月に寄りそう笑顔の作法   作:Negative Photoshop

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思った以上に評価、感想、お気に入りなどもらえて嬉しかったです。
おかげでめちゃ書けました。楽しんでいただけると幸いです!!
  

年齢とかの設定がめんどくさくなってきた


祖国帰還

 そんなこんなで日本、やってきました。

 

 「おぉ―――――」

 

 空港から出ると、目に入ってくるのは前世で見慣れた日本のありふれた都会風景。

 

 とはいえこの世界に生まれ落ちてからはずっとマンチェスターで過ごしていたものだから、いくら前世を日本で過ごしていた俺にとっても目に映る日本の風景、そして目に次々入ってくる日本語の数々はとても新鮮なものに見えていた。

 

 「何を呆けている。無駄に時間を使っている暇はお前にも俺にもない。さっさと行くぞ」

 

 「は、はい」

 

 俺が日本の地に想いをはせている間にも衣遠兄様は先へと進んでいく。おいていかれないよう小走りになりつつ、彼の後をついていった。

 

 

 

 しばらく歩いていると、日本には初めて来たはずなのに見たことのある景色が目に飛び込んでくる。

 

 (ここは……)

 

 そりゃ見覚えもあるはずだ。ここは原作でも何回も登場した舞台の――――

 

 「遊星。見ろ」

 

 衣遠兄様が指さした方向には、いかにも有名ですよと言わんばかりの服飾ブランドの店がずらりと並んでいた。

 

 「ここは日本のファッション中心の地、表参道。世界でも名の知られているブランドが集まっている」

 

 そこで彼は足を止め、俺の方を振り返る。

 

 「ここを中心として、お前には服飾の何たるかをその頭に叩き込んでもらう。今のお前には、当然ではあるがファッションの基本的な知識すらない。ただ服を上手く描けるなら絵描きにでもなればいい」

 

 「はぁ…」

 

 「気の抜けた返事だ」

 

 ため息をつきながら続ける。

 

 「だがマンチェスターで見たお前のデザイン画にあったディテールや意匠…。何の知識もない人間が一から考えデザインしたというなら筋は中々に良い。挑戦させてやる価値はある」

 

 「お前にはまずいくつかの課題を出す。ここら一帯の店を見学し、一流の服というものを学べ。ファッションにはいつ何時(なんどき)でもその時の流行というものが求められる、流行には常に気を配れ」

 

 「デザインの基本についてはまた今度書を持ってくる、それに目を通せ。時間が合えば俺が直々に指導してやる」

 

 「あ、ありがとうございます!」

 

 「この俺がここまで目をかけてやっているからには、期待に応えて見せろ。お前の望みのためにもな…」

 

 「必ず、衣遠兄様が満足するほどの結果を残して見せます」

 

 「フン。程々に期待して待っているとしよう」

 

 そのまま彼は歩みを再開する。

 もちろん、今一番の目標は衣遠兄様が納得するほどの結果を出し、朝日をこちらに連れてくることだ。しかしそれと同時に、デザインについてより深く、専門的に学べる今の状況を嬉しく思ってしまっていた。

 俺は自分に気合を入れようと両手で自身の頬をたたき、そのまま衣遠兄様の後を追った。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 

 「着いたぞ」

 

 あれからさらにしばらく歩き、ようやく着いて連れてこられた場所はこれまた見たことがある場所だった。

 ここ、原作の遊星が桜屋敷に行く前にりそなのお世話係として過ごしてた場所じゃん。

 

 「さて、お前の才能を鍛え上げてやるとは言ったが…。毎日お前に構っていられるほどこの身は暇ではない。むしろお前一人で学ぶことの方が多いだろう」

 

 「俺の目が届かない状況でお前に怠惰に過ごしてもらっては困る。怠惰とは俺がこの世で最も嫌うものだ!……そこでお前には監視役をつけることにする」

 

 「監視役…ですか」

 

 「そうだ。さらに加えて言えば、今のお前にはこちらに連れてきた都合上、立場が必要となる。」

 

 そこまで言うと彼は少し不機嫌になったように声に険が混じり始めた。

 

 「ちょうど今、人員を探していた。この俺の手を煩わせる、愚かな()()の世話係がな…。」

 

 「ぐ、愚妹の世話係、ですか……?」

 

 「あぁ、そうだ。アレが引きこもり始めてからというもの、母上からの連絡が後を絶たん…。やれアレにふさわしい部屋を用意しろ、快適に過ごすための世話係を付けろだの…。所詮あの程度で努力することを諦めた『惰弱』なんぞに構っている暇はないというのにだ!!あの屑がァ!!!」

 

 相当ストレスが溜まっているのか、近くの机に拳を叩きつけるのを見て思わずビクッとしてしまった。

 

 「…いや、今はそんなことは良い。とにかくお前にはアレの世話をしてもらう。それと同時にアレにはお前が言われた通り学んでいるか定期的に報告するよう言いつけてある」

 

 「なるほど…、わかりました。衣遠兄様から受けた恩に報いることができるよう、お世話係も、デザインの勉強も頑張ります!」

 

 頭を下げると、彼はつまらなさそうに鼻を鳴らした。

 

 「フン…。言っておくが、アレが虚偽の報告をしても俺が見たときにお前がどのくらい努力したのかは一目でわかる。つまらぬ考えは捨ておくことだ」

 

 「お言葉ですが、衣遠兄様が下さったこの素晴らしい機会を無下にするわけがありません」

 

 俺がそう返すと、彼は本当に珍しくフッと少し笑い、「どうだかな」と言った。

 

 「課題などはまた明日持ってくる。詳しい話はアレから聞くがいい。もう察してはいるだろうが、お前も知っている人間だ。少なくとも俺よりは良い関係を築けるだろうよ」

 

 「私としては衣遠兄様とも兄弟としても仲を深めたいものです」

 

 ちょっと欲を出してみた。が、まだまだ衣遠兄様には響かない。

 

 「小賢しい…」

 

 そう言い残すと、衣遠兄様は部屋を出ていった。いつか原作のアフターストーリーみたいに兄弟姉妹四人でとんかつ屋に行きたいなと思いながら、とりあえず持ってきた荷物の整理を始めたのだった。

 

 

 

 

 しばらくするとガチャリという音が玄関から聞こえてきた。続いて聞こえてくるのはまだ幼い少女の声。

 

 「失礼しまーす……。あの、ここに私の新しいお付きの人がいるって聞いたんですけど。誰かいますかー…………。」

 

 予想通りの声だった。俺は終わりかけだった荷物整理の手を止め、彼女を迎えにと部屋を出て廊下と玄関を繋ぐ扉を開ける。

 玄関をキョロキョロしていた彼女――――りそながこちらを向いた。

 

 「あ、良かった。いたんですね。誰もいないかと思いま―――」

 

 こちらを見た彼女の言葉が途中で止まり、驚いたかのように目を大きく見開いた。

 

 「久しぶり」

 

 「え………?」

 

 どうやら世話係が俺だというのは聞いていなかったようで、かなりの驚きようだ。というか、俺のこと覚えてくれてて良かった―――!いや、まぁ朝日のことは絶対覚えているだろうけど、俺だけ覚えてないとか全然ありえたし。

 

 「え、まさか、本当に…?お兄ちゃんなんですか……?」

 

 流石にまだこの頃は下の兄呼びじゃないんだなー、でも敬語なんだなーと益体の無いことを思いつつ返事をする。

 

 「そうだよ、りそな。かれこれ2.3年ぶりくらいだな。マンチェスターの屋敷にいたとき以来だ」

 

 そう俺が言い終わるとほぼ同時に、りそなが大粒の涙を流しながら勢いよく抱き着いてきた。俺がりそなのいきなりの行動に目を白黒させていると、

 

 「ごめんなさい……!!」

 

 と、俺の服の裾を強く握りしめながら、何度も何度も謝ってくる。

 

 「わた、私があの時、あなた達に迷惑をかけてしまったから……!あなたたちはあの屋敷から追い出されてしまった……!!」

 

 涙を流し続けるりそなの姿に、俺は困り果ててしまう。

 今の俺と朝日の状況に、りそなの責任なんてあるわけがない。あの時、マンチェスターの屋敷での出来事は俺と朝日が考えてやったことだ。

 

 「りそな」

 

 りそなは悪くない、それを伝えるために彼女を抱きしめ返す。

 

 「!」

 

 「りそなは悪くない。悪くないんだ」

 

 「でも、でも……!」

 

 「あれは朝日と俺が自分で考えて、りそなを助けたいと思ったからああしたんだ。りそなは謝ることじゃないんだよ。俺も、きっと朝日も、後悔なんてこれっぽっちもしていないさ」

 

 「う、うぅ~~~!!」

 

 それでも彼女は泣き続けていた。うーん、弱ったなぁ…。

 ……ふと思いついて、りそなの両頬を左右にびよーんと引っ張る。

 

 「!?い、いひらりらりひゅるんれひゅか!?(い、いきなりなにするんですか!?)

 

 「いやぁ……。……笑ってほしくて?」

 

 そういうと、りそなはポカンとしていた。ちょっと可愛い。

 

 「せっかくならさ、りそなには笑っていてほしいよ」

 

 りそなの頬をムニムニしながら続ける。これは俺の本心だ。今の俺はこの世界で朝日含めたみんなに幸せになって欲しいと思って行動している。

 

 「泣いて欲しくなくて、笑っていて欲しくてさ。助けたんだから」

 

 そのまま微笑みかけながらムニムニ。しばらくムニムニしていると、彼女は俺の手を掴んで顔から離すと、俺と向き合った。

 

 「……はい、わかりました。でも、最後にもう一度言わせてください。あの時助けてくれて、本当にありがとうございました」

 

 まだ涙は止まってはいなかったけども、少なくとも彼女のその顔は笑ってくれていた。

 

 

 

 

 

 一度落ち着くために、少し時間をおいてからまた俺たちは話し始めた。その間、りそなは「……あんまり見ないでください」と泣いて赤くなってしまった顔を隠しながら喋っていた。とても可愛いなと思いました。(人並みな感想)

 

 「ところで、お兄ちy……下の兄」

 

 「別に照れなくてもいいのに。お兄ちゃん呼びでも俺は構わないよ」

 

 「照れてません!!………それで」

 

 さっきの表情は真剣なものになっていた。

 

 「姉は……ここには、来ていないんですか」

 

 心配なんだろう。せっかくさっきまで笑っていた彼女の顔は、また曇ってしまっていた。

 

 「……残念だけど、朝日は連れてこられなかった」

 

 「…そう、ですか………」

 

 「でも、安心して、りそな。時間はかかってしまうかもしれないけど、必ず朝日もここに連れてきてみせる」

 

 「え……?」

 

 「ここに俺が来た理由ともつながるけど、衣遠兄様と約束したんだ。あの人が認めてくれるほどの結果を出せたら、朝日をここに連れてきてくれるって」

 

 「そ、それはまた随分と難しい条件ですね……」

 

 「俺もそう思う。一筋縄じゃいかないだろうね。でも頑張りたいんだ。もちろん朝日もこっちに連れてきて、皆で過ごしたいし、デザインも好きだから」

 

 「……そうですか。妹、できることはあんまりないですけど!…精一杯応援させてもらいますよ、えぇ」

 

 「うん、ありがとう」

 

 それからまたしばらく話した。俺と朝日のこと、どうしてここに来ることになったのかの詳しい事情、りそなのこれまでのこと…。

 たくさんたくさん話してから、りそなにお願いされたので一緒のベッドで寝た。

 

 

 久しぶりに夢を見た。俺と朝日、そしてりそなと衣遠兄様で仲良く話しながら食事をする夢。

 

 いつか本当にしてみせるさ。

 

 




ちなみに言っておくと、りそながオリ主に恋愛感情を抱くとかそういう展開はないのでご安心を。
あと、遊星(オリ主)と朝日の外見ですが、遊星は基本原作の遊星と見た目や声は変わりません。違うのは中身だけです。朝日は原作の小倉朝日と同じです。髪は長いです。

楽しんでいただけていたらなによりです!!
感想、指摘、評価などお待ちしております!!

どうしようか悩んでるんですけど、遊星(オリ主)にヒロインは必要?(誰がとかはおいといて)

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