月に寄りそう笑顔の作法   作:Negative Photoshop

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私はカスです
自分でもここまで投稿しないとは思いませんでした
このままだと、完結どころかフィリア入学するまで8億年くらい(オタク特有の馬鹿デカ数字)かかりそうなのでフィリア入学まで駆け足で走ることにしました。
一応、キャラ達の心情などは辻褄合うように頑張りますが、何かご意見あれば遠慮なくお願いします。
後書きにアンケートの説明あるので、良ければ。



愛を拒み覇道をゆく天才の邂逅

 

view change of 大蔵衣遠

 

 最初にあの双子のことを知ったときに抱いたのは、敵を増やしたことを見逃してしまったことに対する後悔や己を脅かす存在の対する憎悪などが混ざり合った、どうしようもない感情だった。

 

「…………屑がァ!!!!」

 

 思わず机を蹴り飛ばしてしまうが、そんなことは気にもしていられなかった。

 そもそもあの男がたかが一使用人を雇った程度のことなど俺の認知するところでは無かったというのに、まさかそこまで入れ込んでいるというのは全く予想していなかった。

 

 あの時―――――初めて自分の体に大蔵の血が流れていないことを知ったあの時から、俺の心はずっと荒れたままだった。幼い時から周囲より秀でていた自分が大蔵家の当主を継ぐことは間違いないと思っていた。何より、それだけのために俺は生きてきたのだ。

 だがそれも、俺に大蔵の血が流れてないということが分かった時、全てがただのまやかしでしかないと知った。今まで自らが歩んできた道のり全てを否定されたような、そんな感覚であり、許せなかった。

 

 故に俺は大蔵家のすべてを奪うものになった。特に、この俺の人生を狂わせたあの父親まがいのあの男に対しては全てを奪ってやりたかった。だからあの総裁に認められた上で、あの男をマンチェスターの屋敷に閉じ込めていたのだ。

 

 その内にまさかそんなことになっているなどとは本当に思いもしなかったのだが。

 

「…だが、まぁいい。そうなったのならそれすらも奪い取ってやればいいだけだ」

 

 大した問題ではない。あの男のものが増えたのなら、増えた分だけ奪えばいい。自らが心を寄せる哀れな雌犬を。そしてその雌犬が産んだ双子すらも。

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 俺があの雌犬や双子のことを知ってからさらに時が経った。

  

 だが、あの女は俺に靡くことはなかった。

 生活のためにあの男の愛人となったあの女ならすぐにこちらに傾くだろうと思っていたが、マンチェスターの屋敷に残ることを選び続け、俺の提案に首を縦に振ることはなかった。あの男を真に愛しているわけではない、我が母の座を取って代わろうというわけでもない。

 

 ―――あの双子の側を離れたくないという一心だけで。

 

 そこまであの双子のことが大切だというのだろうか。母からは悪い話しか聞かないが、正直あの母の話はあまり信用ならない。

 

 いつか自分の目で確かめるとするか……。

そんなことを考えながら、屋敷の周りを歩いていたその時だった。

 

 屋敷の周りに咲く桜を、一人で見上げている幼い女が目に入った。その女の顔は、まさしく雌犬と瓜二つな顔をしていた。

まず間違いなく、あの双子の片割れだろう。

 

「何をしている」

 

 丁度いい機会だ。この俺が直々に見定めてやろう。

 

「は」

 

 振り返った片割れ――確か、朝日という名前だったか――はこちらを振り返ったとき、ひどく驚いたような顔をしていた。しかしそれも一瞬のことで、すぐに表情を引き締めると頭を下げた。

 

「初めまして、お兄様。はるばるトーキョーより、ようこそいらっしゃいました。使用人の、朝日と申します」

 

「フン」

 

 使用人としての作法などは、見た目の年にしてはできている方だ。

 

「聞かれたことに答えろ、雌犬の子。貴様は何を見ていた」

 

 もう一度聞きなおすと、片割れは少し考えてから、

 

「元型です」

 

 と答えた。

 

「ほう……?」

 

 さらに聞くと、『桜を見ていると、理由はわからないが不思議な、言い表しがたい雄大な気持ちになる。何を表しているかはわからないが、引きつけられるので見ていた』などという風に語った。

 

「なるほど小賢しい……」

 

 存外、頭は回るようだ。それから一言二言また言葉を交わし、その場を後にする。

 

 ――実際に会えば、何かしらの情が涌くのかと考えていた。()()()()()()()()()()()()家族としての何かが。だが、無意味だった。きっともう片方とあっても変わらないだろう。

 

 俺は、あれらを兄弟として、家族としては見れなかった。

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

「――久しいな、雌犬の子よ。とはいえ、片割れとは初対面なわけだが……。クハハッ……!」

 

 ある日、屋敷での用を済ませ帰り支度をしていると、妙に機嫌のいい愚妹に出会った。怯える奴に話を聞くと、どうやらあの双子に助けられたらしい。

 

 (そういえば、まだもう片方とは顔を合わせていなかったな……)

 

 丁度いい機会だと、そのまま双子が住んでいる屋根裏部屋に赴いたのが今となる。

 

「お前とは初めて顔を合わせたことになるな、雌犬の子の片割れよ」

 

「はい。改めてご挨拶させて頂きます、衣遠兄様。ご存じではございましょうが、大蔵遊星と申します」

 

 改めて顔を見ると、やはりというべきか、あの雌犬と顔が瓜二つだった。しかし男女の双子と聞いていたが、この遊星とやらはまた随分と女らしい顔をしていた。男だというのに、髪を伸ばせば姿すらもあの雌犬になるだろう。

 そのまま秘書に教育の成果を聞くと、どうやら遊星の方はオールSらしい。思っていたよりは優秀なようだ。

 

 その後、あの男から奪うために秘書に双子をこちらが引き取れるよう手配させ、そのまま部屋を後にしようとしたときのことだった。

 

「おまえたちの才能には期待して――――ん……。なんだこれは」

 

 部屋の扉に向かう際に、床に落ちていた何かしらの紙を踏みつけてしまう。

そのまま紙を拾いあげ、何とはなしに見てみる。

 

「…………これは」

 

 その紙に描かれていたのは、デザイン画だった。まだ幼い子供が描いたのだろう、線はお世辞にもキレイとは言い難く、色の塗り方もだいぶお粗末なものだった。

 

 だが、俺は目を離せなかった。

 

 画の上手さを抜きにすれば、デザインそのものは今なおデザイナーとしても活動しているこの俺をもってしても、思わず引きつけられてしまうような、良いと言わざるを得ないデザインだった。

 これをあのどちらかが描いたというのか?まだ10にも満たず、そもそもデザイナーとしての勉強など一切受けていないような子供が?

 

「……これを描いたのはどちらだ」

 

「…お、私です」

 

 恐る恐るという感じで応えたのは、遊星の方だった。

 

「描いたのは一枚だけか?」

 

「いえ、服をそのまま模写した物と、自分で考えた服を描いた物がいくつかあります」

 

「全て見せろ」

 

「……はい?」

 

「聞こえなかったのか。全て見せろと言っている」

 

 そのまま遊星が差し出してきたいくつかの紙に目を通す。全てが良いというわけではない。しかしその出来の悪いものでも、もう一息というものであった。

 

 もし、これに本格的なデザインの教育を施せば、素晴らしいデザイナーとなるだろう。しかしこのままいけばこれは将来、俺の覇道の障害となるだろう。ならば、この俺が飼いならせばいい。そうすれば俺の良い道具になる上、あの男への見せしめともなるだろう。

 

 …………それになによりも。

 

 このままこの()()が埋もれてしまうことが。

 

 俺自身、到底許せそうにはなかった。

 

「……これはもらっていくぞ」

 

 そう言い捨て、俺は部屋を後にしたのだった。

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

「急に呼び出してすまなかったな、ジャン」

 

「おいおい、気にすんなよイオン。俺らの仲じゃんか!」

 

 数日後、俺は友人であるジャンと話をするために、レストランに赴いていた。

 

「それに丁度いいタイミングだったしさ」

 

「丁度いい?」

 

「ここ最近ずっと溜まってた仕事片づけてたんだけどさー、いい加減飽きてきて。息抜きにまたどっかの国にでも行こうかと考えてたんだ」

 

「……それで仕事はどのくらい片づけられたんだ?」

 

「2割くらいかな!今日もここに来るために仕事抜け出す時、ケスにすげぇ顔で追いかけられたよ。逃げ切ったけど」

 

 やはり呼ぶべきではなかったかもしれない。こいつのパタンナーや仕事仲間には心底同情する。

 

「それで?今日はなんで俺を呼んだんだ?」

 

「見てもらいたいものがある」

 

 鞄から先日、遊星から回収したいくつかのデザイン画をとりだし、そのままジャンの前に差し出す。

 

「このデザイン画を見てどう思う」

 

「デザイン画?」

 

 ジャンがそれを受け取り、一枚ずつ見始める。

 

「うわ、線とかボロボロだな!なにこれ、誰が描いたん?」

 

「それは無視しろ。それより、服そのもののデザインについてはどう思う?」

 

「デザイン?それは………」

 

 それまではおちゃらけた表情だったが、見進めていく内に表情が変わっていき、最終的には面白いものを見つけた、と言いたげな顔になった。

 

「そのデザイン画を、8歳の、まだデザインの勉強をしていない子供が描いたと言ったらどうする?」

 

「それマジ?」

 

 ジャンが心底驚いたような顔を見せる。

 

「あぁ。やはりお前も才能があると思うか?」

 

「いや~、さすがにこれはあると思うぜ?…俺ほどじゃないけどな!」

 

「誰もお前には勝てないだろうよ」

 

「ハハハ!」

 

 しかし、そうか。ジャンも認める程か……。

 

「ん、どうした?イオン」

 

「ん、あぁ……。いや、なんでもない。」

 

「にしてもこれ、ほんとすごいなぁ。誰が描いたの?」

 

「……俺の弟だ」

 

「マジかよ。将来有望だなぁ。今度会わせてよ、どんな奴なのか凄い気になるしさ」

 

「…………その内、気が向いたら会わせよう」

 

「おいおい、絶対会わせないやつじゃんそれ」

 

 そういってジャンが笑う中、ジャンも認める才能を持つ遊星を、俺は自らのもとで育てることを心の中で決めた。

 

「お前のおかげで煩わしい悩みが一つ消えた。その礼として今日は俺がご馳走しよう。」

 

「おっ、ラッキー。別に俺なんもしてないけどな」

 

「好きなだけ食え」

 

 そうして俺は、久しぶりのジャンとの食事会を楽しんだのだった。

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

 しかし、あの日の愚妹が余計なことを口走ったために、母が俺がデザイナーとして忙しい時期を衝き、あの双子をボーヌへと異動させることを決めてしまった。

 

「余計なことを………」

 

 手を尽くし、何とか遊星の方はこちらが引き取ることができた。だが朝日の方は無理だった。

双子を揃えることでお互いが逃げ出さないための楔として使おうと思ったが……。まぁいい。

 

 そして双子が異動するその日、遊星だけを空港ではなく俺のもとへと送らせた。

 

 

 ――――遊星。俺はやはりお前を家族としては見ることはできない。それは俺が覇道を歩むと決めたその日に捨てたものだからだ。

 

 

 だから精々、俺にとって役に立つよう励め。

 

 

「――――随分と久しいな、我が弟よ」




ぶっちゃけヒロイン必要?と聞きましたが、誰をヒロインにするかはまっっったく決まってません。というか決められません。
なので、いつかまた誰をヒロインにするかアンケートとるかもです。

ちなみに次回も衣遠視点です!なるべく早く投稿できるようがんばります!

楽しんでいただけていたらなによりです!!
感想、指摘、評価などお待ちしております!!

どうしようか悩んでるんですけど、遊星(オリ主)にヒロインは必要?(誰がとかはおいといて)

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