あまり文は上手くありませんが、楽しんでもらえると幸いです。
それでは、ご覧下さい。
時刻は二十一時を回っていた頃。
お風呂や夕食を済ませ、後はベッドに入って寝るだけの優だったが、そんな時に玄関のインターホンが鳴った。
「……誰だ、こんな時間に……はい」
そんな事をぼやきながら、彼は玄関の鍵を開けてドアを開く。そして玄関の前に待っていたのは、白いパーカーに、ショートパンツに黒タイツを履いた姿の響だった。
「……響?」
「……こんな時間に、ごめん」
響は少し気まずい表情を見せる。こんな夜遅くに家に押しかけて来たからだろう。
「あ、あのね……その……」
彼女は何か話そうとするが、上手く話せずどもってしまうような時間が少し続いた。
そして、優は彼女が少し大きめのスポーツバッグを両手に抱えていたのを見て、察した。
「……泊まりに来たの?」
彼がそう言うと響は申し訳なさそうに頷いた。
「いいよ、とりあえず中に入ろう? 他の人に見られてたら何か言われるかもしれないし」
「……ありがとう」
響は、彼の家へと入った。そして優は部屋の方に振り向いて歩いていく。
「理由……聞かないんだね」
そんな彼の背中を見つめながら、響は彼が理由を聞かない事に少し疑問を抱いていた。
「……まあ、響がこんな時間に俺の家に来るなんて、どうせ寂しかったとか……そういう事だと思ってるしね」
お見通しなんだね……と響は心の中で思いながら、彼が自分の事を理解している事に喜んでいた。
そして、靴を脱いだ彼女は少し急ぎ足で彼の元へ駆け寄り、彼の腰の部分に両腕を回して背中に顔を埋めるように抱き締めた。
そんな突然の事に、彼も驚きを隠せなかった。
「……今日ね、ツヴァイウィングがテレビに映ったの」
ツヴァイウィング……その言葉を聞いた時、彼の表情は少しだけ険しくなった。
そして……彼女は自分から彼に会いたがった理由を話し始めた。
「普段ならなんとも思わないのに……今日、その二人の事を見てたら昔の事を思い出して、胸が苦しくなっていったの。ひとりぼっちになって……誰も助けてくれなかった頃の事を」
彼女の抱き締める力が強くなる。優もまた、彼女の過去を知っているため、何も言わなかった。
「そんな事を思い出したら……優に会いたくなったの。だって優は……私を助けてくれた大切な人だったから。優の傍にいるとすごく安心できるの……だから来ちゃった……すごく迷惑だよね?」
「……迷惑な訳ないだろ。俺は響の傍に居るって約束したんだから。だから、響は何も気にしなくていいんだ。甘えたくなったり、一緒に居たいと思ったら……遠慮なく言っていいんだよ」
彼は腰に回っていた彼女の手を優しく握った。
そして響は、彼の優しさに……気持ちが昂ってしまっていた。
(……やっぱり優しいな、優は)
「ありがとう……ねぇ、優。こっち振り向いてくれない?」
「……? どうした……!?」
そう言って響は、こちらに振り向いてくれた彼の頬を両手で押さえて……キスをした。
「……ん、ちゅ……」
舌は入れずに、互いの唇だけを重ねた……響にとっては優しいキス。
「ありがとう……やっぱり優は私にとってのヒーローだよ」
「……っ!」
そう言って微笑む彼女の顔は正しく一人の乙女としての表情であり、そんな姿を見た彼は珍しく、顔を赤く染めてしまった。
────
それから少しした後、お風呂を借りていた響がパジャマ姿の状態で彼の部屋に入ってきた。
「……お風呂上がったから……もう、寝る?」
「そうするか」
響は一直線に彼のベッドへと向かい、潜り込んだ。そして、横で立っている彼をじっと見つめる。
「……一緒に寝よう? そうじゃないと、ここに来た意味が無いから」
「……あ、ああ」
響に誘われてしまったので、彼もベッドに入る。その様子はどこか動揺していた。
しかし、一人用のベッドは二人が寝るのにはだいぶ厳しく、そのままでは優の身体がベッドからはみ出る形になってしまう。
「流石に狭いな……」
優がそう言うと、響は何も言わずに彼の身体に密着した。
「……響?」
「……こうすれば、スペース作れるよね?」
響はそう言って微笑んだ。そして優は、彼女のその表情に胸がザワついた。
「……やっぱり、優の傍は安心する」
「なら……良かった」
(普段なら、なんともないのに……なんでこんなにドキドキしてるんだ……?)
彼女の顔を見つめているとドキドキが治まらない……そう思った彼は、天井を見上げた。
「……どうして私から目を逸らすの?」
響は彼が顔を逸らした事を捨てられたかのように感じてしまい、思わず辛そうな声を出してしまう。
「ち、違う……それはなんというかその……ごめん」
慌てた優は彼女を落ち着かせるためにそちらに振り向き、頭を優しく撫でてあげた。
それでもまだ落ち着けなかったのか、響は彼の胸に顔を埋めた。その時、彼の胸の鼓動が高鳴っている事に気づいた。
「……あっ」
それに思わず、彼女は優を見つめてしまった。
頬を赤くして、どこか気まずい表情をしている彼の顔はいつも一緒にいる彼女ですら全く見ないものだった。
「……優、顔が赤くなってる。それって……そういうこと、だよね?」
「……多分、そういう事だと思う」
お互い深くは話さない、もどかしい雰囲気が漂い始めた。
そしてそこから沈黙の時間が続いたが、状況を発展させたのは響の方からだった。
「……ねぇ、優。私はね、優の事が大好きだよ。この世界の誰よりも愛してるかも」
響は彼に抱き着いていた腕を離し、今度はお互いの手を絡めるように握り、彼の上にのしかかった。その時の響はとても高揚とした表情を浮かべていた。
「……だからね、優の一番も私じゃなきゃ……嫌だよ?」
そして、彼女は自分の唇で彼の唇を塞いだ。
彼の家に来たばかりの時にした優しいものではない、舌を深く絡ませたそれは、まるで自分以外の他の誰にも奪わせないという意志を彼は感じた。
そして優は、彼女の行為を拒む事はしなかった。
彼もまた、響に対する気持ちをなんとなく理解してしまったからだ。