ごてん・ざ・ろっく!   作:Miurand

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今話は意外な設定が付与されております。詳細は最後まで読んでからのお楽しみに。少なくともpixivの方ではそれなりに需要があるっぽいので、こちらでも投稿することにしました。温かい目で見守ってくだせぇ…。

 今回より原作未読の方はネタバレにご注意ください。と言っても、今回ネタバレ要素があるのは後書きのみで、本編中には次回からとなります。

※虹夏は幼少期は一軒家に住んでいたとのご指摘を受けたため、該当箇所を修正しました。


第2話 予想外の事態

学校が始まって早くも1週間が経った。悟天は順調に友達を増やし、まだ部活に加入している人も少ないため、放課後にはよく遊びに行くようになっていた。早くも学生生活が充実し始めた悟天は、この学校を選んで正解だと心の底から思った。勉強も母との約束通り自習は欠かしていない。その為、悟飯ほどではなくとも勉強できるため、授業終了後にクラスメイトに頼られることもしばしばあった。

 

「(調子に乗ってごめんなさい……。こんなキラキラした陽キャが私のことを好きになるはずがありませんよね……。誠に大変申し訳ございませんでした………)」

 

一方、後藤ひとりは勝手に勘違いして勝手にダメージを受けていた。詳しいことは前話に記載されてるので要点だけを纏めると、悟天に優しくされたひとりは、悟天が自分のことが好きなのではないかと勝手に勘違いしていたのだ。しかし、自分よりも男友達を中心とした人達を優先する様を見て勘違いだと気づいたのだ。きっと黒歴史として彼女の心に残るに違いない。

 

 

授業中では………。

 

「くかぁ〜……………」

 

「(ね、寝てる!?)」

 

遠慮なく寝ていた。別に睡眠不足でもないし、特別疲れているわけでもないはずなのだが、悟天は授業が退屈だと感じていつの間にか寝落ちしてしまったらしい。隣のひとりちゃんはちゃんとノートを取っているというのに…。

 

 

 

「ではここを……後藤」

 

「あっ、はい(やばいやばい…!!答えが分からない……!!間違えたら処刑される……?!)」

※されないです

 

「ちょいちょい」

 

しかし、授業中に指されると、悟天はさりげなくフォローする。これにひとりは何度か救われていた。普段は寝てばかりなくせにどうして勉強ができるのか、後藤ひとりは不思議でならなかった。

 

「さ、さっきはありがとうございます……」

 

「いやいや、気にしないで!僕も君のノート写させてもらってるし」

 

そして、悟天はセコいことに、ひとりのノートを丸写ししていた。悟天の友達には真面目にノートを取っている人がいないため、これに関しては律儀にノートを取っているひとりにしか頼めなかったというわけである。最初にそのことについて聞かされたひとりは…。

 

「(もしかして、私って都合のいい女として見られてる……!?)」

 

()()()()()()()()()()、自分が必要とされていることで承認欲求が満たされ、快く悟天の頼みを聞いた。しかしそのお礼として、さっきのようにひとりが指名された場合は手助けしているというわけである。

 

 

 

そして昼休み。ひとりは居心地の悪さから謎スペース(本人命名)に避難して昼食を取っているのだが、隣席の悟天はそんなことを知る由もなく友人達と飯を共にしていた。

 

「うわっ…!お前またそんなに食うのかよ…!!?」

 

「大食い大会で優勝できそうじゃね?」

 

「これくらい食べないと満足できなくてさぁ……」

 

悟天の大食らいっぷりは数日間は驚かれたものの、1週間も経つと流石に慣れたのか、さも特異なことではないかのようだった。

 

「というか、お前ご…なんとかさんとよく喋ってるよな」

 

「あー。後藤さんのこと?そうなの?」

 

「そうだよ。突然笑い出したり死んだり溶けたり変形したりするのに、お前ってばそこまで驚く様子もなく対応するじゃん」

 

「えっ?都会の人ってみんなあれができるんじゃないの?」

 

「「「「できるわけねえだろッッ!!!?」」」」

 

1週間も経てば、ひとりがよく死んだり変形したり奇行に走る様を嫌でも見ることになるのだが、不幸中の幸いというべきか、悟天は幼少期から普通ではあり得ない人生を送っていた。

 

当然のように雲の上に乗って通学する(悟飯)に、黒髪から金髪に変化する自分。幼馴染(トランクス)との戦いごっこ。死んだはずの父親(悟空)の帰還。そして魔人ブウとの対峙。

 

こんな人生を送っているせいなのか、はたまた田舎から出てきたばかりだからなのかは分からないが、悟天の感覚は一般人のそれとはかなり離れていた。

 

「あっ、やっぱりできないんだ。おかしいとは思ってたんだけど………」

 

「というか、よく普通に接することできるよね。怖くないの?」

 

「怖い?むしろ面白くない?」

 

そうは言ったものの、悟天はひとりが少しずつ心配になっていた。まず挨拶するだけでも未だに噛むし、なんなら死ぬ時もある。そして授業中も突然気絶するように寝込むこともあるし、体育では死んだ魚のような目をして腐っていたり…………。

 

全部話すと長くなるので一言で纏めると、彼女が一般社会において生きていけるのかどうか不安になってしまっているのだ。

 

「(後藤さん。真顔なら可愛いんだけどなぁ………)」

 

最初こそ『美人で可愛い子』という評価だったのだが、度重なる奇行により『面白い子』認定されてしまっていた。最初の印象をうまく維持できていれば、後藤ひとりは晴れてリア充になれていたかもしれない。

 

「……(そういえば、後藤さんが他の人と話しているの見たことないなぁ…)」

 

正確には、話しかけようとした人は何人かいたのだが、話しかけると死んだり物理的に弾けたり奇行に走ったりすることもあるため、怖がられて近づかれてないのだが、本人は自覚がない為何故か話しかけられないという認識なのだ。

 

「……(1人が好きって感じでもなさそうだし…。よし!ここは隣のよしみとして交流を深めてみよう!)ねえ、後藤さんって何か趣味ないの?僕はよくゲームで遊ぶんだけど……」

 

「えっ、あっ、わ、私は…………」

 

頑張れ後藤さん!と心の中でエールを送りつつ返事を待つ。相手と仲良くなるためには、相手のことを知る必要がある。

 

「(こ、これはもしかして……!?この前ネットで調べた時に確かに見た…!!『異性の相手のことを知りたがる場合は脈アリ』だと…!!もしや、私の勘違いではなくて本当に……!!?)」

 

そしてまたしても後藤ひとりは勘違いをしていた。普段は自虐的な癖に、偶に自信過剰になるところがあるのは何故なのだろうか。

 

「………(あれ?なんか恥ずかしそうにしてる…?別に変な話題じゃないと思うんだけどなぁ……)」

 

「わ、私はよくギターを弾いてまして……。1日に6時間は練習してます」

 

「ろ、6時間!!?」

 

1日に6時間。この言葉を聞いて悟天は心底驚いた。というのも、悟天にはそこまで没頭できる趣味などないからだ。一応家では悟飯がずっと勉強している姿を見たことはあるものの、あれは将来の夢を叶えるためという意味合いが強い。あくまで趣味の範囲内でそこまで集中できるとは凄いなと、悟天はひとりに感心していた。

 

「そんなにギター弾くってことは、もしかして相当上手いんじゃないの?いつもどんな曲弾いてるの?」

 

「あっ、ここ最近のヒット曲は大体……(なんか食いついてきてる…?)」

 

「えっ?よく分からないけど、それってかなり凄いことなんじゃ……?」

 

「あっ、えへへ、いや〜、そんなことはないですよ〜」

 

「(あっ、褒めるとすぐにデレデレするんだ………)」

 

この時、悟天はひとりと会話する時の秘訣が分かったような気がした。円滑に会話するなら、とにかくひとりのことを褒めれば途中で死んだり液化したりしないのではないか?そう考えた。

 

「じゃあ今度聞かせてよ!後藤さんがどれくらい上手いのか興味あるし!」

 

「………ヴェ!!!?」

 

悟天は別に意地悪しようとしているわけではない。同級生がギターを弾けるという物珍しさから興味が湧いただけに過ぎない。だが、そんなことは後藤ひとりには関係ない。今までひとりは家族以外にその技術を披露したことはない。故に……。

 

「(えっ?これ、もしかして、下手くそだったら処刑されるのでは…!?『ぬか喜びさせたで賞』で極刑判決が出てしまうのでは……!?)」

 

悟天という人間を知っている人ならばそんなことするわけないのは最早常識だろうが、後藤ひとりにはそんなことは全く関係ない。人前でギターを披露するのは初めてのため、コミュ障で友達もいたことがない彼女にとってはハードルが高すぎた。

 

「いや〜、同級生でしかも女の子がカッコよくギターを弾けたらいいよねー。すっごくカッコいいと思う!普段影の薄い子が実はプロ級のギタリストとかだったらそれもう!!なんか厨二心をくすぐられるというかさ!」

 

「(あっ、この人、めっちゃ私を褒めてくれる気がする……!!!)」

 

さりげなく毒が吐かれていたことに幸い気づいていないようだった。だが悟天の言葉に悪意はない。ただ事実を述べているに過ぎないのだ(無慈悲)。

 

「わ、私如きの演奏でよろしければ、明日にでも……!!」

 

「本当!?楽しみにしてるよ!!」

 

こんな感じでひとりと約束し、明日には演奏を聞けることになった。

 

「(それにしても、まさか後藤さんがギター弾けるとは意外だったなぁ…)」

 

時は進み放課後、悟天は友人達と下北沢で遊ぶ予定だったのだが……。

 

『すまん…!部活があって…』

『俺はバイトが……』

『家の用事が…………』

『病院に行かなきゃ………』

 

と、こんな感じで不幸にもみんな用事があって行けなくなってしまったようだ。しかし一人で下北沢をうろつくわけではない。

 

「よっ、待たせたな悟天」

 

「トランクス君久しぶり〜!」

 

悟天の相棒にして幼馴染のトランクスとぶらつくことにした。トランクスは悟天のように日本の学校に通っているわけではなく、マヤリト王国の『ブルースターハイスクール』というところに通っている。

 

「母さんから聞いたぞ。本当にこっちの高校に通うことにしたんだな」

 

「うん。なんかこっちの方が楽しそうだし!」

 

「それについては同感だな。この国は色々娯楽が充実してるらしいじゃん。毎日ここに来れるお前が羨ましいぜ」

 

「そう思うならトランクス君もこっちの学校に転校してくれば?」

 

「それがそう簡単にはいかないんだよ」

 

「あ〜。トランクス君って確か次期社長だもんね」

 

「俺は別に社長なんてやりたくないんだけどな」

 

トランクスは金持ちの家に生まれたからなのかは分からないが、お金や地位に執着はなく、ただ自由気ままに生きたいと思っているようだ。

 

「大体、身内に会社を継がせるって発想が古いよな。普通に優秀な部下とかに任せればいいじゃねえか」

 

「それだけブルマさんはトランクス君のことを信用してるんじゃないの?それに社長になればモテモテになれるよ〜?」

 

「お前ってホントにマセたよな………。それに俺はモテなくていい」

 

「あ〜。トランクス君にはマイちゃんがいるもんね」

 

「ま、まあな」

 

幼馴染と言えども大きくなると疎遠になることは珍しくないが、こんな感じで成長した今でもトランクスとの仲は相変わらず良好だった。ちなみにトランクスは相変わらずにマイちゃんにご執心の模様。

 

「あれ?でももし社長になれたらマイちゃんにも効果があるんじゃない?」

 

「それ母さんにも言われた………」

 

「ところで最近はどうなの?うまくいってる?」

 

「それがマイちゃん相変わらずドライな反応で……。この前映画に誘ったけど興味ないって…………」

 

「あはは。これは厳しい戦いになりそうだね〜」

 

二人はしばらく雑談しつつも、ゲーム屋や本屋、ゲームセンターなど色々な店を回って楽しんでいた。

 

「俺そろそろ帰らないといけないからまたな」

 

「うん!また今度ね〜!」

 

流石に大勢の目に触れる場所では舞空術を使わないようにしているのか、そのままどこかに向かって歩き出していくトランクス。恐らくひと気のないところに移動してから飛ぶつもりだろう。

 

「………さて、僕もそろそろ帰ろうかな〜。てかよくよく考えたらトランクス君と途中まで方向同じなんだから一緒に帰ればよかったなぁ…………」

 

しかし、まあいいかと悟天はもうしばらく一人で街を散策してみることにした。悟天の住むマヤリト王国の都会(西の都)とは全然違う景色に新鮮味を感じており、しばらく眺めていても不思議と飽きなかった。

 

「(そういえばバイトも探さないとな〜。一応この辺じゃなくても全然いいんだけど、こっちで働いた方が楽なんだよね〜。通貨変えなくていいから便利だし)」

 

補足しておくと、悟天が自分で進学先を決める時の条件としてもう一つ付与されているものがあった。それは、お小遣いは自分で稼ぐこと。しかしガチで勉強したくない悟天にとっては別に大した問題ではなかった。

 

「(まあ、まだ高校生活は始まったばかりだし、そんな焦る必要もないか。ゆっくり考えよっと)」

 

ドンっ

 

「わっ!?」

 

「ご、ごめんなさい!!」

 

突然背中に衝撃を感じたと思いきや、女子高生と思わしき人が悟天にぶつかってきたらしい。こちらには見向きもせずに一言だけ謝ると、慌ててその場を走り去っていった。

 

「なんかあの子凄く急いでいたような……。大丈夫かな…?って、これは…?」

 

どうやら先程の女子高生が悟天にぶつかった際にハンカチを落としたらしい。それを拾ってさっきの女子高生を追いかけようとした時……。

 

ドカン……!!

 

「うぎゃあ…!!?」

 

今度は先程よりもさらに強い衝撃を受けてしまった。悟天は油断していた為にその場で転倒してしまった。

 

「いちち〜……。ちょっと気を抜きすぎちゃったな〜……。にしてもなんだよあいつぅ…!!」

 

今度は大柄な男にぶつかられたようだ。見た感じ恐らく男子高校生だ。身長は180cmはあるだろうか?ラグビーでもやっていそうなガッシリした体格だった。その男もまた全力で走っているようだ。先程の女子高生と同じ方向に。

 

「………ん?同じ方向?ま、まさかね…」

 

何か嫌な予感がした悟天は2人が走り去っていった方向に向けて、一般人が違和感を感じない速度の範囲内で全速力を出して追いかけていく。少しすると女の子は路地裏に逃げ、男もまた路地裏に入った。この瞬間、悟天の嫌な予感は確信に変わった。

 

 

「ねえ、なんで逃げるんだよ。僕は君をこんなにも想っているのに……!!」

 

「い、いや〜。そんなこと言われても君のことは全然知らないっていうか……」

 

「じゃ、じゃあ付き合ってから僕のことを知ればいいじゃん!ね?ダメかな?」

 

「だから私は今そんなものに興味はないんだって!」

 

「えっ?それって本当のことかな?こんなひと気のないところに僕を連れてくるなんて、もしかしてさ………」

 

「君が勝手についてきただけでしょ!?」

 

実を言うとこの女子高生はストーカー被害に遭っていた。つい最近告白されたがそれをやんわりと断った。しかし相手の男子は諦め切れずにこの少女にしつこく付き纏っていたのだ。

 

「何度言っても私の気持ちは変わらないんだって!」

 

「そんなこと言わずに一回だけでいいから……ね?」

 

「最早私の身体目当てじゃんその発言!!!」

 

 

 

 

 

 

「うぐっ……!!!?」

 

「………えっ?」

 

先程まで少女にしつこく迫っていた男は地面にのめり込むように倒れていた。いや、倒されていたと言うべきだろうか。多分その表現の方が正しい。

 

「よかった。なんとか追いついた。はいこれ、君のでしょ?」

 

それをやった張本人、悟天はそれを気にする様子もなく落としたハンカチを返した。少女は混乱しながらも悟天にお礼を述べた。

 

「あっ、あの………君って……」

 

「ってぇなこん畜生…!!!」

 

「う、後ろ!!!!」

 

起き上がった男が後ろから悟天に殴りかかってきた。死角から繰り出された攻撃を避けることはできない。少女は悟天に警告するが、もう間に合わないと目を瞑ろうとしたその時だった。

 

「よっ」

 

「なっ……!!?」

 

悟天は男の拳が当たるスレスレで身体を横に逸らした。と同時に……。

 

「はっ!!」

 

「がっ……!!!!!」

 

背中に蹴りを入れて相手を転倒させた。

 

「君、しつこい男って嫌われやすいから気をつけた方がいいよ?女の子には優しくした方がモテるんだよ」

 

「なっ、なめやがって……!!!」

 

男はよろよろ立ち上がって先程と同じようにパンチを繰り出すも、避けられるか受け止められるだけ。

 

「しつこいな〜……。せいっ」

 

「あっ………」

 

攻撃を避けると同時に後ろに回り込み、一般人には視認できない速度の手刀を放って相手を気絶させた。これでひと安心だ。

 

「あ、あの………。大丈夫?」

 

「僕は全然平気だよ。君こそ大丈夫?」

 

「わ、私は大丈夫。ありがとう……」

 

「どういたしまして。この人ってもしかしてストーカーってやつかな?」

 

「た、多分そう」

 

「そっか。気をつけた方がいいよ?君みたいに可愛い子ってストーカー被害に遭いやすいみたいだから。早いところここから離れた方がいいよ」

 

悟天はこのまま少女が立ち去ってくれれば、そのまま舞空術で帰宅することができるので少女を帰そうとする。しかし目の前の少女はなかなかその場から動こうとしなかった。

 

「………?どうしたの?早く帰った方がいいよ?」

 

「…………ねえ。君の名前は…?」

 

「僕?僕は孫悟天。秀華高校に通ってるんだ。そういう君は?」

 

「………伊地知虹夏」

 

「伊地知虹夏………ね。いい名前だね!君はどこに通って………。って、さっきあんな目にあったのにこんなこと聞くのは配慮に欠けるね。それじゃあ…!」

 

「ま、待って!!!」

 

一向に帰る気配がない虹夏を見て、悟天はその場を退散して別のひと気のない場所に移動してから帰宅しようと思ったのだが、手を少女に掴まれてしまった。

 

「あ、あの〜…………」

 

「ちょ、ちょっと付いてきてくれない?」

 

「…………へっ?」

 

 

 

 

 

悟天は虹夏に付いていく。たださっきから彼女は自分に話しかけてこない。ただこちらをチラチラと見ては、目が合うたびに目線を逸らしていた。

 

「(これはもしや………)」

 

ひょっとして、ラブコメでよくある、『女の子を助けたから好意を持たれたのでは!?』と、悟天は勝手に納得していた。普通………というか、王道的な展開ならば、悟天は何の下心もなく女の子を助けて好意を持たれ、しかし悟天は鈍感だから少女は苦労し……。なんて展開になるはずなのだが、残念ながら(?)悟天はそんな典型的な鈍感系主人公ではなかった。さっき虹夏を助けた時は確かに女の子が心配だからという理由もあったが、あわよくば…

『この子とお近づきになれるかも…?』

なんて下心も抱えていたのも事実。7歳の頃のあの天真爛漫な悟天は見る影もなくなっていた。悟天の心情を知ったら、チチは『悟天ちゃんがチャラ男になっちまっただ〜!!』と泣き叫んでしまいそうである。

 

「(まあ、さっきの僕は確かにカッコよかったもんね〜。きっと彼女の目には僕が『偶然助けにきてくれたヒーロー』って感じの目で見えているに違いない!!)」

 

「…………ねぇ?」

 

「……ん?どうしたの、伊地知さん?」

 

「…………なんでもない」

 

「(あれ?何故か不機嫌になってる?)」

 

虹夏は何故か頬を膨らませながら不貞腐れていた。悟天には全く心当たりがない模様。それもそのはず、悟天は一応彼女を助けただけなので、不機嫌にさせる要素はなかったはずだ。

 

「(ひょっとして僕の心を読まれた…?いやいやそんなまさか……。超能力者でもあるまいし…………)」

 

「私は今お姉ちゃんと一緒に住んでるんだ。お姉ちゃんは星に歌って書いて星歌っていうんだけど、実は私たちが住んでるマンションの地下でライブハウスを経営しているんだ!」

 

「へえ、そうなんだ〜」

 

しかしさっきの不機嫌な様子が嘘のようになくなり、虹夏は笑顔になって悟天に話しかけた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()分からないが、悟天は特に気にすることもなかった。

 

「でも、そのライブハウスは『スターリー』って言うんだけど、オープンしたてだから人手が足りないんだよ。特に今は従業員が女の人しかいないから重い物を持つのが大変で…………」

 

「へぇ。いつオープンしたの?」

 

「今年度に入ってからかな?」

 

「ホントにオープンしたばかりなんだね……」

 

「だからさ悟天君。もしよければうちでバイトしてくれないかな?余裕があればでいいんだよ!!」

 

「……(あれ?おかしいなぁ…。そこは『一目惚れしました!私と付き合ってください!』とかじゃないんだ……)」

 

悟天もまた変な期待をして勝手に落ち込んでいた。この悟天は後藤ひとりと気が合いそうである。

 

「うーん……。取り敢えずそのライブハウスに行ってみてからでもいいかな?」

 

「うん!それでも全然大丈夫!」

 

そんなこんなでライブハウスまで来た悟天。地下に下る階段を降りて中に入ると、そこにはすでに従業員らしき人が何人かいた。虹夏の言う通り全員女性だった。

 

「お帰り虹夏。って、その男どうした?」

 

「ただいまお姉ちゃん!この子は孫悟天君!今日からここで働いてくれるんだって!!」

 

「えっ?いやいや、まだ決めてないよ!?取り敢えず店内を見てからにするって言ったよ!!?」

 

「そうだぞ虹夏。そもそもまずは面接をだな………」

 

「そんな細かいこと気にしなくてもいいじゃん!!悟天君は私がよく知る人なんだし!!信用できるって!!」

 

「……………えっ?」

 

おかしい。悟天は虹夏によく知られるほど関わっていないはずである。事実先程ストーカーから助けたことをきっかけに初めて出会ったはずだ。

 

「虹夏のよく知る………?……………ちょっと待て。お前何歳だ?」

 

「僕?15歳ですけど…………」

 

「年の離れた兄はいるか?彼女持ちの」

 

「ええ、彼女というかお嫁さんはいますね………」

 

「……………もしかして、出身地はマヤリト王国のパオズ山ってところか?」

 

「えっ?なんでそんなに知ってるんですか?怖っ…………」

 

店長こと虹夏の姉の星歌に自分の住所がなぜか知られていることに対して軽く恐怖を感じた。

 

「ストーカーを見るような目で見るなよ。虹夏のやつ、お前にずっと会いたがってたんだぞ」

 

「………………はい?」

 

ずっと会いたがってた?今日初めて会ったのにどういうことだろうか?過去に彼女と会ったことなんて…………。

 

「…………(あ、あれ?そういえば昔、兄ちゃんがビーデルさんとデートばかりして構ってくれなくなった時に家出っぽいことをした時に………)」

 

 

 

 

 

『君のお兄ちゃん、彼女さんに夢中なの?』

 

『そうなんだよ。今までは勉強していない時は僕と遊んでくれたのに、今はビーデルさんとデートばっかり……』

 

『…………私と同じだね。私のお姉ちゃんもバンドに夢中で全然遊んでくれないの…………。仲間だね…』

 

『うん………』

 

『私は虹夏。君の名前は?』

 

『僕は悟天………』

 

『悟天君か…。ねえ、せっかくだし2人で遊ぼうよ!!』

 

『…! うん!!』

 

 

 

 

 

 

「あああッッ!!!!君、あの虹夏ちゃんだったのかぁ!!!!」

 

「………もしかして悟天君、今まで私のこと忘れてたの?」

 

「いや、あの〜……。わ、忘れてたわけじゃなくて………」

 

「〜ッッ……!!悟天君の馬鹿、アホ、馬鹿!!もう知らない!!!」

 

「あっ、ちょ……!!!」

 

忘れられていたことがショックだったのか、虹夏は外に飛び出してしまった。正確には忘れていたわけではないのだが、虹夏がそう捉えてしまったのだ。

 

「………悟天」

 

「て、店長さん……。これは………」

 

「いいから追いかけろ」

 

「でも………」

 

追いかけろ

 

「…………しょ、承知致しました…」

 

悟天は星歌の威圧に負けて虹夏を追いかけることにした。幸い、虹夏の気は既に記憶したので、距離が近ければ彼女がどこにいるかは分かる。

 

なんと、虹夏は悟天の幼馴染だったらしい。星歌の言動からして、虹夏と悟天は長らく会っていなかったようだ。はたして、悟天は虹夏の機嫌を直すことはできるのだろうか……?

 




 あー、はい。何故か虹夏と悟天が幼馴染だったという設定が爆誕してますね。なんでこんな設定が生まれたかと言いますとね、先日虹夏の誕生日があったじゃないですか。あの日にあの虹夏と星歌さんの過去話が無料公開されてたので、原作コミック持ってるけどもう一度見るかぁって見直したんですよ。そしたら虹夏は9歳で星歌が21歳って設定を見てしまって……閃いてしまったのですよ。

 別にぼっちちゃん経由で初対面でも良かったけど、せっかくなら少し変化球にしたいなぁと考えた結果こうなりました。
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