ダンジョンで〈英雄〉を追い求めるのは間違っているだろうか? 作:ネマ
久々の更新。……バレてないバレてない……
あっ。久々の更新なんで初投稿です。
楽しい【怪物祭】だったはずの時間はモンスターの脱走と新種のモンスターの出現。並びに弟子の勇気…?蛮行?勇気。?何せ格上のモンスターに単身で挑むという暴挙をかまし、アミラとアイズは奥の手とも言える手段を切りアイズは新種のモンスターにアミラは弟子を助けに向かったがその時、何故かアミラに【猛者】オッタルの強襲。勝てるわけもなく、アミラは無様にも吹き飛ばされてしまう
「………しょう……師匠………アミラ師匠!!」
遠くから、落ちていく意識とは裏腹に声が掛かる。
自分がこんなところで倒れている時間なんて、ない筈。
アイズとの誓いさえも謳ってこの様とは何とも無様だ。
「……………────何秒落ちてた!?」
「師匠……っ!!大丈夫です。数秒ほどです!!」
アミラは耳元にかかる声、そして揺らされる身体に現状を理解して飛び起きる。
すぐさま身体の中を水で一通り調べ、全く異常がないことに一瞬恐怖する。恐怖した理由は何故か。簡単なことだ。あれほど強い力でぶん殴られたというのに内臓1つにもダメージが無く、気絶した理由もおそらく頭だけ揺らされたのだろう。その上で、自分をベルの方向へと吹っ飛ばす精度。
技術、精度、そして威力。その全てが揃ったレベル7。“今の”オラリオ最強というのは伊達ではないということなんだろう。
「アミラ師匠が……どうして……??」
「ベル。驚くことじゃない。俺以上の強者など……」
レベル5を吹っ飛ばし気絶させる。言葉だけ出すならどんな化け物が相手なんだとベルは驚愕しているみたいだが相手が悪すぎる。とアミラは周囲を観察しながら冷静に答える。
多くの傷が付き疲弊状態だというのに逃げることもせずベルに敵意を向け続けるシルバーバック(レベル5という存在を前に躊躇ってはいるが)にほぼほぼ無傷でナイフも新調したベル。レベル1が11階層のモンスターを圧倒する事にアミラは理解した瞬間、これが見たかったのかと微笑む。
もしここでシルバーバックを俺が殺そうとすればオッタルは俺を先に叩きのめすだろう。そういう筋書きのために襲ってきたと考えれば強襲された理由として十分すぎる。
「…………ベル。」
「はっ!はい!」
ならば今アミラがするべき事はなんだ。そう。それはとっても簡単で難しい事。
「信じて……いいか?」
信じるという“背中を任せる”という行動。
ニュービー。それも冒険者になって1ヶ月も経たないレベル1に歴戦のレベル5が背中を任せる。
それがオラリオの中でどれほどありえない事か。
「っ!!はいっ!!」
それを知ってか知らずかベルの瞳には戦意が更に燃え上がり構えるナイフに力が入る。冷静に息を吐き、そして互いに戦いの場所に身を投じていく。
◆
「…………………」
進んだ先、誰も居なくなった路地にて1人仁王立ちになり待っている男がいる。
アミラの数倍大きく、そして威圧感のあるその姿にアミラは臆する事なくその男から投げ渡された片手剣を一度振り、向かっていく。
その剣は初めて手にしたというのに何故か非常に手に馴染む。
アミラの“水”が詠唱を唱えるまでもなく周囲に満ちてそれでいて尚、その水全てがアミラの支配下にある様な不思議な静寂の中に確かな威圧感で満ちていた。
「そのスキルを使ったな」
ならば迎え撃つのみ。とオッタルも地面に突き刺したそれは剣というにはあまりにも巨大で分厚く、それでいてまるで美術品の様な荘厳さに溢れた代物を引き抜き構える。
「……………………」
オッタルから放たれる覇圧でさえもアミラは気にかけることもせず、一度小さく瞳を閉じ次に開いた瞬間、アミラの周囲の水は誰が見ても分かる渦となりアミラを守る盾でありながら近づいたモノを蹂躙する刃になっていた。
「【水剣】その由来を」
神々から送られる二つ名。それはレベルが上がるにつれて二つ名はその冒険者が描いた冒険の軌跡が、覚悟が刻まれる。“剣鬼”その呼び名は文字通り、剣の鬼であるアミラに送られた名前。まるでダンジョンに魅入られる様なその圧倒的な早さで“第一級冒険者”の1人になったアミラに相応しい。
……ならば“水剣”は?
水の魔法を使うから?────そうではない。
まるでその剣が水の様に変幻自在だから?────そうではない。
「【水隷雫属】お目覚めか。アミラ・フォンディアス」
「………なあオッタル」
【水隷雫属】それはアミラの魔法を最大限活かすのに最も合致しているスキル。ただでさえ、超短文詠唱に魔力の消費が少ない魔法だというのにこのスキルのせいで魔法が、かの九魔姫を以てして“恐ろしい魔法”と言われる。
「その似合わない解説はどこまで続く?」
アミラの周囲を渦巻いていた筈の水の魔法はまるで統制が取れているかのようにアミラの周囲に従う。
これこそアミラの真骨頂。アミラの“水剣”の所以。【水隷雫属】は水の支配・制御……つまりはシンプルであるからこそ、最も強い。
「…………ふん。」
これ以上は言葉は不要と言わんばかりにオッタルの筋肉が躍動する。
これ以上の言葉は無粋であるとばかりにアミラは剣を構える。
「───────」「────────」
瞬間、始まりかき消える2人の姿。そして四方八方で聞こえる剣が空を切る音、剣と剣がぶつかり合い奏でられる不快な金属音。レベル5とレベル7の攻撃は只人には見えない不可視な超高速戦闘となっていた。
地面に陥没穴だけが残り、周囲にはまるで豪雨が降った後のように水飛沫の風が舞う。しかもその水飛沫は重力に逆らうかの様に空中に停止して、水を総べる主であるアミラの命令を待つかの様に漂う。
「堅いけど、削れないほどじゃない」
「ふん。吠えるものだ」
アミラの魔法より生み出された【滴り満ちよ】より、本来消えるはずだった水の付加魔法はアミラのスキルである【水隷雫属】の支配下に置かれ何度も何度でもアミラの意思に従い、水は姿を変える。
ある時は、霧の様な目潰しに。
ある時は、滝の様な壁に。
ある時は、流水の様な斬撃に。
ある時は、水鉄砲の様な弾幕に。
アミラが【滴り満ちよ】を使えば使うほど、【水隷雫属】は威力を、範囲を広げながらアミラの支配下に置く。
「やはり、貴様のそれは」
「これで終わりだ!!」
今やアミラの支配下に置かれた水の総量は、大湖ひとつ分にも匹敵する。そしてその水はアミラの意思に従う様に圧縮され、圧縮され、極限まで圧縮され剣に纏う。
呟き、動きを止めるオッタルの背後に空を滑るかの様に回り込んだアミラは人間であろうなら重傷は避けられない首を狙って振り下ろす。
「リル」
極限まで剣に圧縮されたアミラの必殺技。半生可な剣。それも下手な第一級武装でさえもこの一撃を放った後には自壊し、何も残らない程の一撃。かつて理論上、アミラが圧縮できる限界まで圧縮した後に放った一撃はダンジョンの階層さえもぶち抜いた。(その後、その剣は崩壊。およそ数千万ヴァリスが買った数時間でお釈迦になった。)
必殺技は大声で叫んだら威力が上がるとかいう何処かの飲兵衛親父の話から始まった叫んで放つ必殺技。
「アファァァァァガァァァァァァァ!!!」
◆
避ける。避ける。避け続ける。
障害物を使って撹乱しながら、壊れた瓦礫の破片を投げナイフの要領で使う。アミラ師匠だって使えるものは何だって使えって言ってた。
大振り。大振り。叩きつけ。振り回し。
相手であるシルバーバックはベルより数倍大きい。だから単純な叩きつけでさえその衝撃で身体が揺れて乱される。
(それでも)
間違いなく、アミラ師匠との鍛錬は効果に出ているとベルは確信する。アミラ師匠からの攻撃はもっと鋭かったし、危険だった!!
「わわわ!!!」
「神様!?」
そうだった、見誤った。
シルバーバックの攻撃は大振りであろうとも範囲攻撃。そしてこの場には神様だっている。ヘスティア神が体勢を崩して転けたのを見て、ベルは脇目も振らず神様を助けに行った。
「あ」
その隙をシルバーバックは逃さない。
ベルの背中を襲うシルバーバックの剛腕はヘスティア神と共に遠くへ吹っ飛ばした。
『GURURURU………』
その姿をシルバーバックはただ見つめる。
女神に課せられたオーダーは未だにこなせて無いと判断した大猿は、その場に立ち尽くす。他の人間を襲いに行くことも追撃も出来ただろうに、近くでどう足掻いても一撃で殺されそうな覇圧を振り撒く2人の間を掻い潜ろうとは魅了された本能でも全力で動きを止めたのだった。
「ベル君!!大丈夫かい!?」
吹っ飛ばされた衝撃を生かしてベルはヘスティア神と共に路地裏に隠れた。どうやらシルバーバックは追いかけてこない事を考えると体勢を立て直す時間はあるらしいと痛む体の忠告を強引に振り切って、予備のナイフを取り出して振るう。よし、行けそうだ。
「ちょまま!!ベル君!!」
「………神さまはここに隠れていてください」
「まさか勝つつもりかい!?」
どう考えても無茶だ。とヘスティア神は思う。あの怪物はどう考えても今のベル君には勝ち目がない。スティタスの数値からしても無謀だ。
(だというのに)
(まだベル君の瞳から光が消えていない)
ヘスティア神が嫌う死に向かう目ではない、間違いなくベルは相手を斃す算段があって勝つ目をしている。ヘスティア神が言うまでも無くベルは信じている。勝利を、ヘスティア神を、そして自分自身を。
「……神さま信じてくれますか?」
「分かった。……ならせめてスティタス更新ぐらいはさせてくれ。」
神血を使ってベルのスティタスを更新する。上昇値350オーバー。一部、俊敏や耐久がD近くまで上がっているのを見てヘスティア神は1人戦慄する。一体どんな無茶をすればここまで上がるのか。リアリス・フレーゼがあったとしてもヘスティア神は想像できない。
「それとベル君。君にこれを」
ヘスティア神の懐から取り出した一本のナイフ。それは神友である鍛治神へファイストスに土下座して作ってもらったベル君専用のナイフ。黒く輝くそのナイフは普通の武器ではない。
「それは……生きている。君が成長すればするほど強くなる。」
「!!」
「さぁ!冒険を、するんだろう!?」
「はいっ!!」
目の前の敵は強大だ。敬愛する師匠は助けには来ない。
だけど……ベルのその背には守るべき神さまがいる。
ベルのその両手には神さまから、師匠から貰った2本のナイフがある
ならするべき事はもうすでに決まった。行ってこいと叩いたベルの背中はもう立派に冒険者としての姿が垣間見える。
………さぁ、冒険を始めよう。
「……待ってくれたんですね」
『GURURURUR………』
順手に持った2本のナイフを構え、眼前の敵を睨む。祭りで使役される筈だったシルバーバックの拘束具は外れ、同じようにベルを睨む。一瞬の眼光のぶつけ合い。その瞬間、二つの影はほぼ同時に動き出した。
(………信じる)
シルバーバックのぶん殴り。それをベルは滑り込み、回り込む。ガラ空きになったシルバーバックの背中に向かって、ナイフを刺し穿つ。だけど今のベルの力ではそれだけで倒すことはできない。鮮血を流し猿叫を上げながらも、シルバーバックは大振りの腕を振り回してベルをはたき落とす。
今のベルに魔法はない。今のベルのレベルは1の駆け出しだ。
だがその身に刻んだ格上との戦闘記憶も、その身に潜む勇気も今のベルを支えて力となる。
(………信じるんだ!!)
小柄な身のこなしを使い、少しずつ少しずつシルバーバックを削る。
そしてシルバーバックはまるで我慢の限界だとばかりに腕を大きく振り上げ、ベルを空中に浮かせる。……その瞬間を、ベルは待っていた。
「あ…ああああああああああ!!!」
家と家の間に繋がった紐を指で引っ掛け、空中で無理矢理方向を動かす。
全体重と空から落ちる重力の引力を利用して、ベルのナイフはシルバーバックを両断する。
間違いない、ベルの勝利だ。
◆
「……アミラ?」
アイズはただ立ち尽くす。周りにまだ敵がいると言うのに。まるで茫然自失かの様にアイズは立ち尽くす。あり得ない、あり得ない、あり得ないが胸の中から消えたこの喪失感だけが残酷な真実を告げていた。
それもその筈、今のアイズの纏う風にアミラの水の力を感じない。そして何よりも暖かく、冷たいアミラの昂りを今は感じない。たった1人だけの小さな小さなアイズだけになってしまった。
「どう……して?」
繋がりが途切れた。相手に何かあったとかでは無い。
この感覚を、アイズはよく覚えていた。 【英雄姫】も 【風支剣背】も両者共に詠唱式の後に互いに互いの許可も取らないと行けないスキル。……そして今回はアミラの方が【風支剣背】をアミラ自身の意思で切り落としたという事である。
(まさか……【水隷雫属】?)
感じるアミラの魔力。感じる風から流れてアミラが今いる場所に集う水の息吹。
間違いない。アミラの持つスキルにしてアミラが【水剣】たる所以のスキル。確かにあれを使うのなら私の風は邪魔だと認めたく無いが認めざるを得ない。
アミラの力が無くては、今以上の力を出せない私と違って
アミラは私の力なんて無くても、今より強く戦える力がある。
「………ううん。でもそれを使わないといけない敵……?」
アミラが【風支剣背】の使用時、事実上のステイタスはLv.6の中堅ほど。けどこの新種のモンスターはそれほどの力を必要としない。だと言うのに、アミラはレベルの利を捨てて戦わなくてはならないほどの事。先ほどのレベル1がたとえ敵わない相手だとしても私たちなら素手でも圧倒できるはず。
「…………………いやなよかんが、する」
苛立ち、苛立ち、嫌悪、嫌悪、悪寒、悪寒、苛立ち、苛立ち。
小さなわたしも同じ様に顔を歪める。けど、アミラにこの場を任された。それならこのモヤモヤをコイツらで全部、片付けてしまおう。
「……………消えて、全部。私の前から……【目覚めよ】」
暴れ狂う緑色の暴風。織り混ざるその緑色の暴風は、濃い緑を超えて黒色に近くなった風を全身に纏い、アイズは飛び上がる。もはや今のアイズは重戦車にも等しい。攻防一体の風の剣と鎧は、触れるモノ全てを破壊し尽くす。むしろ嬉々として敵に突っ込んでいくのだから並の相手ではまるでミキサーに掛けられたかの様に無残な細切れを晒す他無い。
アイズは、強い。確かにたった1人で新種のモンスターを蹂躙できるぐらいには。
だけどアイズが求める強さとは、こんな色の風だったのだろうか?……その答えは、アイズのみが知っていた。
キャラクター設定
【水剣】アミラ・フォンディアスレベル.5
ステイタス 不明
魔法 【滴り満ちよ】
・付加魔法
・水属性
スキル 【風支剣背】
・“英雄”と共に戦う時、全ステイタス強化
・“英雄”の魔法行使並びにステータスの向上。詠唱式は「開け。盟約」
・レベルアップの封印(“英雄”のレベルアップ時封印解除)
・以下詳細不明
【水隷雫属】
・空間における水の掌握・支配
・レベル依存
【剣姫】アイズ・ヴァレンシュタインレベル.5
ステイタス 不明
魔法 【目覚めよ】
・付加魔法
・風属性
スキル 【英雄姫】
・“運命”の魔法行使並びにステータスの向上。詠唱式は「開け。盟約」
・以下詳細不明
ベル・クラネルレベル.1
ステイタス 不明
魔法 なし
スキル 【英雄憧憬】
・早熟する
・以下詳細不明
技説明
リル・アファーガ
アミラ・フォンディアスが使う必殺技。ロキ命名。束ねた【滴り満ちよ】をスキルである【水隷雫属】で圧縮圧縮水を圧縮ぅ!!する事で放つ剣一本が自壊するほどの威力を秘める。わかりやすく言うなら壊れた幻想。かつてこれだけで階層をぶち壊したとあるが、貯めるには時間がかかるし、アミラの集中もいるから専らそこまで行くとロマン技。……そういえば同じ様に階層ぶち抜くほどの魔法を持っていた人が居ましたね?
※『本契約』を熟すと魔力が同調し、互いの許可なくスキル使用時の状態が維持されます
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