上大きな影響は無いのですが、ノイズとなる点はご留意の上、寛大に見逃してくださいますと幸いです。


巨星、流星。相打つ⑤

 

真紅のカーテンが明滅し、ジャックのライフが1000ポイント減少する。

「勝利は定め!勝ち方に拘るのが王者の流儀だ!2ターンをくれてやったな。それでこの為体ならば、最早遠慮はいらんな!」

抜き放ったカードが紅のオーラを纏う。

カードが燃えているのかと一瞬目を疑った遊星だが、それがジャックの、赤き悪魔の力に由来するとすぐに看破した。

ディスクに叩きつけられ、火花を散るように弾けた光が徐々に形を成していく。

まるで凍り付いた炎。

灼熱で痩身を模りながら、浮かべる酷薄な笑みはひたすら愉快そうで冷淡で、リゾネーターとは異なった独特の嫌味を帯びる不気味な魔物。

紅蓮の悪魔のしもべ。[スカーレッド・ファミリア]。

「マズい!」

「[スカーレッド・ファミリア] の効果を発動!」

素早くディスクに伸びる指。

恭しく礼をした紅き悪魔が激しく燃え上がると、その炎の内から紅色の軌跡を描きながら至極色の悪魔が躍り出る。

獰猛な咆哮を上げながら姿を現した[スカーレッド・デーモン]。

紅い魔竜がけたたましい咆哮を上げると、それに呼応して真紅の緞帳が靡き、揺らぎ、やがて広がる歪みに耐えかねて硝子のように砕け散った。

砕けた破片の中に映る白い影は、 舞い落ちるガラス片の中から軽薄な笑みと共にその姿を現す。

「[スクリーン・オブ・レッド]は、レッドデーモンが存在することを条件に、破壊することで墓地のリゾネーターを蘇らせる。さらに!」

どこからともなくケタケタと響く笑い声が遊星の耳に届く。

気づけば[スカーレッド・デーモン]の足元、燻るように残っていた炎が揺らめき、[スカーレッド・ファミリア]が目を細めながら顔をのぞかせていた。

「・・・・ッ!(トラップ)カードオープン!」

「[スカーレッド・ファミリア]を除外し、[スカーレッド・デーモン]のレベルを一つ下げる」

ビープ音と共に [スカーレッド・デーモン] のレベル変動が表示されるや否や、飛び上がった[ソウル・リゾネーター]が輪となって宙に散った。

「レベル7となった[スカーレッド・デーモン]に、レベル3の[ソウル・リゾネーター]をチューニング!」

闇色の光が閃き、[スカーレッド・デーモン]を悠に超える巨体が夜闇の中で身を躍らせる。

「泰山鳴動!山を裂き、地の炎と共に身を曝せぇ![炎魔竜 レッド・デーモン・ベリアル]ッ!!」

左腕に巨大な刃を携えた巨体が[スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン]の隣に降り立った。

「そして墓地に送られた[スカーレッド・デーモン]が貴様のモンスターを蹂躙する!《スカーレッド・ヘル・ゲイル》!!」

地獄の底から噴き出した真紅の暴風が轟音を立てて遊星に迫る中、純白の燐光がその行く手に煌めいた。

「甦れ [スターダスト・ドラゴン]!《ヴィクティム・サンクチュアリ》!」

「なにぃ?!」

やがて形を成した白銀の竜は、声高く鋭い嘶きを上げて再び光の粒子となり散る。

その淡やかな光の幕に触れた颶風(ぐふう)は、轟轟と音を立てながらも遊星のモンスター達に触れる事無く脇へと逸れ、二人の耳を弄する余韻を残して消えていく。

「[スターダスト・フラッシュ]。俺は[スターダスト・ドラゴン]を蘇生していた。対策はしていると言ったはずだ!」

鼻を鳴らして睨むジャックは、やはり一筋縄ではいかないと歯噛みする。

先ほど大量のリソースを得た遊星の防御陣を突破するのはいささか骨が折れる。思案を巡らせつつ、ジャックは遊星に見えないように顎を伝う汗を拭ってコースに散らした。

(だが、このターンで趨勢を決める・・・・!)

遊星の手札は残り1枚。3枚の伏せの内一枚は[くず鉄のシグナル]。残り2枚のいずれも防御札だとして、それさえも踏みつぶす。物量と打撃力を以て忌々しきライバルの敷く鉄壁の軍陣を粉砕せんとジャックは軍配を振るう。

ジャックの瞳が爛々と灯を送らせ、その気勢に呼応するように[琰魔竜 レッド・デーモン・ベリアル] が徐に手を伸ばして[シンクローン・リゾネーター] を握り上げた。

「ベリアルは、場の悪魔を生贄に冥府のレッドデーモンを蘇らせる!」

グシャリと嫌な音を立ててリゾネーターが握り潰され、滴る雫がコースの上に漆黒の染みを広げていく。

「止めたくば止めてみろ遊星。 お前にはそれができるはずだぞ」

「・・・・」

出来ない。

確かに[くず鉄のシグナル]を使えばこの蘇生は止まる。

だが、それを使えば[スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン]の効果で場を一掃する。ジャックは言外にそう突き付けている。

動かない遊星の前で、広がる染みは平面とも陥穽ともつかない深淵と化し、 覗く虚ろから巨大な爪を備えた手がその縁を掴んで這い上がってきた。

「甦れ、アビス」

思わず遊星が眉を顰める。

厄介な無効効果を持った更なるレッドデーモンが灼光(しゃっこう)を纏う悪魔に並び立ち、山稜の如き巨魁が三体揃って遊星を見下ろした。

「バトルだ!」

間髪入れずジャックが宣言。

耳をつんざく咆哮を上げた [スカーレッド スーパーノヴァ・ドラゴン] の攻撃力は6500。

「スーパーノヴァで、まずは目障りなシューティングスターから墜とす!《バーニング・ノヴァ》!!」

四枚の羽根から炎を噴き出し、コースを太い両脚で踏み切った[スカーレッド・スーパーノヴァ・ドラゴン]が瞬く間に夜空に消えていく。

一瞬の静寂の後、大気を焼く音を轟かせる真紅の流星が真っすぐに[シューティング・スター・ドラゴン・TG-EX]に迫る。

「来いッッ!何度でも受け止めてやる!!」

的となったTGEXは、身をうねらせ翻りながら宙に球を描き舞い、その身を半透明の幕が覆う。

蒼く煌く球体に突撃する星から炎が迸る。

「|TG-EX≪テックジーナスエクスパンション≫!」

「《クリムゾン・ヘル・ガイア》!!」

「[くず鉄のシグナル]ッ!!!」

「アビスッッッッ!!!!」

まるで斬り結ぶように次々カードを切る二人の間。現れたボロボロの信号機にアビスの発した闇の群れが纏わりつく。

火花を上げながら赤いシグナルを明滅させる姿にジャックの口の端が不敵に上がる。

その闇が唐突に、一陣の風に吹き散らされるようにして消え、眩いほどの真っ赤なシグナルが二人を照らし出した。

「何ぃ?!」

ギロリと目を遣った先には悶え苦しむアビス。[くず鉄のシグナル]の前で、何者かがアビスの牙の隙間から伸びた青白い糸の先を握り締めて立ちはだかっていた。

ヤツは確か、[深淵の冥王]。

「「[スキル・プリズナー]だ!」 とぉ?!」

[深淵の冥王]の握るアビスの魂が自身の力を受け止め退け、TGEXはスーパーノヴァと激突し勇猛に雄叫びを上げる。

激しい衝突音が轟いた後、渾身の突撃を弾き返されたスーパーノヴァがもんどりうってサーキットに墜落。TGEXが勝鬨を上げるように高らかな嘶きを夜空に響き渡らせた。

「チィッッッ!だがここまでだ、ベリアルッッ!《割山激怒撃(グレート・サミット・ブレイカー)》ァァア!!」

半身となり、身を捩るように左腕が大きく振りかぶったベリアルが猛然と襲い掛かり、遂にTGEXの身を捉えた。

深々と突き立てられた刃を尚も捻じ込み、そのまま頭上へ持ち上げ円を描くように大きく振り回してから遊星の眼前へ叩きつけた。轟音と共にTGEXの装備するスラスターやブースターも誘爆し、猛烈な爆発が巻き起こる。

「ぐあああああああああ!!!」

 

LP4000 → 3800

 

「ぐぅっ、うっ・・・・!」

爆煙に巻かれてハンドルが取られる。

必死で姿勢を保ちながら遊星の指が奔る。

「ベリアルの効果!デッキと墓地からチューナーを特殊召喚!そしてもう一体、鬱陶しい奴がいたな!」

ベリアルが血払いした雫から2体のリゾネーターが現れ、ジャックの意思を受けたアビスが煙の向こうの[ジャンク・アーチャー]を捉える。

「《深淵の怒劫拳(アビス・レイジ・バスター)》、消し飛べぇ!」

高々と掲げられた拳。

吹き荒れる黒煙と炎。

ジャックの猛攻に、遊星のモンスターたちが次々と葬られていく。

か、に見えた。

TGEXの撃墜によって生じた煙が晴れていくにつれ、ジャックの表情が見る見る引き攣っていく。

碧い光を湛えた竜がそこにはいた。

拳を振り上げたアビスの眼前に、 屠ったはずの鋼の竜がいた。

[シューティング・スター・ドラゴン]

[シューティング・スター・ドラゴン・TG-EX]

二つの流星が遊星を守るように、ジャックの前に厳然と立ちはだかっていた。

「なに・・・・が・・・・」

余りの状況に言葉を失う。

奴は何処から来た、何故葬ったTGEXがまだ場にいる。

動揺もつかの間、鋭い眼光を取り戻し遊星を見遣る。

考えられるカードは1枚しかない。

遊星のDホイールの傍、赤いカードが屹立している。

「俺は(トラップ)カード、[シャドー・インパルス]を発動した!」

「・・・・―――――ッッッッ!!貴っっっっ様ぁあああ!」

そして気づけば、遊星の場から[ジャンク・アーチャー]と[スターダスト・チャージ・ウォリアー]が姿を消している。

「TGEXはお前のターンにのみ、俺の場のシンクロモンスターをリリースして特殊召喚できる。これでアビスで突破できるモンスターは俺の場から消えた!」

マイクが拾う程の歯軋りが遊星の耳に届く。

どこまでもしぶとい。果てしなく目障り。この上なく不愉快。

攻撃を無効化するモンスターがまた1体増えた事もそうだが、何よりもこのターンで遊星の盤面を壊滅させるつもりだったジャックにとって、これは余りにも手痛い術策だった。

3体の巨竜を以てしても砕けない鉄壁の盤面。

ジャックが有する最大級の打撃力をしても突破困難。

正に盤石の防御陣を敷く遊星は、二体の竜が見せる勇壮な後ろ姿越しにジャックを見据え、そっと汗を拭った。

先ほどまでと打って変わり、静かで重々しい表情となったジャックは、今しがた[ソウル・リゾネーター]の効果で手札に加えた二枚目の[ボーン・デーモン]をようやくカードホルダーに収め、エンドフェイズの宣言を成す。

それを受け、遊星の頭上で星が閃いて、光が膨れ上がり、弾けた。

短い嘶きの後に、[スターダスト・ドラゴン]が再び遊星の傍で付き従うように翔び始め、遊星の場には二体のシューティングスター、遊星号の化身を思わせる戦士、そして[スターダスト・ドラゴン]が肩を並べる。

各々に強大な三体の竜を従え、決闘(デュエル)は佳境に入ろうとしてた。




◆デュエル描写ミス
前話で遊星の伏せカードの枚数が誤っていた事に関連し、今話の描写も一部修正しております。
誠に申し訳ございません。
※2023/10/13 22:38
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