月に寄りそう笑顔の作法   作:Negative Photoshop

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小説を書き始めて、初めて毎日投稿のヤバさがわかりました。
早く書ければ早く投稿します。
あとがきに設定、展開について書いているので、よければどうぞ。
※遊星の発言を少し変更しました


兄妹邂逅(妹)

 転生に気づいてから2年が経ち、俺と朝日は7歳になった。原作通り、出荷――使用人として働けるようにすること――に備えて二人とも色々な分野を勉強させられている。ただ朝日はゲームの遊星と違って、そこまで辛そうでは無かった。おそらく俺と一緒だからだろう。それでも朝日はまだ5歳だ。辛いことに変わりはない。

俺は前世の記憶(と言ってもほぼ無いようなもんだけど)があるので全然苦では無かった。むしろ知識をどんどん吸収していけているので楽しい。子供の体だからだろうか。なので、朝日がわからない所は屋根裏部屋で教えたりしていた。

 

 今日も家庭教師たちの授業を終え、母さんが朝日とじゃれあって遊んでいるのを横目に俺は考えていた。俺らが5歳になったということは、そろそろ『大蔵りそな』と『大蔵衣遠』とのイベントが起きるはず。りそなの方は特に問題ない、問題なのは衣遠様の方である。会話を交わしたことは一度も無い。以前から遠目に見ることは何回かあったが。見た限りでは、原作と変わりなく苛烈なお人のようだった。

朝日は多分大丈夫だろうが、果たして俺はうまくやれるだろうか。そんなことをあーだこーだ考えていると。

 

「ねぇ、遊星も話そう?」

 

「遊星、あなたもいらっしゃい。一緒に話しましょう」

 

 二人に呼ばれた。

 

「はーい」

 

 結局どう考えたってなるようにしかならないか、と俺は考えるの止め、二人の方に寄って話し始める。どのような展開になろうと、俺は朝日のために頑張るだけだ。

 

 改めてそう決意し、そのまま三人で喋りながら、夜は更けていった。

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 「遊星、朝日……まさかとは思うけれど、あなたたち今日、あなた達だけで外に出た?」

 

 ある夜、いつもの屋根裏部屋で帰ってくるなり母さんが訊いてきた。

 

 「いいえ、まさか。私も遊星も外に出てません。私たちが最後に外出したのは、半年前の課外授業のはずです」

 

 朝日が答える。俺たちは大蔵家にとって隠しておきたい不詳の子であり、随伴者無しではまず外出などできない。だから、俺と朝日は自由に外の世界を歩いたことが一度もない。

 

 「……多分俺が塀の植え込みが乱れていたのを、外にまわって少し整えていたのが間違って伝わったんだと思います。」

 

 今日の仕事内容にそんなのがあった。ちなみに一人称は時と場合で使い分けている。家族の前では基本「俺」だ。母さんもそれを知っているからか、特に注意してきたりなどはない。

 

 「まあ、そうだったの。でも……そうねぇ、なるべく誤解を招くような行動は慎んだ方がいいわね。今は、ほら……ねえ? いらっしゃってるでしょう、その、あの方が」

 

 母さんはそう言葉を濁したが、誰のことを指しているかは明らかだった。本妻だろう。

 

 俺らの、つまりは『大蔵遊星』の母親は、所謂旦那様の愛人なのである。旦那様は彼女に、一族じゅうの反対を押し切ってまで愛人の子供たち(俺と朝日)を認知するなど、並々ならぬ寵愛を向けた。そんな彼女に、当然本妻がいい感情を持つわけはなく、母さんはこの屋敷において厳しい立場にある。そのために、母さんは本妻にひどく引け目を感じており、また刺激しないようにしていた。

 

 「「わかりました」」

 

 俺と朝日は声をそろえてそう言った。おそらく朝日もわかっているのだろう。まだ5歳だというのに、なんて悲しい生を歩んでいるのだろうか。ますます俺の決意はみなぎっていた。

 

 ――にしても、この話題が出てきたということは、そろそろか――

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 さらに1年が経った。

 

 「ごめんね遊星、朝日。おねがいがあるの。」

 

 ある夜、右の頬を赤く腫らせて帰ってきた母さんが、神妙な声で言った。おそらく本妻に叩かれてしまったのだろう。

 

 「さっき、あなた達の休暇届を出してきたわ。だから、ごめんね、今日からあの方がお帰りになられるまでの間、決してこの部屋から出ないでね」

 

 この屋根裏部屋には、トイレやキッチンなどの生活するための設備は簡素ながら揃っており、家庭教師の授業も専らここで行われる。なので特に問題はない。

 

 「はい、わかりました」

 

 「私たちは大丈夫なので、気にしないでください」

 

 朝日も子供心になんとなく事情は理解しているらしい。

 

 「本当にごめんね、不憫な思いをさせて……」

 

 母さんは俺らを抱いて何度も謝っていた。

 

 「お母さん、あなた達だけが生き甲斐なの。ずっとそばにいさせてね」

 

 「はい、もちろんです」

 

 朝日はその言葉が嬉しかったらしく、笑顔で母さんを抱きしめ返していた。

 

 「…………」

 

 この後の展開を知っている俺は、何もいうことができなかった。

 

 それでも、ここまで育ててくれた母さんは俺も大好きだった。なので、返事として強く抱きしめ返した。

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 数学の授業が終わった後、朝日は因数分解の復習をしている中、俺は屋根裏部屋の窓から見える人の服を一生懸命スケッチしていた。

 

 何故そんなことをしているのかと言えば、原作開始後に向けてだった。『大蔵衣遠』はよくも悪くも才能至上主義だ。

 

 朝日はおそらく開花は遅いだろうが、原作の『大蔵遊星』のようにパタンナーの才能があるはずだ。

しかし、俺は原作のキャラではないので才能は全くの未知数。それならば早めに練習というか、特訓をしておけば少しは才能ありと認めてもらえるんじゃなかろうか、と思ったからだ。

そこで俺は朝日と対照的に、デザイナーの特訓を始めた。パタンナーと違って、デザイナーは紙とペンさえあれば特訓ができるしな。

 

 そのおかげなのか、俺は見た服のディティールなどが上手く描けるようになったし、自分で考えた装飾を付け足したり、時には一から服のデザインを描くなんてこともできるようになった。

なにより嬉しいのは、俺自身がデザインすることを楽しめていることだった。好きなキャラたちに近づけたようで、なんか嬉しい。

 

 そんなふうに二人で過ごしていると、階下から幼い子供たちの舌足らずな罵声が聞こえてきた。

 

 屋敷では住み込みで働く使用人家族もいるので、その子供たちが騒ぐ声が聞こえてくるのも珍しくなく、朝日は母さんとの約束もあるので、気にしていない。

しかし一向に騒ぐ声は止まず、さらには小さい女の子のむせび泣く声が重なってきたあたりから朝日がそわそわしだし、ついには小さくドアを開けて様子を伺っていた。

俺もそれに続き、朝日と一緒に隙間から様子を伺う。

 

 「うえぇぇーん……ええーん……」

 

 そこでは、白いワンピースを着て、特徴的な紐の髪飾りをつけた黒髪の女の子が、俺らより幾らか年下の子供たちに泣かされているところだった。

 

 大蔵りそなだ……。

 

 いよいよ、ついに原作が始まりつつあるということを実感する。

この場面は、できれば朝日から動いてもらいたい。下手に俺から動いて原作の『大蔵遊星』のように恋心を持たれたくない。持つなら朝日に持ってくれ。

そんなことを考えていると、おもむろに朝日が口を開いた。

 

 「遊星、私、あの子を助けたい。」

 

 ――それを聞いたとき、俺は心のどこかでふと安堵した。誰かのためになれる人になりたいと願っているのだなと、やはり『朝日』は『遊星』なのだなと実感したから。

なら俺は止める気なんてさらさら無い。

 

 「止めないよ。むしろ俺も止めなきゃと思ってたしな」

 

 「…うん、ありがとう!」

 

 いうが早いか、朝日は小走りで行ってしまったので俺もそれを追う。

 

 「失礼します。騒がしいようですが、どうかなさいましたか?」

 

 朝日が若干硬い声で、英語で話しかけていた。

 

 「はー?なんだお前」

 

 「この屋敷の使用人でございます。なにやらもめているご様子だったので、お声をかけさせていただきました」

 

 朝日の代わりに俺が答える。

 

 「朝日、その子を頼むね。多分英語をわかってないと思う」

 

 小声で朝日に伝える。朝日は小さくうなずき、りそなに近寄って「大丈夫?」と日本語で話しかけていた。

 

 「それで、何があったんです?」

 

 「そ、そいつに遊んでやるっていっても無視してきたんだよ!」

 

 「俺らのこと、ナメてんだろ!」

 

 次々にまた騒ぎ出す。後ろでは怯えているりそなを朝日が慰めていた。

どうやって追っ払ったもんかなぁと悩んでいると、不意に1人が思い出したように声を上げた。

 

 「あっ…、やべぇ、思い出した!こいつら屋根裏の王族だ!こいつらと喋ったらうちのマミーがクビになっちまう!」

 

 原作だと屋根裏王子だったから、双子だとなんて呼ばれてんのかと思ったら王族なのか、と内心どうでもいいことに突っ込んでいる間に、子供たちは一目散に階段を駆け下りていった。

 

 「よくわからないけど行っちゃったね」

 

 「えへへ……」

 

 「何とかなってよかった……」

 

 三人で顔を見合わせ、少し笑う。

 

 「コミュニケーションってのは難しいな、朝日」

 

 「ただお友達にでもなりたいな、と思ったんですけどね」

 

 俺の意を汲んでうまく返してくれる。

 

 「じゃあ、りそなが二人のお友達になってあげる!」

 

 「それはとても光栄ですね、姫」

 

 「ふふーん、よろしー。ジュースを持ってくるのじゃ、馬!」

 

 「俺、馬なの??」

 

 相手が相手なので、俺も気を抜いて対応する。

 

 それからしばらくは三人で遊んだり、喋ったりしていた。予想通りとでもいうべきか、やはり朝日はりそなに日本の色々な事を話してもらっては楽しそうにしていた。

朝日は俺以外の同年代と遊んだことが無かったので、新鮮だったのだろう。それは楽しそうであった。

 

 

――しばらくして、りそなと別れた俺たちは屋根裏部屋に戻っていた。

 

 「……やっぱり、怒られちゃうかな」

 

 「母さんならきっとわかってくれるさ」

 

 若干不安がっていた朝日を励ましていると。

 

 

 

 「――久しいな、雌犬の子よ。とはいえ、片割れとは初対面なわけだが……。クハハッ……!」

 

 

 

 不意に、後ろから声がした。

 

 




この話自体は早々に考え付いていたのですが、いかんせんどう衣遠さまの好感度を上げるか悩んでました。そしてようやく思いついたので、とりあえずこの話を投稿しました。
衣遠様の好感度に上げ方については、上がったそのときの話のあとがきで説明します。
また、この作品が一人称視点のせいで朝日などの出番が少ないように感じるかもしれませんが、後々朝日視点などの他キャラ視点の話も書く予定であり、またフィリア女学院編などでは、朝日視点を中心、多くしていきますので、長い目で楽しんでいただければ幸いです。
最後になってしまいましたが、UA200もいってました。とてもありがたいことです。
感想、指摘、評価など、いつでもお待ちしております!

どうしようか悩んでるんですけど、遊星(オリ主)にヒロインは必要?(誰がとかはおいといて)

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