シルバー・アウトサイド   作:オルフェイス

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 シルバーロータスは複数の小さな歯車から構成された巨大な歯車という認識。
 うちの主人公はそれを回す……もしくは回してもらってる小さな歯車の一つ。
 そんな主人公に何が出来るのかと言うと……まあインクブスを殺すくらいだよね。


モメンタリー モメント

 

「一、」

 

 切り裂く。

 インクブスの、敵の命を刈り取る。

 首を、頭を、胴を。時には縦に両断する。

 手慣れた作業だ。しかし今回は数が多い。

 出来る限り手早く行こうか。今は時間が惜しい。

 

「二、三、四、五、六、」

 

 斬撃のマジックを飛ばす。

 あらゆる障害物を切り裂いて、敵を屠る。

 少なくとも目に見える範囲にいる敵は殺せている。

 ……普段なら、もっと近付いてやるんだけど。

 今回に限っては遠くからでも切れる手段を取った。

 

残存数、

「きりがないから今はいいよ。それより……どう思う、これ」

大量のインクブスによる侵攻……しかし

「インクブスだって馬鹿じゃない。ただ攻め込んだわけじゃないでしょ。ってことは何か目的があるはずだけど……」

 

 唐突だった。

 何の前兆もなく、大量のインクブスがポータルの生成と共に現れた。

 おかげで逃げようとしている人々の避難で国防軍は手一杯。

 ウィッチも奮闘してるけど……今回に限っては彼女のファミリアは役に立たないか。

 むしろ、余計に混乱を助長することになりそうだ

 となればナンバーズの出番になるんだけど……

 

「他のナンバーズは?」

こちらの異変に気付き、向かっているとのことです

「ならすぐに来るか。そろそろここからじゃ殺しきれなくなってきたし……打って出ようか」

 

 インクブスは皆殺しだ。

 ……しかし優先すべきは民間人の救助。そこを履き違えてはいけない。

 チラリと、上空を見上げる。彼女の虫が、何匹も見えた。

 彼女が何もしないまま、とは考えられない。

 裏路地やマンホールなど、狭くて見えづらい場所に追い込めば……あとはファミリアが処理してくれるだろう。

 

「それじゃあ、行くよ」

 

 そうして私は空に身を投げ、インクブスへと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

ぐべぎゃ

「数多いなぁ……嫌になってくるよ」

 

 インクブスを一体斬り伏せる度に、追加のインクブスが出てくる。

 嫌になるほど多い。ゴキブリ……いや、ゴブリンか。

一匹でも見かけたらきりがないほど出てくる。

 しかも、種類も多い。

 中には見たことのないケンタウロスっぽいやつもいた。まあすれ違い様に斬り伏せたけど。あいつらカウンターに弱いよね。

 

くっ、くそっ!

「あーそっちは、」

 

 一体のインクブスが路地裏に逃げ込もうとしている。残りの一体だ。

 しかし、まあ末路はわかりきっている話で。

 逃げ込んだインクブスの悲鳴が聞こえてくると共に、

大量の捕食音が辺りに響く。

 相変わらず、彼女は凄い。私様にもそういう事が出来たらなぁ。羨ましいぜ〜。

 ……ちょっと余裕が出来てきたかも。

 いやそんなこと考えてる場合じゃない。

 インクブスの死を見届けたあと、走り出す。

 すれ違ったインクブスは切り裂き、民間人を見かければ保護する。

 

「そろそろ数も減ってきたかな」

ナンバーズ、及び他のウィッチも戦闘を行っています。取りこぼしは限りなく少ないかと

「彼女がいなきゃ、どれだけ被害は広がってたろうね」

 

 私の行動は、迅速と言えるほどに早くはなかった。

 一応、奥の手はあった。つい最近思いついたものだ。

範囲も広い。エナにも余裕はあった。

 ……けど、アレは使ってしまえば敵味方の区別なく

()()()()だ。

 孤軍奮闘。そういう状況でこそ使える。今の状況では

使えなかった。

 幸いだと言えるのは……私が急ぐまでもなく、()()()がインクブスを的確に殲滅してたってところかな。

 おかげで避難所に行くインクブスは全滅してる。

 

「あとはネームドだけど、」

ナンバーズが大半を殲滅しています

「流石。私も何体かやったけど……全部は無理か」

 

 ネームド。

 私も何体か見かけ、処理した。

 恐らく、被害も少なく出来ているだろう。

 ……ゼロとは、言えないだろうけど。

 

フルールラム

「ん、どしたの?」

殲滅が完了したようです

「おお」

 

 ……どうやら終わったらしい。

 なんだか、あまり貢献できた気がしないなぁ。

 こういう範囲が広い場所での戦闘って、私様には向いてないと思うのよ。

 

「あとは後始末だけ?」

それは国防軍の仕事でしょう。刀華、あなたはもう休むべきです

「……わかったよ、もう」

 

 相変わらず親みたいな……いや本当にそういうものなのかはわからないけどさ。

 ……ま、いいか。

 終わり良ければ全て良し、と。

 

「それじゃあ、帰ろっと」

 

 今日も今日とてインクブスが数を減らした。

 それで満足しよう。

 

 

 

 

 

 

「氷室さん……」

「どうして……うぅ」

 

 クラスの雰囲気は暗い。

 教室に配置された沢山の机。

 そのうちの一つにぽつんと置かれた花瓶。

 ……それは、その机にいた人が死んだことを表していた。

 私が……守りきれなかった命だ。

 

「……」

 

 普段は能天気になる私だけど。

 今ばかりは、明るくなれそうにない。

 重い雰囲気の中、先生がやってきてありふれてしまった日常が始まる。

 

 

 そして学校が終わり、下校時間になった頃。

 私は一人で歩いていた。

 

刀華、気に病まないでください。あの状況では、全てを守り切ることは不可能でした

「……わかってはいるけど、さ」

最善は尽くしたと、私は思います

「だといいけどね」

 

 普段は。

 走ったり、見かけたら子どもと遊んだり。

 そんな寄り道をしながら帰る。

 ……今は走りたい気分でもないし、子どもの姿は見えない。

 インクブスの襲撃があったんだから、そりゃそうなるよね。

 

「世界って、本当に残酷」

……

「……けれど」

 

 だからこそ、思う。

 こんなにも残酷な世界だけど。

 救いのない現実が待ち構えている世界だけど。

 未来の見えない、世界だけど─────

 

「守りたいよ、こんな世界でも」

刀華……

「いつかきっと、皆が幸福になれる日が来るって……信じたいから」

 

 そうでなければ。

 今まで犠牲になった人たちが浮かばれない。

 その身を犠牲にして人々を守ってきたウィッチが報われない。

 そんなの、嫌だから。

 

「……さぁて、辛気臭いのはここまで! 走るか!」

 

 ふははは、いつまでも暗くなってる私様だと思うなよぉ?

 インクブスなんざいつか滅ぼしてくれるわ!

 戦ってる最中に思いついたアレが出来るのなら……ふふ、逆侵攻も夢ではないかも?

 そうと決まれば特訓……あーでも小言言われそうだし、しばらく日を開けたほうが─────

 

 人とすれ違う。

 その一瞬だけ、スローモーションになったかのようだった。

 背が低い。私よりも小さい。けどあんまり差はない。

数cmくらい?

 黒い髪を長く伸ばしている。清楚系な感じ。

 学友の人と話してるから、声も聞こえた。とても可愛いロリータボイスだった。

 そして何よりも……とても嗅ぎ慣れた、けれど今まで嗅いだものよりも芳しい─────()()()()()

 

─────(見つけた)

 

 思わず呟いてしまった。

 探していた、わけではない。

 けれど、誰よりも追い求めていた人ではあった。

 自ら会おうとは思ってもみなかった人だった。

 それが、こんな……こんな形で、わかるなんて。

 しかも……

 しかも……!

 走らせていた足を少しずつ緩め、最後には止める。

 

……刀華?

 

 パートナーが心配そうに声をかけてくる。

 けどごめん、今はそれどころじゃない。

 しゃがみ込んで、思いっきり息を吐き出す。

 

「─────はぁぁぁぁぁぁ……」

 

 ─────好みドンピシャじゃないですかぁ!

 はぁ好き!

 あんな可愛い声で私の好みにピッタリ過ぎて、もう奇跡だよ!?

 あ〜たまんないっ、脳内再生余裕だぁ。

 やばい、頭の中で反芻しそう。してるわ最高か?

 

刀華……落ち着いてください、何やら荒ぶっているようですが

「……………すぅ………ごめん」

 

 ……………こんなこともあるもんだなぁ。

 誰よりも尊敬するウィッチが、私好みの美少女だなんて。

 巡り会えた幸運を私は忘れないだろう。

 それをしっかりと噛み締めて、明日も頑張ろう。

 今の私なら何者にも負けない気がする。

 

 

 

 

 

 

「……」

「東さん?」

「いや、なんでもない」

 

 




 一瞬。

 主人公は技に名前はつけない派。
 そして言ってなかったけど、鼻が良いので匂いフェチ。
 そして偶然すれ違ってしまった原作主人公。刀華は推しを見つけた模様。

 変態だね、うちの主人公。良い空気吸ってない?
限界化してるし。
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