魔法少女リリカルなのはStrikerS WitH 作:八神煌斗
僕こと、ディズは今日は一人で家に居た。
アリヤとウィズは買い物に出かけていているのだ。
外に出ることはメンドクさいので一人で留守番をしていたのだが、丁度時間に空きが出来た。
本局にある研究所との定期連絡も先ほど終わらせたばかり。
最近グレアムが依頼の破棄をほのめかしているらしく、本部も焦っているようだ。
しかし、今の僕達にはそれも関係のないこと。
どうせなら破棄してもらえれば、此方も必要が無いようなので道具は破棄した、とでも言い訳できる。
それで自分達がクビにでもなれば言う事も無い。
「……何をバカな。小説やドラマの方がまだ現実味がある」
何か摘もうと研究室から出てきて、居間に来たディズの目にあるモノが目に入った。
「アテナ、今日も置いていかれたのか?」
《今日は、です。そこの所を間違えないで頂きたいです》
まったく、変な所で意固地になるデバイスだ。
意識して自分で作ったとはいえ少し感情を豊かにしすぎたか?
「ウィズとは仲良くやっていけそうか?」
《それはもう。今や相棒は私なしでは生きていけないですよ!》
「置いていかれているが?」
《ぐぅっ!》
フフフ……。ぐうの音も出まい。
製作者として作品には負ける訳にはいかないんだよ。
しかし、何時までもふざけてはいられないな。
二人がいない間に話しておかなければいけないことがあるからな。
「……それで、封印の方はどうだ?」
《今の所、補助封印と第3~5番封印までは掌握できました》
「あと二つか……。どのくらい掛かる?」
《大体48時間です。……博士の補助を得ながら、でですけどね》
「中々長いな……」
そう。アリヤに伝えているのは補助封印のみ。
第1~第5封印の事は教えていない。
この封印はウィズに組み込まれている、ロストロギアとしての機能を封印するもの。
アリヤには補助封印がその役目を果たしていると話している。
自分でもこの封印が上手く起動してくれるか分からないと言うものあるのだが……。
危険である訳ではないのだが……。
万が一、この封印が本部にばれたらそれこそただでは済まないだろう。
コレを知っていると知らないでは罪の大きさも絶対に変わるといっていい。
大罪を背負うのは……僕だけでいい。
その後、アテナと二人(?)で雑談を楽しんでいると、本部から通信が入った。
「ん? この時間は通信してくることは無いはずなんだけどな……」
《そんな事言ってないで早く出たらどうですか?》
「お前……急に口が悪くなったな」
《コレが私のキャラですので》
「?」
なんかよく分からない事を言っているアテナは置いておいて、僕は通信回線を開いた。
その内容は、僕の体を芯から凍りつかせることになるモノだった。
「ただいまー!」
「アリヤ!」
「はい!?」
帰ってきて買い物袋を降ろす前にアリヤに詰め寄る。
アリヤは驚いて面白い顔になっているが、今は突っ込んでいる場合じゃない。
「本局から連絡があった。明日、コッチに迎えを寄越すそうだ」
「なんですって!?」
その後、ウィズには部屋に戻ってもらい、僕達は研究室に居る。
そこでさっき連絡にあった内容をかいつまんで話した。
グレアム提督が契約を断ち切ったらしい。
なんでも自身でも闇の書の封印を研究していて、そのメドが立ったらしい。
それでは僕達が地球にいる理由も無い。だからの帰還だ。
もっとも研究は続けるらしいがな。
本部の連中はグレアム提督の言っているロストロギアがこの付近にある所までは調べが付いている。
ならば僕達を現地に残しておけば良いとは思うのだが……帰って来いと言うのが上からの命令だった。
おそらく僕達ちゃんとした施設のある所に戻して更に能力の高い子供を作り、グレアム提督を見返してやろうという事なのだろう。
研究者は裏切られたり、無能扱いされることがよっぽどキライだからな。
契約を断ち切って欲しいとは思ったけど……こんなに話が早く進むとは思っていなかったな。
「それで、どうするの?」
アリヤが不安げに、それでもその決意を込めた瞳で僕に聞いてきた。
そんな問い、君も答えは分かっているだろうに……。
「ウィズを――捨てる」
コレしかなかった。
「うわぁ……」
暫くしないうちに僕達は研究室にウィズを連れてきていた。
やはりあの年頃の子にはこういう所には心躍るらしい。さっきから目がキラキラしている。
……この姿も、今日で見ることが出来なくなるのか……。
「ウィズ、あのベッドに寝てくれないか?」
「ん?」
僕は指差したのは正確にはベッドではなく、ウィズの調整用カプセル。
そのカプセルでウィズの残りの封印を無理やりに成立させる。
「あれベッド、形すこし変じゃない?」
「あ、あぁ……あれはな……」
「疲れがよく取れるベッドなのよ。ウィズの試して欲しいの」
僕が答えに悩んでいるとアリヤは助け舟を出してくれた。
うむ、さすが僕の助手だ。
「ディ……お父さんに協力してくれる?」
「うん、いいよ!」
くっ……。
僕の涙腺、もう少しでいい、耐えてくれ。
「あ、でも痛くしないでね?」
「当たり前だろ」
笑顔を作るのは、こんなにも難しいことだったのか?
この数ヶ月間は自然に笑えていたから、気づかなかった……。
そして、ウィズはカプセルに横たわり、僕達はふたを閉じた。
透明なカプセルの為、ウィズの様子ははっきり見える。
そのウィズをアリヤは静かに見つめ、僕は無言でデータを弄っていた。
「ねぇ、ウィズ。お母さん達が居なくても元気でやっていくのよ?」
「?」
向けば、アリヤはカプセルの蓋に手を置き話しかけていた。
それをみた僕は、少しの間作業をアテナに任せ、二人に近づいていく。
「どういう事?」
「気にしなくて良い。これからは自分の人生を歩くんだ」
「もっとわかんないよ~」
そりゃそうだろう。僕も文脈がおかしい事くらい分かっている。
でも、この一言だけは伝えておきたかった。
この子には、戦うことが運命付けられて生まれてきた。
それでも、ありふれた言葉だが、運命に逆らって自分の道を歩いて欲しい。
心からそう思う。
「でも、僕が居なかったら母さん達は大丈夫なの?」
「大丈夫よ、心配要らないから」
その会話を最後に、ウィズは眠りに入った。
アテナの操作が終わった証拠だろう。
ここからは僕の仕事だ。
《よかったのですか?》
「よくは、無いさ……」
戻ると、アテナに聞かれた。
僕はコンピューターを操作しながら素直に答えた。
「それでも、他の方法は思いつかないし、こうするのが一番だって今は思う」
《…………》
「ねぇ、ディズ」
「なんだ?」
アテナと話しているとアリヤが話しかけてきた。
その瞳は涙を溜めていた。
「ウィズの記憶を消しておきましょう」
「……いいんだな?」
これは僕自身も考えていたことだった。
中途半端に僕達の事を覚えていたら、目が覚めたときに辛いだろう。
それを回避するためだった。
それも僕達の事だけを忘れさせるなんて、いくら僕でも無理だ。
だからウィズは本当に全てを忘れることになる。
「えぇ」
「……わかった」
そして、ウィズの世界から僕達が消えた。