その花が咲く場所   作:紅絹の木

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レオナが来ていた

 

 

 

 骨が見える部分を仮面や篭手で隠し、いつもより地味な格好をして数百メートル上空を飛ぶ。

 

 その日は、大陸へ必要な物を買いに出かけた。

 ダイの新しい服や、勉強道具、ブラスさんが好きそうな本、島では採れない食材などだ。

 

 お金は、島で採掘される命の石というアイテムを売って得た。それと盗賊の討伐で国から報奨を貰っている。

 なので、お金には少し余裕があった。

 

 週一回は訪れる村に、降りる。

 ランカークス村である。朧気なダイ大に関する記憶の中でも、はっきりと覚えている村だった。

 ……ランカークス村のどこが重要ポイントなのかは覚えていないけれどね。

 

 荷物は、ドラクエの袋のようにたくさんアイテムを収納できる、皮の大きめの肩掛けカバンに入れていく。

 すいすい物が入っていく様子に、店主さんたちはいつも興味津々だ。

 いつもは見ているだけだが、今日はとうとう肉屋の女将が声をかけてきた。

 

「ねえ、アンタ。そのカバンどうなっているんだい?」

「錬金術で空間をいじっているんです。たくさん物をいれられるんですよ」

「すごいねえ。アンタ、魔法使いじゃなくて錬金術師だったのかい」

「私は両方できますよ」

 

 <メラ>と言い、指先に小さめの炎を灯す。それを上空に放った。小さな火球は遠くで消えた。

 女将さんも、周りの人も驚いていた。

 私は<メラ>って珍しいのかな、と考えた。

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 夕方前に島へ帰る。

 上空から海面を見れば、大きな船が島の沖に止まっていた。今度は誰が来たのか。

 

 ロモスの騒動の後で、アバンの前に来た人たちと言えば……レオナ!?

 もしかしたら未来のダイのお嫁さんになるかもしれない、あのレオナ姫!?

 

 すぐに会いたくて島へ降りる。降下途中で、海側にダイたちを見つけたので、そちらへ向かった。

 

「ダイ、ブラスさん」

「あ、お母さん!」

 

 ダイとブラスさん。島の魔物たち。知らない女の子。それに複数の大人たち。キラーマシンに乗ってぐったりしている男性。

 ……カオスな状態ね。

 

「ただいま。何かあったのね。皆は無事かな」

「お母さん!大変だったんだよ!今ちょうどじいちゃんがレオナの毒を治したところなんだ!」

 

 ダイが傍に寄ってきて説明してくれる。

 とりあえず頭を撫でた。

 

「毒状態だったのなら、HP……体力減っているんじゃない?回復魔法をかけた方がいいと思うわ」

「してくれる?」

「いいわよ。……あの子ね」

 

 ブラスさんの近くでぐったりと横たわる女の子がいた。私は彼女の隣に座り、ベホイミをかけてあげた。

 女の子は目を覚ました。

 

「ここは……洞窟から出たのね。あなたは?」

「ダイの母よ。体力を回復させたわ。もう大丈夫だと思うけれど、安静にしててね」

「じゃあ、あなた様が神の使い……。ありがとうございます。それにダイくんも、ブラスさんも……ありがとう」

 

 すっと、女の子の目が閉じられる。穏やかな寝息が聞こえてきた。

 

「姫様!」

「騒がないで。寝ているだけです。島にお客様用の建物がありますので、そちらでお休みください。こちらの少女は私が運びますね」

 

 レオナを横抱きで持ち上げる。ちゃんと食べているのか不安になるくらい、軽かった。

 

「護衛の方と、侍女の方はいますか?ついてきてください」

「は、はい!」

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 レオナを島の宿屋に案内した。

 島の宿屋といっても、お客さんはレオナが初めてだ。

 

 宿の二階、見晴らしの良い角部屋にレオナを運ぶ。後を追ってきた侍女と兵士が息を切らしていた。

 

「ドアを開けていただけますか?」

「は、はい」

 

 まだ侍女より体力がある兵士が動き、部屋のドアを開けてくれる。

 

「ありがとう」

 

 私はサッと中に入り、清潔なベッドにレオナを横たえた。

 

「侍女さんはレオナ姫の傍にいてあげてください。兵士の方は外でお待ちください。……女性の支度姿を見てはいけませんから」

「はい」

「そ、そうします」

「私は水と湯を持ってきますね」

「お願いします……」

 

 再び一階に戻る。

 一階にはキッチンがある。そこで湯を沸かし、水を木製のコップにいれた。

 

 

 

 一日たつと、レオナは目を覚ました。

 しっかり朝ごはんを食べて、快調のようだ。私とダイ、ブラスさんとゴメちゃんに挨拶をして、今度こそ信頼できる部下たちと儀式をするため出かけた。

 

 レオナを襲った奴らは皆、捕まった。

 事件が起きてすぐにパプニカへキメラの翼で飛んだ兵士がいたのだ。彼のおかげで、悪い奴らはすぐにパプニカへ連れていかれた。

 

 儀式が終わると、レオナはすぐにパプニカへ帰る事になった。

 事件の詳細を報告する必要があるものね。仕方ないか。

 

 海岸にて。

 ダイとレオナが微笑ましく別れのやり取りをしている。

 それが終わるとレオナは次に私の方を向いた。

 

「ダイくんのお母様、わたくしにどうか加護を授けていただけませんか?」

「……効果は長続きするわけではないですよ?」

「構いません。どうか、お願いいたします」

 

 レオナが膝をつく。

 私は神聖な後光を背負い、清浄な空気をまとった。

 周りがざわめく。それは無視して、レオナの頭に手をかざした。

 

「汝に祝福あれ」

 

 レベル百の私からすれば弱いバフを、レオナにかける。レオナが金色の光を発し、それは彼女の体に吸い込まれるようにして消えた。

 かざした手を下げると、レオナは立ち上がる。

 

「ありがとうございました。力がみなぎるようです」

「それはよかったです。決して大きな力ではありませんが、あなた方の船旅が安全なものである事を願っています」

「感謝します」

 

 レオナが頭を下げた。続いて彼女の国の兵士や侍女、役人たちも頭を深くさげた。

 

 

 

 ――――――

 

 

 

 レオナがいなくなると、ダイは特訓に明け暮れた。

 魔法の特訓にも嫌がらず、私やブラスさんに質問してくる。私は魔法を教えられるほど頭が良いわけではないので、別の方法でダイを支えた。

 

 召喚スキルでよびだした天使と、ダイを戦わせるのだ。

 もちろんお互いに木の棒を持って模擬戦をしてもらう。それから天使側には「ダイを殺さない事」「急所をつく場合は寸止めにする事」を命令すればいいだろう。

 足りなければ後付けすればいい。

 

 

 平和な青空を見る。

 

 ――魔王はすぐそこまで迫っていた。

 

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