魔法少女リリカルなのはStrikerS WitH 作:八神煌斗
薄暗く、機会で埋め尽くされた空間に一人の男が居た。
黒いポロシャツにジーンズといった非常にラフな格好をしている。
年を見ても20代後半だろう。
男は空間に浮かび上がるモニターに映る人物と話していた。
「はい、完成までもう少しです。――はい。それでは……」
「ディズ、どう?」
通信を終え、モニターが消えると当時に部屋に光が差し込まれた。
ディズと呼ばれた男が視線を移すと、そこに居たのは一人の女性。
少し薄めの灰色の肩下辺りまでの髪に、紫の瞳。
此方も年齢は20代前半に見える。
「アリヤか……。そろそろ限界かもしれないな。最終調整が上手くいかないと説明はしてはいるけど……」
「……そろそろ本気で考えないといけないかも知れないわね」
二人の顔が暗くなる。
『ただいまーー!』
その時、一つの元気な声が聞こえてきた。
「ふぅ、何時までも落ち込んでいても仕方ないな」
「ふふっ。そうね」
二人は顔に笑顔を戻し、その部屋を後にした。
鍵をかけ、自分達以外には開けられないようにして。
「あ、お父さん! お母さん!」
「お帰り、ウィズ」
走り寄ってくる少年、ウィズを抱きかかえるアリヤ。
「お帰り。今日もはやてちゃんの所に行ってたの?」
「うん! また泊まりに誘われたんだけど行っても良い?」
「もちろんよ。ね?」
「あぁ」
「ありがとう!!」
はやて……その子こそ、この三人か共に居れる唯一の理由。
彼らには血のつながりも、戸籍のつながりも無い。
しかし、彼らにとっての仮初でも、それでも確かで幸せな日常だった。
男の名前はディズ、女の名はアリヤ。
時空管理局に所属する研究者の一人とその助手である。
この二人は本部の命令である研究をしていた。
その研究の名は、Fate(フェイト) Soldier(ソルジャー)。
人員不足の管理局が戦える戦闘員を作り出すために作り出すために立ち上げられた極秘プロジェクトである。
今三人がいるこの世界の名は第97管理外世界、地球。
上層部の命令で生態研究をしてきた彼らに与えられた新たな命令。
『ロストロギアを封印出来るモノを作れ』
コレは今までの計画とは似て非なるモノだった。
彼らには自身でも研究者として不必要なものを持っていると自覚していた。
それは出来上がったFSの子供達、そして新たな命令で作られたウィズに情が沸いてしまったことであった。
そして今回の指示は彼らに取ってこの上ない苦痛であった。
ロストロギアを封印する方法、それは自分達が作り出した子が死ぬ事と同義だったのだ。
何度も何度も上司に掛け合い、何度も何度も研究を見直した。
しかし駄目だった。
――だから彼らは命令にそむくことにした。
最初に、自分達がここに、管理外世界に派遣された理由を探した。
まず、依頼してきた人物、グレアム提督。
彼の周りを徹底的に洗った。
ディズも極秘扱いのプロジェクトに任命される程の人物。
多少時間は掛かったがそれでも、調べることは出来た。
グレアム提督の目的、それは彼の親友でもあった人物の仇を取るために、あるロストロギアを封印することだった。
そのロストロギアの名前は闇の書。
そして、その所有者がこの地球に居たのだ。
名前を八神はやて。
事故で両親を亡くし、幼い頃から両足が不自由な少女だった。
所有者の現在の処遇、封印不可という闇の書、凍結魔法と使うという案。
それだけで、ディズとアリヤは理解した。
はやてと共に、闇の書を封印するつもりなのだと。
今現在、ウィズと言う愛すべき子供がいる彼らにはそのことも許せる物ではなかった。
だからこそ、あえて八神やはてと接触した。
ウィズの顔はグレアムには知られていない。
それゆえ、ウィズが接触しても自分達のことがバレる事は無い。
そうして少しつづ距離を近づけていく。
そして最後には、自分達の準備が終わり、姿を消す時に彼女も共に連れて行こうと考えたのだ。
管理局にバレずに、管理局からの逃げる。コレは並大抵のことでは不可能。
それが今回のように極秘事項に関わっているならもっともだ。
だが、この世界には可能性があった。
まずこの世界が管理外世界という事。
それなら魔導師たちも大きな行動をとることができない。それが自分たちの様な得体も知れない研究者ならもっともだ。
そして管理外だといっても魔力を持つ人間が居ないわけではない。
自分達やウィズを含め、魔力を抑えればこの世界にいる分には捕捉されにくい。
これならば隙を見て管理局からの監視を避けることが出来る。
連れて来れた子供は……このウィズ、ただ一人だけだった。
本当はもっと……。
いや、全ての子を連れてきたかった。
だが連れて行けると許可されたのは一人、他の子達はこの子が壊れた時以外は認めない。
コレを言われたらどうしようもなかった。
しかし、何時までも悩んでいるわけにも行かなかった彼らは苦渋の末この子、ウィズだけでも守ろうと決めた。
この子は、何があってもと……。
「ウィズ、今日は君にプレゼントがあるんだ」
「本当!?」
アリヤに抱かれていたウィズは身を乗り出し、興奮気味に聞き返す。
「本当だ。ほらコレ」
ディズから渡されたものは、白い宝石がはめ込まれた指輪だった。
ウィズはそれを指に嵌めてみるが、ブカブカである。
勿論親指でも。
「これ大きいよー?」
「いいのよ、今は大きくてもその内ピッタリになるから」
そう。
この指輪は、この子にとって必ず必要なる。
ロストロギアを封印できる事がバレれば、ほぼ間違いなくロストロギアに認定されるだろう。
その時、自分達や仲間が居ずに一人だった場合は不味い。
そんな状況を打破するための、その為のモノ。
《こんにちは相棒》
「うわぁ!? しゃ、喋った!!? キモチワル!」
《初めてかける言葉がそれですか!?》
「お父さん、コレ要らない! 気持ち悪い!!」
「何だと!?」
コレがウィズとアテナの出会いだった。
ウィズとアテナの邂逅から数分後。
ディズはアテナを一度返して貰い、あの機械に埋め尽くされた部屋、研究室にアリヤと共に居た。
「大変だったわね」
「まさか自信作が気持ち悪いなんて言われるとは……」
《私も、まさか一言目が気持ち悪いだとは……》
「で、でもその後仲良くしてたじゃない!」
アリアも慌てながらフォローを入れる。
ディズもそれでも元気を取り戻さない。
本当にこの人は天才なんだろうか……たまにに不安になるアリヤだった。
「それで、アテナの渡したって事は?」
「あぁ。ウィズの拘束魔術は全部かけて置いた。後はアテナの独自補強だけだ」
《それにしても、本当に私でよかったのですか?》
「……何故そう思うんだ?」
不安や疑問の入り混じった声でアテナが二人に尋ねた。
それに対し、二人は何故そんなことを考えるのか分からなかった。
《私はレイラに比べスペック等、劣っている点が多すぎます。私より彼女の方が適任だったかと》
「その事か……。確かにスペック面で考えると劣るかもしれないが、この件に関してはアテナの方が何倍も適任なんだよ」
《?》
ディズの言葉にアテナは考えるが今市ハッキリした答えが出ない。
「レイラには君ほどの感情表現が無い。いや、それだけなら特に問題は無いんだが……」
「あの子はマスターを導くことが出来ないのよ」
《導く?》
「アイツはマスターの言う事には絶対服従……とまでは行かないか。だがそれに近い状態がある。それだといけない。」
《何故ですか?》
デバイスとは魔導師を補助をする道具だ。
確かに自分はマスターのいう事を全て鵜呑みにするつもりは毛頭無い。
自分は少し特殊なのだと、その面を考ええてもやはりレイラが適切なのでは無いかと、アテナは思う。
しかし、ディズ達の考えはアテナとは違う所から見ていたものだった。
「デバイスは魔導師と成長する物。それがインテリジェントともなれば尚更だ。それなのに、マスターの言う通りばかりでは、お互いに成長しない」
「それに間違った方向へ行っても正してくれないわ。でも貴女にならそれが出来るでしょ?」
《まぁ、多分、おそらく》
現にさっき対面したときにでもアレだけ大騒ぎしたのだ。
傍から見たらデバイスがマスターにしないような発言も多々あっただろう。
あってはいけないのだが……。
《そういう事でしたら、私も相棒の為に頑張りますよ。その為に調整された体でもありますからね》
「そう言ってもらえると助かるよ」
その一言で会話は終わり、二人と一つは再び居間に戻る。
今で大人しく待っていたウィズはディズたちを見ると再び走ってくる。
「ほら、ウィズ。ありがとう」
「うん! 行こうアテナ!」
《何処にですか?》
再びアテナをウィズにかえしておく。
アテナを手に取ったウィズはそのままアテナの言葉を無視して部屋に飛び込んでしまった。
キモチワルイ、など言っていっても、新しい話し相手には変わらない。
おそらくまだまだ喋り足りなかったんだろう。
「ロックもかけた、アテナも渡した」
「後は私達と時間との勝負ね」
「あぁ、そうだな……」