魔法少女リリカルなのはStrikerS WitH 作:八神煌斗
「くっ……」
俺は今、大の字で倒れている。
アテナは既に待機状態に戻っていて、俺も魔力は殆どからだ。
言う事を聞かない体に鞭を打ち、気合だけで起き上がる。
いやはや、気合で何とかなるもんだね。
《そんな軽口を叩いている場合ですか?》
「うん……ゴメン」
何かキツイ雰囲気だったから素直に謝っておく。
「それにしても、コレで起き上がってこられたらもう負けだな」
《何弱気に……と言いたい所ですが、確かにそうですね》
そして俺は目前のまだ爆煙が漂う所を見る。
ゼロ距離の魔力球爆発。
俺は慣れとアテナが咄嗟に張ったハイペリオンで何とか軽減できたが、普通ならかなりのダメージになっている筈だ。
魔力は殆ど無し、使えても大技は無理。
体はいう事を殆ど聞かない。
コレは賭け。
俺は悲願の気持ちで晴れていく爆煙を見ていた。
そして――
「もうこういうのってお決まりだよな……」
《相棒の場合は特に》
ヤツはボロボロに成りながらも、俺よりもしっかりと立っていた。
「この……ゴミがあぁぁぁ!!」
「っ!?」
ヤツの気迫に押され、後ろに倒れこむ。
と次の瞬間頭の上を何かが通り過ぎ、後ろの壁が爆発した。
「……は?」
えっと、何が起きた?
事態が飲み込めず、起き上がりながらアイスマンから目を離し振り返る。
そこには外壁は無く、始めに俺達が戦っていたゆりかご内部がむき出しになっていた。
おいおい、マジかよ……。
「おい、どういうことだ!? 威力がさっきまでと比べモンに何ねぇぞ!!」
《おそらく錯乱、又は暴走してると思われます!》
「錯乱しててあの威力かよ!?」
《何とか避けきってください! 既に殺傷設定、当たれば死にます!》
「分かってる!!」
って言っても、もう倒れこむ位しか……っ!?
そして二発目の魔力砲撃を前に倒れこむ形で交わす。
威力で言ったらなの姉越えてんじゃねぇか?
「ゴミが……死ねえぇ!!」
「ちぃっ!」
もう言葉遣いもさっきまでと全然違うな……。
錯乱してて力任せに撃ってきてるって所か?
唯一の救いはデバイスでの接近戦をしてこない……ん?
ちょっと待て。
「アテナ! お前レイラに通信することは出来るか!?」
《ある程度近づけば出来るかもしれませんが……何故ですか?》
「多分、レイラはセットアップを拒否してる」
《なっ!? それは本当ですか!?》
「多分、だけどな」
現にさっきからアイスマンは右手でしか砲撃を撃ってきていない。
左手は何かを握るように閉じられていて、何度もその手を見ている。
アレだけバンバン砲撃を撃ってきてるから魔力切れって事は無い。
怪我を気にしてるにしても手以上に酷い箇所は他にある。
それなら……と言うのが俺の考えだ。
それをアテナに伝えると……。
《それが本当なら、此方にも勝機が見えてきますね……》
「あぁ。姉妹機なら持ち主を気絶させるくらいの事はレイラもできるだろ。魔法も同じのがプログラムされてるみたいだしな!」
危険だが、このままただ逃げてるだけなら負けるのは確実だ。
それなら少しでも勝率がある方を選ぶ!
《相棒、あと一つ言っておきたいことが……》
「何だよ?」
どうやってヤツに接近するか。
タイミングを図っている解きにアテナが話しかけてきた。
《ゆりかごの外壁が破壊されたか、制御者がいなくなって暴走しているのかも知れませんが……》
「だからなんだよ!? 早く言えっての!」
《魔力がどこかに流れています。おそらくロストロギアの有効範囲がここまで広がったものかと……》
「はぁ!!?」
だから何でこう厄介事ばっかり重なるんだよ!
くそっ……。
これでやるしか道はなくなったってか?
「タイミングは一度。次発までのタイムラグ10秒。その間に近づく……か。テクニカルの補助の期待は?」
《3秒……それ以上はここから脱出する分がなくなります》
「3秒……ギリギリだな――っと、考えてる暇はねぇか!!」
アイスマンが手に漆黒の魔力球を溜めていた。
俺は姿勢を低く、アテナに手をかざす。
「行くぞ、アテナ! コレで終わらせる!」
《はい! ――Technical(テクニカル) Silhouette(シルエット) !!――》
テクニカルになったアテナを握りなおし、腰を軽く落とす。
剣の先は後ろに、リズムを取るように体を前後に揺らし、準備は万全。
後は――
「死ねええぇぇええぇ!!」
――来た!!
打ち出される漆黒の砲撃。
それを倒れこむのではなく、横へのステップでかわす。
少し掠り、頬、右肩から出血するが今は気にしてる暇はねぇ!!
足が地に着くと同時にアイスマンへと走り出す。
予想ならこの10秒間、攻撃は来ない!
――筈だった。
「マジかよ!?」
ヤツの10秒間。
それはあの巨大砲撃を撃ちだす為、パワーを溜めるための時間。
逆に言えば、溜めなければスグに撃てるという事。
アイスマンは小さな射撃魔法を散弾のようにして撃ってきた。
「って、突っ込んでる場合じゃねぇ! アテナ!」
《魔力付与、最大展開!!》
速度を一気に上げ、左右に体を振りながらアイスマンに近づく。
打ち出されてくる弾は次々に俺に当たるが、正直急所じゃなければどうでもいい!
さっきと同様細かい事を気にしている暇は無い!
そして区間の大きな一歩を少しづづ進み、遂に――。
「捕まえた!」
懐に入り込んだ。
先と同じ状態に互いがなる。
ただ唯一違うことは――。
「ぐうぃっ!」
「っと、させるかよ!」
両手を俺に向けてきた所で、アテナを待機状態にし、両手で手を押さえ込む。
―― 一瞬ではなく、この状態で耐え続けなければいけ無いこと!!
「(どうだ!アテナ!?)」
《(どうやらシステムにロックが掛けられている様なんです。今からレイラと協力してそのロックを解除します!)》
「長時間は無理だぞ!」
《分かってます! 30秒、それだけ耐えてください!》
それだけ言って、アテナが点滅を始めた。
ここに、最後の30秒間の戦いが幕を開けた。