グエルなんだがミオリネ抱いた   作:鳥羽

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水星の魔女最終話本当に良かったです。終わって虚無になってます。彼彼女達の話をまだまだ見ていたい気分です。涙出るわ、もっと見たいよおおお。約一年間ありがとうございました。



二年目⑨

 トレーニングルームでカミル達と鍛えている最中、勢いよく扉を開いて中に入ってくる少女が現れた。外側に跳ねている明るい茶髪が特徴のその少女は、パイロット科一年生のフェルシー・ロロ。そして彼女の後ろで申し訳なさそうにしている落ち着いた茶髪の少女がメカニック科一年のペトラ・イッタだ。

 

「グエル先輩! グエル先輩!」

 

「フェルシー、危ないから廊下は走るなよ。それで、そんなに慌ててどうしたんだ?」

 

「うっすみません! それであのっ……ミオリネと踊ったって本当っすか!?」

 

「おいおい、お前達もか……その件なら本当だ。ていうか朝からみんな気になりすぎじゃないか? 今日だけで何十回も聞かれたんだが」

 

 そう、ミオリネと踊った日の翌日。

 つまり今日の段階で既に学園中で俺たちが一緒に踊ったという噂が流れているみたいだった。人から普段話しかけられないと言っていたミオリネにも大量のメッセージが届いてるみたいで、朝から凄く鬱陶しいと怒りのメッセージが俺に何度も届いた。

 

 とはいえ正直な話、俺に言われてもどうすることも出来ない。

 気にしないことができないなら、とりあえずほとぼりが冷めるまで部屋なり何処かなりに隠れていたらどうだとしか言うしかなかった。この状況で会いに行っても周りが騒ぎ出して逆効果になるだろうしな。お互い今日はそれで行こうという作戦だ。

 

 今も生徒手帳が鳴ったから見てみれば、また知った名前からだ。決闘で戦ったやつとは大体登録しあってるからな。内容はどれどれ……婚約者と順調で良かったよ。それでミオリネとどこまで進んだだぁ? 何も進んでねぇよ! 交流のある奴らからは様々な同情半分冷やかし半分でメッセージが来る。流石にこうも多すぎると俺もちょっとめんどくさくなってきた。

 

「それはまぁ……あのグエル先輩とミオリネですからね。この学園で気にならない人はいないですよ」

 

「そんなにか?」

 

「グエル、グループ総裁の娘と御三家の御曹司の婚約ってのは普通グループ内の人間からしちゃ気になるもんだぜ。しかも二人は、絶賛反抗期中のおてんば姫と前代未聞の三桁勝利の最強ホルダーだ。そりゃどうなってるかなんて絶好のゴシップだろうさ」

 

「そういうものか……俺たち、実際はただの子供なのになぁ」

 

 俺は親父の仕事を手伝っちゃいるが、関わっているものは経営よりも正直MSテストの方が多い。反発具合を見てるとミオリネはそういうのもないだろう。つまり俺たちはシャディクのように実績が特にあるわけではない唯の子供なのだ。

 

 御三家の息子や総裁の娘といったものは、卒業後に役に立つことはほぼないだろう。それらはあくまで親の恩恵によるものであって、決して自分の実績ではないから当然だ。新規の客から契約とってこいと親父にやらされた時は、本当にそれを感じた。俺たちは他の奴らと殆ど変わらない。だから俺たちが特別注目されるようなことは、実際のところ何一つ無いのだ。

 

「大人の視点から見たらそうかもしれないですけど、グエル先輩を知ってる人から見るとやっぱり特別なんですよ。特にこの学園を変えてるんですから尚更です」

 

「変えたと言ってもなフェルシー、俺は別にそんな大袈裟なことをした覚えはねぇよ」

 

「あれだけ戦っといて何を言ってんだグエル。この学園に入学した当初なんて、どうやってもスペーシアンとアーシアンが仲良く駄弁ってるとこなんて想像できなかったぞ。飯にガム吐くような奴だっていたのに、今じゃアーシアンを差別してるのなんて少数派だ。そんなのお前にしか出来ねぇよ」

 

「変わったんだとしたら、お前達や地球寮の協力あってこそだと思うよ。結局俺一人で変えられたことじゃないしさ」

 

 そう、俺一人の力では何も変わっていない。

 表向き差別を辞めさせたって心の奥でアーシアンを嫌悪していたら何も変わらない。俺が力を振るえば、多少の問題は解決できるとは思うが、それは根本的な問題の解決にはならない。

 

 だが学園生活の中でみんなと過ごし、スペーシアンとアーシアンが一人の人間として互いに交流し合うことで彼らは少しずつ変わっていってる。

 

「ったく、褒め言葉くらい素直に受けとれよ。お前が動かなかったら今頃もっと酷い状況になってたろうぜ。それに、これだけ強ければ誰も文句は言えないさ」

 

「そりゃ当たり前だろ。相手がどんな不正をしていてもグエルはいつも正々堂々勝ってきたんだからな。これで文句とか言ってきたら寮の恥になるだけだろ」

 

「結果こそが全てって言葉がここにはあるからな。それに俺が一番ルールに則ってるからこそ、相手もルールを守ってくれてるところもあるだろうさ。だが問題は決闘を受けないやつだ。学校や教員は口頭での注意ぐらいで何もしない以上、俺たちで何かそういう組織を作る必要があるかもな」

 

 

 

 

 今日は決闘委員会の仕事がある。

 今から決闘が行われるからそれを見守らないといけない。場所の確保を始めとした事前準備も面倒だが、もし決闘の際に火がつきでもしたら消火の指示なども出さなくてはならないため、一応目が離せない。

 

「朝から大変そうだな、グエル」

 

 シャディクは相変わらず学園では独特の真ん中開きファッションをしながら、飄々とした様子で喋りかけてきた。

 

「まったくだ。色んな奴から質問攻めにされて大変だったんだよ」

 

「ははっ、それはご愁傷様。その様子じゃ花嫁の機嫌も悪いんじゃないのか?」

 

「……その通りだよ。イライラしすぎて部屋に帰ったってメッセージが来るくらいだからな。一応これが終わったら会いに行こうと思ってる」

 

「花婿は花嫁のご機嫌取りか……それで、実際のとこミオリネとはどうなんだ? 理事長室に何度も出入りしてる噂だって流れてるんだ、別に悪い関係ではないんだろ?」

 

「なんだよ急に。どうって言われても普通に婚約者としか言えないぞ」

 

「なに、昔彼女と事業プランを作っていた身としては、君がミオリネと上手くやれているのか気になっていてね」

 

「それは凄いな。二人は随分仲が良いんだな」

 

 そんな話はミオリネからは一つも聞かなかったので知らなかった。まったく、ミオリネも友人がいるんだったら教えてくれれば良かったのに。それにしても、経営戦略科で成績トップクラスのミオリネと、パイロット科だがなんでも出来るシャディク。二人が手を組めば凄そうなものが出来そうだな。

 

 

 

 委員会を終わらせて理事長室にいるミオリネに会いにいくと、引越しでもするのかというほどの荷物を持った彼女と出口で会ってしまう。

 

「あっ」

 

「あー……」

 

 お互い顔を見合わせてしまう。今日のことを思い返し、この荷物を持っていくミオリネを想像するともはや一つしか答えはなかった。俺は彼女の肩に手を置いて宥めるように言った。

 

「ミオリネ、いくら揶揄われたからって流石に学園を辞めるのは性急すぎないか?」

 

「辞めないわよバカ! てかなんでアンタがここにいんのよっ!」

 

 ミオリネは顔を赤くしながら怒って言った。どうやら揶揄われすぎて学園から逃げ出すわけでは無いようだ。

 

「一応様子を見に来たんだが、辞めないならいいさ。なんか色々言われてるからな。もしそうなったらどうしようかと思ったんだが……大丈夫そうで安心したよ」

 

「グエル……アンタもしかして心配してくれたの? ふぅん……」

 

 ミオリネが嬉しそうにニヤニヤと笑った。俺はその表情を見て、しまったと思った。余計な事を言ってしまったかもしれない。

 

「そりゃ当然だろ。というか、そうじゃないんだったらなんでそんな大荷物なんて持ってるんだ?」

 

「それは今日からアンタんとこの寮に住むからよ」

 

 ミオリネは俺に指を刺してそう宣言した。意味が理解できずもう一度聞き返してしまう。

 

「えっと……悪いミオリネ。もう一度言ってくれないか」

 

「だ、か、ら! わたしは今日からアンタの寮で暮らすのよ!」

 

「…………は!?」

 

 彼女の指先が言葉と共に何度も俺の胸をつつく。そして言葉の意味を理解して、俺は思わず固まった。ミオリネは頬を染めながら言い直したが、聞き間違いではなかった。困惑具合にミオリネは少し不機嫌になる。

 

「なによ、あんだけ誘っておいていざとなったらダメなの?」

 

「い、いや構わないが……急だなって。やっぱり今回のことでなにかあったのか?」

 

「そうよ。今回のことでアンタのとこにもバカみたいな量のメッセージが来たでしょ」

 

「そりゃあな。てかミオリネは読まずに無視してんのかと思った」

 

「無視してたんだけど直接言ってくるやつがいてね、親の脛を齧ってるだの、アンタに相応しくないだのうるっさいのがあるから、見せつけて黙らせてやろうと思って」

 

「……なんか悪いな」

 

「元々誘われてた訳だし、そろそろ決めないとって思ってたからタイミングが良かっただけよ。それに悔しいけど正しいのもあるから、別にアンタが気にすることじゃないわよ」

 

 俺の困惑した顔を見たミオリネは、圧のある笑顔で詰めてきた。

 

「それともわたしが婚約者の寮に住んだらおかしいかしら?」

 

「まぁ……おかしくはないな」

 

「じゃあいいわよね」

 

「ふっ、そうだな。じゃあさっさと荷物を寮に運ぶとするか」

 

「うん。ありがと」

 

 俺はミオリネの荷物を持って歩き出した。




エピローグ後の彼女達に目一杯の祝福があらんことを
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