オレの名前はハマー・D・エッジ。
転生者だ。
ワンピースのVRゲームを楽しんでいたオレは、念願のSSランク悪魔の実を手に入れ、喜び勇んでそれを口にした瞬間なぜかすさまじい不味さと共に意識を失い、気がついたらワンピースの世界に転生していた。
場所は小さな無人島。
そしてオレの外見は、自ら作ったアバターを15歳前後くらいにまで若返らせた感じになっていた。
もう何が何だか分からない。
分からないが、この世界に転生してきてすでに十日が経過している。
初めのうちはVR機器の故障で昏睡状態になり、リアルな夢でも見ているんじゃないかと思っていたが、流石に十日も経てばその考えは捨てた。
というか初日に野生動物(でっかい虎)に襲われ、それを返り討ちにして喰った時に捨てた。
おそらく、元の世界に戻ることもないのだろうと諦めもついている。
幸いなことに、手に入れたSSランク悪魔の実『ストストの実』の能力はそのまま持っていた。
習得していた覇気や六式の技能もそのままだ。
戦闘能力に関して言えば、新世界でも十分に通用する強さだと思うし、実際ゲーム内では通用していた。
ただし、この世界の敵の強さがゲーム内のNPCと同じくらいであれば、の話ではあるが。
まあ、もしこの世界の住人がゲームより強いとしても、今のオレにはSSランク悪魔の実『ストストの実』の能力がある。
この力があれば、現実となったこの世界でもなんとか生き抜いていけると思ってはいるのだが……問題が一つ、いや二つ。
その一つめだが…………実は俺、原作のストーリーってほとんど知らないのよね。
ワンピEWにはハマっていたオレだが、原作のコミックは未読だし、アニメや劇場版も観たことはない。
麦わらの一味だとか、海軍や海賊の有名な人物だとかはゲームのイベントで出てきたからなんとなく知ってはいるんだけれども、それも能力や見た目、名前、立場くらいなもの。
どうストーリーに関わってくるのか、最終的に敵なのか味方なのか。
そういった所はてんで分からない。
だってそもそも、ワンピEWは『原作を知らなくても楽しめる』という触れ込みのゲームだったのだ。
ストーリーに沿った『グランドクエスト』をやっていけば原作の流れを体験することもできたのだが、別にやらなくてもゲームは問題なくプレイできるため、それもやっていない。
だって、はやく悪魔の実集めやりたかったんだもの……
という訳で、二次創作にありがちな『原作知識無双』みたいなことは俺には出来ないのだ。
そして二つ目。
それは『ゲームのシステムを使用できない』ということだ。
どういうことかと言えば、まあ、簡単に言うとメニュー画面が開けない。
メニュー画面が開けないと言うことは、マップの表示、世界各地の港への瞬間移動、拠点(船)への帰還、ステータスの確認、スキルポイントの振り分け……などといった便利機能が一切使用できないということ。
おかげで現在地は分からず、移動は全て自力で行わなければならず、この先航海術なんかも覚える必要が出てくるだろうし、強くなるためには体を鍛えて戦闘経験を積むしかない。
まあ、そもそも身一つで転生(転移?)してきたのだから、船すらない現状なのだが。
……しかし、それはそれでいいかな、と今は思っている。
だって、人生ってのは本来そう言うものだ。
原作を知っていればどう行動するべきかの指針になったかも知れないが、『原作を壊さないように』とか余計な思考に縛られて、自由に生きることも出来なかっただろう。
その点、何も知らんオレは、好きに生きて問題ない。
『好きだったあのキャラを救わなきゃ!』みたいな使命感もない。
広大な海で、ただ自由に、自分のやりたいことをやって生きていけるのだ。
その為にオレがやるべき事、それはまず『ストストの実』の能力を使いこなせるようになることだろう。
自分の
とくに海賊が跋扈するこの世界では。
と言うわけで、検証してみた。
結果、基本的にはゲームの中で最後に見た説明文と同じだった。
無生物であれば体のどこからでも体内の異空間……とりあえず『倉庫』と名付けたが、その中に収納できるし、逆にどこからでも出すことが出来る。
オレの体積を遥かに超える大きさのものでも出し入れできるし、重さも気にしなくていいようだ。
なんというか……イメージとしてはドラ○もんの四次元ポケット的な感じ?
そして『生物は入れられない』という制限が付いていたが、生えている木や植物は収納できないものの、地面から引っこ抜けば収納することが出来た。
地面から抜いた時点で、『無生物』と判断されるんだろうか?
その辺はまだよく分からない。
また、生きた虎は当然収納できなかったが、肉になった虎は収納できた。
そして収納した肉は、何日経っても腐らずに入れた時の状態のままだった。
これがおそらく『運動エネルギーや熱エネルギーを保持したまま貯蔵できる』という能力だろう。
食材が傷まないのは非常に便利である。
出来たての料理を入れておけば、いつでも温かい食事をとれるはずだ。
……と、ここまでならただの『生活や船旅で便利な能力』でしかないが、SSランクの能力がその程度な訳がない。
オレが注目したのは『運動エネルギーや熱エネルギーを保持したまま貯蔵できる』という一文の『運動エネルギー』の部分だ。
運動エネルギーを保持できる、ということはつまり、飛んできた銃弾なり砲弾を『倉庫』に収納し、そのままの勢いで相手に撃ち返せるのではないか? という仮説を立てたのである。
もちろん試して見た。
その辺にある石ころを拾って、空に向かって全力で投げる。
当然、その石ころは重力に引かれて落下してくるので、それを受け止めるように収納した。
そして、近くにあった木に手のひらを向け、そこから収納した石を取り出してみた。
結果、石ころは木にめり込んだ。
実験成功である。
これで飛び道具に関しては警戒する必要はないだろう。
覇気が込められていたらどうなるか分からないが、それも多分大丈夫なんじゃないかと思っている。
なぜなら、何か物体を『倉庫』に収納する際、その物体はオレの体には触れていないからだ。
なんというか、体の少し手前に『扉』というか『門』というか、『倉庫』の入り口のような物が展開されて、その中に物体が吸い込まれていくのである。
つまりこの能力は、オレが『倉庫』になる能力なのではなく、オレだけが使用可能な異空間に繋がる『門』を開くことが出来る能力なのだろう。
能力に合わせて身体が変化する
体に直接触れないのであれば、覇気が込められていようと、海楼石で作られていようと関係ない。
たぶん飛び道具じゃなくて剣とか槍みたいな近接武器だったとしても、問題なく倉庫に入れられるはずだ。
つまりオレは、武器を扱う敵に対して無敵の能力を手に入れたのだ!
…………まあ、生物は収納できないから、素手で殴られたら普通にダメージ受けるんだけどね。
感想が来たのでもう一話書いたよ。
この続きは気が向いたらその内書きます。たぶん。