グエルなんだがミオリネ抱いた   作:鳥羽

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カヘッ


二年目⑩

 ヒールを履いているミオリネに暗闇を長く歩かせるわけにもいかず、荷物とミオリネを後ろに乗せてスクーターもどきを操縦していた。そしてジェターク寮が見えてくる頃、俺は共にいるミオリネに聞いてみた。

 

「そういや入寮の手続きっていつやったんだ?」

 

「え?」

 

「え?」

 

「……グ、グエルがやってくれてるんじゃないの?」

 

「いや、こんなに性急に決まるとは思ってなかったし、そもそも本人がいないと出来ないらしいんだ」

 

「はぁぁぁ!? じゃあどうすんのよ! 今から学園に戻る訳にはいかないでしょ! ていうか必要だったら教えなさいよ!」

 

 後ろのミオリネから背中を何度も強く叩かれる。おい待て運転中は危ないって。

 

「ミオリネ、寮を支援してるのは企業だ。当然寮で問題を起こせば支援してる企業も悪い影響を受けるんだ。だから色々手続きが必要になるって知ってると思ってたんだよ。言わなくて悪かったな」

 

 ……後ろを見れないから答えを知ることは出来ないが、それでも分かる。今の彼女は激怒していると。完全に怒り心頭であろうミオリネは次に何をしてくるか分かったものではないので、俺は見栄を張ることにした。

 

「確かに学園に戻るには少し遅い。それに俺が誘った責任もある。副寮長として俺がなんとかしよう」

 

「……本当に?」

 

「本当だ。婚約者のことを少しくらい信じてくれ」

 

「そう……ならアンタのことを信じるわ」

 

「おう、任せとけ」

 

 ミオリネは納得してくれたようで、それ以上何も言うことはなかった。

 

 

 

 

 

「流石に入寮は今日では無理ですね」

 

「えっ?」

 

「一般的に無所属の学生はホテルで仮宿泊し、所属する際には寮や学園から指定された手続きを行ってもらう必要があります。そうでないと企業グループ内や生徒間で問題が起きてしまいますから」

 

「あの……副寮長とか権力的なもので何とかなりませんか?」

 

「流石に困りますグエル様。……ですが入寮ではなく御友人の宿泊という形であれば副寮長であるグエル様のサインがあれば問題ありません」

 

「本当ですか? 良かったなミオリネ」

 

 俺はミオリネに向けてgoodのハンドサインを見せる。しかし管理人の次の言葉が衝撃的すぎた。

 

「但し、行動範囲は基本的にグエル様の部屋のみです。また就寝場所も同様です。あくまで寮生ではないことをお忘れなく。ではご理解頂けましたら、こちらへサインをお書きください」

 

「ちょっ、ちょっと待ってください。それはおかしくないですか? 前に地球寮の者等が泊まりにきた時はそんなこと無かったじゃないですか」

 

「それは個人間ではなく、あくまでジェターク寮と地球寮の合宿という建前があってのことです。ですが今回は婚約者の立場といえど女性を連れ込んでいることが周囲に露見しないためにも必要なのです。もしも知られることがあればジェターク社の評判にも繋がりますので」

 

「あーもう! わかったわよ! こうなったらグエルと一晩過ごしてやるわ!」

 

 大声を出して、俺とは正反対に顔を真っ赤にしたミオリネ。覚悟を決めた彼女の表情を見て、俺は説得を諦めて渋々とペンを走らせた。そして俺はミオリネと共に荷物を持って自室へと戻った。こうして俺の部屋にミオリネが泊まることになった。

 

「……本当にこれで良いんですよね。ヴィム・ジェタークCEO」

 

 管理人の声は虚空に消える。

 

 

 

 会話を楽しみながら食事を終え、気付けば部屋に常設されているシャワーを浴び終えていた。おかしい、職員が夕食もわざわざ持ってくるなんて普通じゃあり得ない。誰も部屋に来ないのもおかしいな。何か仕組まれているのではないか、そう違和感を感じるがそれよりも俺の心を占拠する問題が一つある。

 

 先にベッドで寛いでいたミオリネは透けて肌がうっすらと見えるチュールナイトガウンを着ていて、その中には肩紐が細いノースリーブのレースとフリルが使われている可愛らしい薄いピンク色のネグリジェを着ている。

 

 それに加えて湯を浴びたことで火照った身体は、肌がしっとりとしていて艶があり、普段はタイツで見えない細くしなやかな足が露わになっている。それはまるで見てはいけないものを見てしまっている背徳感がある。

 

 視線を外すように次に彼女の顔を見てみれば、ほんのり上気した頬が少しピンク色になっている。それに何故だか、こちらを見る彼女の表情が普段のツンツンとしたモノよりも暖かく柔らかいように感じた。

 

 つまり何が言いたいかといえば、健康的な色気のようなものを感じてしまう。それにいくらなんでも無防備すぎないか? 俺は婚約者だぞ? あれ? 婚約者ならいいのか? 

 

 自分のベッドに女子がいるのは初めての事で、特にミオリネがいるという現状がこの世界に生まれてから初めて体験する緊張とも呼べるものだった。気まずさから何だか自分のベッドにすら行きづらい。

 

「あ〜俺は別に床でも寝れる「婚約者を床で寝かせるわけないでしょ。いいから早く来なさい」

 

「……分かったよ、今行くから」

 

 こうしてミオリネに促されるまま、壁側に俺、部屋側にミオリネが寝る形となった。……これはかなり恥ずかしいな。お互いの息遣いや体温が感じられるほど近い距離にミオリネが居る。その事実だけで心臓が高鳴ってしまう。正直に言えば俺も男なのでそういう欲が無いわけではない。だが今はこの状況に興奮を覚えるより、ただひたすらに不安だった

 

「ち、近くないか?」

 

「そうかしら?」

 

「いや、だってほら」

 

「……ねぇ、アンタはわたしと一緒にいるのは嫌?」

 

「えっ?」

 

「答えて」

 

 ミオリネは真剣な眼差しでこちらを見た。

 そこにはいつもの自信満々な様子は無く、どこか不安に潰れそうな目をしていた。俺は彼女がどうしてこんな質問をしたか分からない。だけど、ここで答えないときっと後悔すると直感的に思った。だから俺はミオリネの目を真っ直ぐ見て答えた。

 

「嫌じゃない。俺はミオリネと一緒にいて楽しいと思ってるし、婚約者がミオリネで良かったと思ってる」

 

「そっか、嬉しい」

 

 ミオリネは嬉しそうにはにかんだ。その姿がとても愛らしく思えた。彼女がおかしいのか、俺がおかしくなっているのか、このまま話していると不味い気がするので切り上げる。

 

「じゃ、じゃあ電気消すぞ」

 

「うん、おやすみグエル」

 

「あぁ、おやすみミオリネ」

 

 

 

 部屋の照明を落とすと暗闇だけが残る。そして目が慣れて暫くすると、ミオリネの息遣いや気配をより感じるようになってきた。今、彼女はちゃんと寝れているだろうか。落ち着かず彼女がどうなっているのか気になって振り向くと、こちらを見ていたミオリネと目が合ってしまう。




バイト始めてから身体だるすぎてなにもやる気が出ませんでした・・・
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