魔法少女リリカルなのはStrikerS WitH 作:八神煌斗
「あ~……何にもねぇな」
朝練も終わったし、なんとなく料理がしたい気分だったんだけど……何も無い。
まぁ、当然か。
こっち来てから買い物にも行ってないし、いつも食堂だったもんなぁ。
仕方ない、はや姉からでも調達するか。
確か今日は仕事が少ないって言ってたし、部屋にでも居るだろ。
「はや姉」
『ウィズ? どないしたん?』
とりあえず行って無駄足になるのも嫌だから通信を開く。
「食材ある?」
『食材? あぁ、料理するんか?』
「それで冷蔵庫が空っぽだったんだな、これが」
『はぁ。ちょっと待ち』
やっぱり部屋に居たみたいで、通信モニターからはや姉はフェードアウトする。
『一応有るけど、本格的なものは無理そうやなぁ』
モニターから声だけが聞こえてくる。
多分冷蔵庫の前から声を出してるんだろう。
「大丈夫。俺本格的なもんなんて作れないから」
『そういえばそうやったな』
そうなんだよな。
つまみとか軽食程度のモノならそれなりにバリエーション有るんだけど。
味は自他共に認める普通さ。
はや姉の弟子一号なのにどうにも上手くならなかったんだよな。
ま、不味いよりはマシだって割り切ってる。
「じゃぁさ、今から取りに行っても良いかな?」
『ん~。ウィズはこの後暇か?』
「え? まぁ、午後はデスクワークの予定だから暇って言ったら暇だけど……」
午後の訓練は基本的にあるんだが、今日みたいにデスクワークの時もある。
新人たちはティアナを除いて苦手みたいで結構遅くまで、俺はそんなに掛からない。
書類とかは、出来るだけその日の内に終わらせてるからな。
あれだ。夏休みの宿題を七月中に終わらせるタイプ。
『なら折角やし一緒にお昼作らへん?』
お、予想外。
勿論、俺には断る理由も無いし。
「うん、いいよ。はや姉の部屋?」
『そやな。待ってるわ』
それで通信終わり。
それにしても久しぶりだな。はや姉と料理するの。
二年振りに会うんだから当然っていったら当然だけど。
《それにしても相棒、とうとうヘタレ卒業ですね》
「なんで?」
ヘタレ卒業って言ってもらえるのは嬉しいけど、理由も無く言われると気持ち悪い。
《え? だって今からはやてさんの部屋に行くんですよね?》
「あぁ、もしかして女性の部屋に行くって意味か?」
今更だな。
子供の頃は一緒に寝てたんだし。
思い出したら少し恥ずかしくなってきた……。
《いえ、その事ではありません》
「あん?じゃぁ何だよ?」
《はぁ、よく聞いてくださいよ。はやてさんの部屋は女性寮に有るんですよ?》
「…………あ」
しまったああぁぁぁああ!!
《忘れてただけですか……》
「ちょ、俺どうすればいい!?」
《逝けば良いと思います》
「発音おかしくなかったか?」
《気のせいでしょう》
さて、何だかんだで今俺は女子寮の一歩手前まで来てるんだが……。
どうする、俺?
はや姉の部屋の場所は解ってるから迷うとか、そういう心配はいらない。
だけどそれなりに奥に有るんだよなぁ……。
ぶっちゃけ男子が女子寮に入っちゃいけない、なんてルールは無いけど……。
暗黙のルールになってるんだよ。
当たり前って言ったら当たり前だけどな。
《ほら、何時までここに居るつもりですか?逆に怪しく見えますよ。後ろ》
「あん?」
言われたとおり振り向いてみるとそこに数人の女性局員が居た。
こっちも向いて何かヒソヒソ話してたんだが、俺と目が合うと走り去ってしまった。
《神崎ウィズ大暴落。と言ったところでしょうか》
「やっぱりか……」
何時ごろから見られてたのかは解らねぇけど、あの様子じゃ結構見られてただろうな。
『あ、ウィズ? 今どこに居るん?』
「はや姉……」
気がついたらはや姉から通信が開いていた。
俺がモタモタしてるから心配にでもなったんだろうな。
『ん? 何や元気ないけど何かあったか?』
「……なんでもないです」
うん、忘れるのが一番だ
忘れよう。
そして俺ははや姉に何でも無い事を伝えると、女子寮へと突入した。
《周辺に敵兵の様子はありません》
「了解」
隠れていた物陰から跳びだし、中腰で一気に走りきる。
足音なんてもっての外、監視カメラがある所には壁に張り付き、映らないようにする。
「(チャフとかあったら便利なのにな)」
《(使ったら本当にテロリストになりますよ?)》
「(ですよね)」
そういえばチャフって電子機器を少しの間使えなくするヤツだったよな。
デバイスとかには有効なんだろうか?
まぁ、あれは敵味方関係無く効果でるから本末転倒か。
そもそもAMFあれば事足りるしな。
「っ!」
話声が聞こえてきたので隠れようと辺りを見る。
が、辺りには適当な場所が無い。
どうする?声すでに足音も聞こえてきている。
仕方ない、最終手段だ。
俺は廊下の隅でダンボールをかぶった。
何処にあったのかとか気にしちゃ駄目だ。
因みに俺の格好は体育座り。
《(良くもまぁ、そこまでなり切れるものですね)》
「(お前も敵兵とか言ってただろ)」
しかもバンダナまで甲冑の構成情報を変換して作りやがったし。
後でまた元に戻しておかねぇとな。
さて、人の気配も無くなった所でダンボールから這い出る。
何だか急に気配とか感じるのに敏感になってる気がするけど気にしない気にしない。
どうせ今だけだろうし。
目標地点までは後100ちょい、だな。
この調子で行けば……。
「お前、何やってんだ?」
「っ!?」
気を抜いたまさにその瞬間、後ろから声をかけられ、あろう事か左肩に手を置かれた。
見つかった!?
こういうときは……。
後ろを振り向くと同時に左肩にあった手首を掴む。
「へ?」
手首を掴んだまま、相手の後ろに回りこみ腕を相手の背中で締め上げる。
「いでででで!!?」
最後にそのまま押し倒し、上に乗る。
これで相手には顔を見られず、こちらが優位に立てる。
《相棒。すばらしい動きでしたが相手を見てからやりましょうね。まぁ、今回は自業自得でしょうけど》
「あん?」
アテナに言われて、初めて敵兵……じゃなかった。局員を見る。
……って。
「ヴァイスさん?」
そう。
俺が捕まえたのは起動六課所属、ヘリのパイロットでもあり、数少ない男性局員の一人、ヴァイスさんだった。
「ちょ、ウィズ! わかったならまずどけ!」
「あ」
言われて直ぐにどく。
ヴァイスさんは俺が捻り上げた左腕の確認をしながら立ち上がった。
「おー痛ぇ。お前普通ここまでするか?」
「いえ、スミマセン。驚いたもので」
その気になってたって言うのもあったんだろうけどな。
「だからって急に締め上げるなよ。これが女だったらどうするつもりだ?」
「その辺はちゃんと気にかけてますよ。男の声だからやりました」
さすがにその辺はちゃんと気をつけてる。
姉さんたち総出で女性の扱い方を学ばされたからなぁ。
そん時の練習相手は大体がアリサさんだったっけか。んでたまにはや姉と。
ん?
「そういえばヴァイスさんは何でここに?ここ女子寮ですよ?」
「う……そ、そういうお前はどうなんだよ?」
「俺は――……」
「あ、ウィズ。ここにおったんか」
「はや姉?」
説明しようとしたら後ろからはや姉が声をかけてきた。
少し遊びすぎたか?
多分あまりにも遅いから迎えに来てくれたんだろうな。
感謝です。
「あれ、何でヴァイス陸曹も居るんや?」
はや姉が当然の疑問を口にする。
さっきも言ったが、女子寮に入ってはいけないなんて規則はこの六課には無い。
だが勿論、その辺はモラルの問題。
何も無いのに女子寮に入ることなんて許されない。
というか目的も無しに入ることがおかしい。
「俺のそれ聞いてたとこなんだけど……」
俺とはや姉。
二人分の視線に耐えれないのか一歩だけ後ずさりしたヴァイスさん。
「まさかとは思いますけど……」
「ば、バカ言うなって!俺は……そう!ティアナに呼ばれたんだよ!」
「ティアナに?」
何だ、それなら仕方が無いな。
俺はてっきり忍び込んだのかと思っちまった。
そう納得した、その時……。
「私、呼んでませんけど?」
「はい?」
また後ろから声がした。
俺の気配感知は既に元に戻っているらしい。
残念に思いながら振り向くとやっぱりティアナがそこにいた。
多分食堂に行く途中だったんだろう。
ティアナの後ろにはFW陣が勢ぞろいしている。
「ヴァイス陸曹、何か言いたいことは?」
「出来心だったんです! 許してください!」
はや姉の冷めた一言に絶えられなかったのか、土下座して謝るヴァイスさん。
だけどなってない。
背中のラインが歪だ。
「許すかい! 部隊長命令や! FW陣、プランDや」
「了解!」
「いやあぁぁ!Dだけは、Dだけはあぁぁ!!」
その断末魔だけを残し、ヴァイスさんは俺の前から姿を消した。
結局、昼飯ははや姉が待ってる間に全部作ってくれたみたいで俺は食べるだけとなった。
久々に食べたけど、うん。
やっぱり上手い!
因みに後で聞いたんだが、プランDのDは【DEATH】のDらしい。
南無。
おまけ
A「ねぇ、あれってウィズ君よね?」
B「あ、本当。女子寮の前で何やってるのかしら?」
C「もしかして用事?でも誰に? ……もしかして彼女とか?」
B「うそ!?私狙ってたのにぃ……」
A「やめときなさい。それってあの部隊長とかに認めて貰うって事よ?」
C「壁は高いわね」
B「あ、ウィズ君こっち向いた!」
A「隠れて、隠れて!」
三人は壁に隠れ、再びウィズの様子をみる。
そこではウィズが通信を開いて誰かと話している。
C「あれって八神部隊長?」
B「あ、ウィズ君寮に入っていく!」
A「やるわね、部隊長。連れ込みか」
B「うぅ~~……」
A「それよりもスクープね。みんなに話しに行きましょう」
後日、六課がこの噂で持ちきりになった事をウィズ、はやては知らなかった。
因みにヴァイスは何か悟りを開いたらしい。