シルバー・アウトサイド   作:オルフェイス

4 / 6

 捕食者系魔法少女がぁ、書籍化するのでぇ……復活、しました。

 ……でもやっぱ難しいですね、介入させずに存在感出すのは。
 独自解釈です。どうぞ。




ルック イン ザ ミラー

 

 学校は楽しい。

 いや楽しいというか、なんというか……なんだろうね、安心する、っていうのかな?

 ウィッチとして戦ってる心を癒やしてくれる……みたいな。勉強はアレだけど、学校という居場所は楽しいと思うよ。

 部活とかは……私様はウィッチだからやってない。時間が惜しいからね。こうしてる間にもインクブスは蔓延ってるから。

 じゃあ何をしてるかと言えば……

 食べる、寝る、遊ぶ、学ぶ。この四つかな。

 朝昼晩に毎日食べて。

 夜には就寝。もちろんウィッチとしての活動もあるから遅めだけど。

 外でいっぱい動いて遊んで心を癒やし。

 学校で勉強して、ウィッチとして学びも忘れない。

 ……こんなところかなぁ?

 ウィッチであることに生涯を捧げる。そんなことが出来るのなら、話は早いんだけど。

 まぁ無理だよね。

 少なくとも今の日本ではそんなことはしなくてもいいし……それだけ余裕がある。

 それもこれも彼女が頑張ってインクブスを殺して、敵の少ない土地によって強いウィッチが育ったおかげだ。

 本当に、敵わないよね。

 ─────けれど。

 

「それでも、絶対じゃない」

 

 それを私は知っている。

 彼女を狙う敵は多く。

 そして残念なことに、彼女の価値を真に知る味方が少なすぎる。

 なんで彼女の敵対者や他国の人間の方が力を入れてるんだろうね。

 ……知らなければ、そうなるのも仕方のないことだとはわかってるけど。

 今日は、外からの来(・)客(・)が多いようだ。

 

「インクブス……だけじゃない」

「ウィッチを複数人確認しました」

「愛されてるね、彼女」

「この場合、執着ではないでしょうか」

「言えてる」

 

 本当に、ふざけた奴等だ。

 自分たちの国の危機だから。

 そのために、国の守護者である彼女を奪い取ろうとする。

 そしてインクブスもまた同じ。

 日本中にいる彼女の虫が、インクブスという害悪を取り除いている。

 だから元凶を断たんとしている。

 以前のように、略奪を行うために。

 

「どうなされますか?」

「……どうしようね」

 

 普通なら、介入するべきだ。

 彼女を奪おうとする国も……彼女を辱めようとする淫魔も。

 皆殺すべき害獣だ。

 ……私にとっては、だけど。

 それを気軽にしていいのか。

 もちろん、彼女にとっては良くないことのはずだ。

 現在、匂いで確認できる範囲にいるウィッチの数は……

 六人、二人、四人、一人、一人、一人……こんなところか。

 ただ四人組に関しては少し妙だ。微妙に匂いが違うからいいけど、何処か同じ匂いがする。

 もう少し近ければ詳しく判別できるんだけど。

 ……外の国のウィッチみたいだから、何か事情があるんだろう。今はいいか。

 警戒すべきは……六人組と、一人組。

 六人組はインクブスと行動している。間違いなく敵だ。

 一人組……一つは嗅ぎ慣れた匂い。彼女だろう。こちらはいい。

 もう一つ……こちらが厄介だ。かなりのエナを含んだ匂いがする。私よりも多いな。

 ウィッチだろうし……何より人間と行動してる。四人組とはまた違う国だな。多分ナンバーズ。

 最後の一人組は……こちらも気にしなくていい。何を企んでいるのかは知らないけど、敵ではない。

 二人組は……あ。

 

「ウィッチ同士での交戦を確認……どうやら数を分けたようです」

「インクブスのところだね。で、数を同じ二対ニにしたと」

 

 ……まあ、数だけならそれは間違いないけど。

 愚策だよ、それは。少なくとも今そこにいるウィッチを相手にするには、それは無意味な戦力分散にしかならない。

 その代わりと言うのか、彼女の虫たちがマークの外れたインクブスと四人のウィッチを追い込んでいる。

 誘導、してるんだろうね。

 

「フルールラム」

「いやほんと、どうしようね」

「介入するべきかと」

「それが邪魔にならないのならね」

 

 こう言ってはなんだが……下手な介入は、ただ邪魔でしかない。

 彼女の戦い方に他のウィッチの存在は加味されていない。ただ自分とファミリアでもって、どうやって敵を殺すか。ウィッチを無力化するか。

 自分たちでどうやって成すか。元より他者の援護を期待していない。

 ……自分でなんとかするしか無いと。自分がやらなくてはならないと。そう、思っているのだろうか。

 いや、そこを考えても仕方ないか。

 私に彼女はわからない。そんなの、当たり前のことだから。

 

「仮に私が介入したとして……それが彼女の邪魔にならないと言える?」

「……」

「言えないよね。私も言えないよ、そんなこと」

 

 しかも、状況は混乱を極めようとしている。

 倒すべきインクブス、救うべきウィッチ、敵か味方かもわからないウィッチに……とにかく陣営が多い。

 彼女の矛先はあくまでインクブスに向くだろうけど……それが他のウィッチにも当て嵌るかといえば、もちろん違うわけで。

 つまり頭を使う。そこに私という初対面のウィッチが介入したら……

 

「私が行こうものなら、余計に拗れるよね。もし介入するとしても……それは一瞬でいい。あとは彼女が上手くやってくれる……と祈ろう」

「……どちらに祈られるのですか?」

「それはもちろん、彼女にだよ」

 

 私の信じる者なんて、彼女くらいだよ。

 この世界に、神様なんていないと思うから。

 

 ─────油断してたか。

 後ろの存在に気付くのが遅れた。

 

「あなたは行かなくていいのかしら? フルールラム」

「私が行っても邪魔になるかもだからね、ラーズグリーズ」

 

 ナンバー1、ラーズグリーズ。

 自他ともに認める最強のウィッチが、私の後ろにいた。

 いつの間に、というのは考えるだけ無駄か。

 後ろに佇んでいたラーズグリーズは、私の横に並んだ。

 

「でも、シルバーロータスの危機には馳せ参じるんでしょう?」

「必要な時には、必ず。ラーズグリーズはどうなの」

「今は様子見。介入するのは、ことが終わったあとね」

 

 ……なるほど。

 それがラーズグリーズの意思なのか……それとも国防軍の意思なのかは知らないけど。

 わかってて放置している。そういうことだろう。

 私は子供だから、陳腐な感想しか出せないけど。

 大人の戦い、というやつなのだろうか。

 ……しかし、ラーズグリーズもいるのなら私はいらないか。

 

「……これ以上は過剰戦力かな」

「あら、帰るの?」

「ラーズグリーズ。あなたもいるなら私は必要ない」

「私が助けないとは思わないの?」

「……思ってもないことを言わないでくれる?」

 

 他ならぬラーズグリーズが。

 彼女の戦力に助けられていることを実感しているあなたが、彼女を助けないはずがないだろう。

 私は数いるウィッチの一人に過ぎない。私がいなくなったところで、また別のウィッチが育つ。

 けどラーズグリーズと彼女は違う。

 替えが効かない。

 だからこそ、その価値は計り知れない。

 そのことをラーズグリーズ自身が理解しているはずだ。

 そしてラーズグリーズは溜息を一つ。

 

「もう終わりなら、帰るよ」

「……最後に一つだけ」

「何?」

 

 何処か不機嫌そうに、ラーズグリーズは言葉を紡いだ。

 

「英雄の死因って、何か知ってる?」

「裏切り」

「……正解は過労よ」

「ふーん?」

 

 ……過労か。なるほど、たしかに。

 彼女とラーズグリーズは、よく働いている。

 それこそいつ休んでいるのかと疑問に思うくらいには。

 そうして背負いすぎて、許容量を超えた人から……潰れていく。

 ……確かに、彼女が陥りそうな状況だ。

 ただの推測でしか、ないけど。

 

「じゃあね」

 

 そう言って、私はその場を立ち去った。

 

「……彼女、シルバーロータスって言うんだ。初めて知ったな」

 

 そんなことを、小声で呟きながら。

 

 

 

 

◆

 

 

 

 

 そのあと。

 複数のウィッチが入り乱れた戦いが、どのような結果になったのかはわからない。

 いつもと変わらない……ように思える。

 少なくともすぐにわかるような変化はなかった。

 けれど。

 彼女の虫は健在。

 彼女の無事が確かであることは、確信できた。

 

 少なくとも、今はそれだけで十分だ。

 

 

 




 鏡を見ろ。

 ラーズグリーズが当時の戦いを詳しく見ていたかどうかは不明なので、何処かで見ていた、という予想で進めています。

 働き過ぎにはご注意を。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。