オレの名前はハマー・D・エッジ。
保護者だ。
……いや、それが船長を倒した後に船室を調べてみてびっくり。
なんとそこには、ちっちゃくて可愛い女の子ばっかりが何十人も詰め込まれていたのだ。
なんでもこの船は『人攫い屋』とかいう、人を攫っては売り飛ばす極悪組織の所有する輸送船だったらしい。
全員ぶっコロコロしておいて正解だった。
そしてそれを教えてくれたのが、オレが助けた三人の美少女の一人。
長く艶やかな髪と、ひときわ整った美貌を持つ少女、ボア・ハンコックちゃんだ。
その名前を聞いたオレは、またまたびっくり。
だってハンコックと言えば、王下七武海とかいう悪の組織の女幹部だったはずだ。(間違い)
タッパも胸も尻も態度も大きい『女帝』とか呼ばれている存在で、ゲーム内では性別が男のアバターに対して攻撃力1.5倍とかいう訳の分からん性能を持っていた。
たぶん、オレが助けなかった世界線では男にひどい目に遭わされて、その憎しみで性格が歪み、悪の道に走っちゃったんだろうなぁ……(ちょっと正解)
……ともかく、オレは決めた。
原作で彼女たちがどんなひどい目に遭ったのかは知らないが、こうしてオレが助けたのも何かの運命だ。
絶対に同じような目に遭わせたりはしないし、悪の女幹部にさせたりもしない。
命をかけても守ってみせる。
そう決意してハンコックちゃんに告げたら、顔を真っ赤にして「こ、これが、プロ、プロポ……」と言いながら気絶してしまった。
プロポリスだろうか?
もしかしたら、栄養が足りてないのかも知れない。
こんな劣悪な環境にいたのだから、それも仕方無いことだ。
なので、気を失ってしまったハンコックちゃんをベッドに運ぶと、オレはちびっ子たちを集めて料理を振る舞うことにした。
材料はもちろん、無人島で手に入れた肉や魚。
そしてこの船にあった食材と調味料を使う。
とはいっても、この船にあった食材はイモ、豆類、乾パン、塩漬けの魚と塩漬けの野菜、干した果物と干し肉くらいなもの。
そして調味料と言えるのは塩だけだ。
あとは一応ラム酒もあるが、もちろん子供に飲ませるつもりはない。
本来は海を長期間航海するのに必要な水分なんだろうが、『倉庫』の中に大量の湧き水を収納してあるオレには無用の長物だ。
故に、ラム酒は樽ごと全部『倉庫』に放り込んでおいた。
で、残った食材で作れる物といえば…………なんだろう。
無人島で手に入れて焼いといた肉に塩を振って、茹でたイモと塩漬けの野菜を添えて、あとは乾パンをむっしむっし喰いながら水を飲むくらいしか思い浮かばない。
……それでいいか。
という訳でそれを提供した。
だがそんな適当な料理だというのに、ちびっ子たちには好評だった。
どうやらこの船での食事は、ほとんど具の入ってない塩辛いスープと乾パンだけだったらしい。
というか、焼きたての肉なんて船の上ではごちそうだそうだ。
まあそうだよな。
この世界、食材の保存技術とか進んでなさそうだし。
たぶん、ゲームと違って冷蔵庫なんか存在してないんだろうなぁ……(あるところにはある)
……ま、『倉庫』持ちのオレには関係ない話だ。
オレもさっさと食事を済ませて、倒れたハンコックちゃん用に米抜きのイモ粥っぽいものでも作っておこう。
◇
目が覚めたハンコックちゃんにイモ粥を提供したら、怪訝そうな顔をしたものの美味しそうに食べてくれた。
そしてその後で皆と同じように肉も食っていた。
もしかしたらさっき倒れたのは、お腹が空きすぎていたからなのかも知れない。
で、食事が終わったら今後の予定の相談である。
この船の中で最年長はオレだし、一番戦闘能力が高いのもオレだが、実は航海する上で一番役立たずなのもオレだ。
船の操作方法とか知らんし、方角とかも分からんし、島の位置関係とかもなんも分からん。
だって、ゲームでは基本長距離の移動は港から港への瞬間移動で済んだし、それ以外の移動もマップを見ながらだったしね。
なので、オレを除いて最年長であるハンコックちゃんに、なんとかならないか相談してみたのだ。
すると、なんとかなった。
ハンコックちゃんも、妹のサンダーソニアちゃんとマリーゴールドちゃんも、船の操作方法や航海の仕方を心得ているらしい。
彼女たちの故郷であるアマゾン・リリーという場所で、幼い頃から英才教育を施されてきたのだとか。
しかもその英才教育の中には覇気の扱いも含まれており、三人ともまだ未熟ではあるが武装色と見聞色の覇気を使った戦闘も可能で、ハンコックちゃんに至っては覇王色まで使えるそうだ。
それなのになんで捕まったんだろう、と思ったら、この船はあくまでも輸送船で、彼女たちの乗っていた船を襲ったのはもっと強いヤツらだったらしい。
そして、数日間ろくな食事も与えられずに弱っていた所を、彼女たちの美貌に魅了された下っ端たちが甲板に引きずり出し、コトに及ぼうとしていた、というわけだ。
……ふうむ。
マジでコレは運命を感じちゃうな。
オレがあと一日でも無人島から出るのが遅ければ、ハンコックちゃんたちは男どもによってひどい目に遭わされていただろう。
それだけじゃなく、現実の海で生きる術を全く知らないオレもまた、ハンコックちゃんたちに出会えなければ海の藻屑と消えていた可能性が高い。
つまり、オレがハンコックちゃんたちの恩人であると同時に、ハンコックちゃんたちもオレの恩人というわけだ。
なるなる。(なるほどの意)
これはアレだな、オレにハンコックちゃんを娶れという、天からの啓示だな。(謎の超理論)
よし、そうと決まれば、今日から毎日ハンコックちゃんの好感度を上げていくぜ!
具体的には船の掃除とか、食事の用意とか、子供の世話とか、そういった雑用を全部こなしていくぜ!
他のことは出来ないしな!
主人公はなんの躊躇いもなく人をコロコロしてますが、未来のゲーマーは大体こんな感じです。
なぜなら、めちゃくちゃリアルなVR世界で日常的に同じ事をやっているから。
特にZ指定のFPSとかやってる人は、普通のサラリーマンでも歴戦の傭兵みたいな目をしてます。
慣れって恐いね。
それはそうと、奴隷にならず、人を拒絶する居丈高な仮面を被る必要がなくなったハンコックちゃんの言葉遣いが分からん。
一人称とかも、原作と同じ『わらわ』でいいんか。