グエルなんだがミオリネ抱いた 作:鳥羽
ミオリネに挨拶しに行くのはいいが、そもそも彼女がどこにいるのか分からない。そもそもどこの寮に入るのだろうか。……いや彼女の現状を考えると、どこの寮に入っても好奇の視線で見られて話題になるだろう。それが聞こえてこないなら、まだ決まっていないのかもしれない。
御三家ならグラスレー・ディフェンス・システムズが無難そうだがグラスレー社のCEOであるサリウス・ゼネリとデリング・レンブランは昔に上下関係が逆転して以降仲が良くないと父が言っていたな。
ミオリネがこの学校に入ったのはデリングの強制だろうし、仮にそうならグラスレー寮の可能性は無い筈。かといって良い場所があるわけではないだろう。もしかして……どこにも入らないという可能性もあるのか? なら彼女はどこで生活するんだ。
色んな人に聞いていった結果、ミオリネは理事長室の方に行ったっきり目撃情報はなかった。こっち側だと彼女は理事長室にいる可能性が高いが、まさか本気でここで寝泊まりする気か?
た、確かに理事長であるデリングはめったなことではここには来ない。だが、だからと言ってこれはどうなんだ。父親はこれ知っているのだろうか。無断ならなんというか……俺が言うのもあれだが父親の権力に甘えすぎてないか? とはいえ彼女の境遇を考えるとどこにも入りたくないのは分かる。
「ミオリネ・レンブランはいるか?」
「いるけど……なに?」
扉の開いた先には、ひどく不機嫌そうにこちらを見る白いロングヘアーが特徴の少女。彼女がミオリネ・レンブランだ。華奢な体格にヒールを履いてこの背丈だと、おそらく身長は150cm辺りになるだろう。俺とは結構な身長差で少し見下ろす形になる。
「初めまして、俺はパイロット科の二年グエル・ジェタークだ。いきなりだが今日は挨拶にきた」
「挨拶? ってその白い制服にその名前……アンタがホルダーの」
「あぁ今のところ俺がホルダーだ。とは言っても去年からの引き継ぎだから今年はどうなるか分からないけどな。お互い親には苦労するだろうがこれも何かの縁だ、よろしく頼むミオリネ」
人間は第一印象が重要であり、その半分ぐらいは見た目で決まるらしい。ただでさえ急に生えた婚約者という嫌われやすい立場なのだ。俺は出来る限り明るく、それでいて温和な笑顔で手を差し出す。
しかし返ってきたミオリネの反応は決して良いものではない。
「何がよろしくよ……わたしはあんたたちの道具なんかじゃない! 帰って! わたしはクソ親父の決めた結婚なんて絶対に認めないから!」
憎らしそうに睨みつけた後、俺の身体を部屋から遠ざけるように軽く突き放して扉がロックされる。残った静寂のみが廊下を支配する中、どうしようかと内心明け暮れていた。
クソ親父という言葉からどう考えても親子関係は良くないってことが分かる。デリング・レンブランはグループでも独裁者で有名で非常に敵が多い。そのうち後ろから刺されるんじゃ無いかと思うほどだが、家庭内でもあれなら単に反抗期という訳や今回のことだけではなく、けっこう根が深いのかもしれない。
とはいえ不本意ながらも彼女の婚約者という権利を得てしまったのなら、婚約者との関係を良好にする責任も俺にはあるのかもしれない。……いややっぱないな。
……そういえばホルダーの特典にミオリネがくっ付いたからといって、俺に勝てる可能性が高いであろう他の御三家は特に変わりなかった。
元々何事にも無関心なエランはともかく、グループの次世代の幹部候補と言われるシャディクも特に興味なしと言ったふうな態度だ。父さんと同じようにサリウスやシャディクにとって婚約者という立ち位置はやっぱり欲しいものじゃ無いんだろうか。
いや、何考えているか分からないが賢いシャディクのことだ。隙を狙っているか決闘を受けざるをえない状況にしてくるかもしれない。
だとしても当分俺はホルダーでいるだろうし、ミオリネが単純に俺が嫌いなら仕方ないがホルダーってだけで嫌われるのは納得いかない。こういうときにシャディクのようなコミュ力が羨ましいと正直思う。なんせこのまま本当に結婚までしてしまったら父さんと同じで逃げられそうだ。というか結婚する前までに逃げられそう。
次の日、俺はもう一度同じ時間に理事長室に来ていた。理由は勿論ミオリネに会うためだ。昨日と同じように扉から出てきたミオリネは、昨日の今日でまた来たのかと嫌な顔を隠さない。そんな様子なのに正直出てきてくれただけでありがたい。
「なにアンタ……また来たの?」
「昨日はいきなり来て悪かったなと。とりあえず菓子折りと俺の連絡先だ。ミオリネの好みを知らなかったから俺の好きなモノが入ってる。合わなかったら別のものを持ってくるから言ってくれ」
「いやいらな「連絡先のことだが婚約者とか関係なく同じ学生だからな。お互い相談事をしにくい立場だろうし、何か困ったことがあったら連絡してくれ。それなりには力になれる」
「はぁ……分かったから。用が終わったならさっさと帰ってくれるかしら」
「また明日!」
今の段階で普通に話しても良くないと感じた俺は、短時間で帰ることにした。俺を見て怪訝そうな顔をしてはため息をつく彼女。因みに2度と来るな、という声は聞かなかったことにする。
二年生になった俺は、アーシアン差別を行うであろう多くの新入生を倒さなきゃいけないのかと思っていた。事実そういった者たちはいるのだが、実際に行動に起こしている生徒達は俺が想像していたよりも数が少ないのである。
おかしいと思って周りに話を聞けば、どうやら上級生たちが下級生たちにそういった行為を辞めさせているらしい。曰く御三家のおかしい奴と決闘させられて時間と金の無駄になるだけだそうだ。しかもこの話は一年の最後辺りには大体が知っていたらしい。
いや、別に俺はおかしくは無いだろ……。
精々、今の地球寮にパイロット科がいなくて戦えるレベルで操縦できる者もいないので、俺が勝手に決闘しているというだけだ。それにちゃんと無償じゃないしな。
俺やジェターク寮が使った機体の修理やメンテナンスをするメカニック科のカミル達の手伝いという形でバイトさせ始めたしな。まぁ最初は色々あったが今は上手くやれてるし……いや父さんにバレたらまっずいな。
けど地球寮のみんなって、この学校に来れるだけあって優秀だから仕方ない。想像以上に優秀だから地球寮の寮長と相談して、進級記念とボーナスってことで地球寮の酷い設備を彼らが維持しやすいレベルの範疇で改善した。小遣いは消滅したが。
話を戻すが確かに決闘に負けたら大抵機体はボロボロで、修理費も大変で会社だけじゃなくて寮でなんとかする必要もある。いくら経済的にスペーシアンが裕福といえど千差万別で、そんな毎日毎日負けてられないというのも事実である。
そう考えると今まで全勝してる俺にわざわざ決闘なんてしないわけで、どんなに良い条件でも負けるのが分かってんだから受けなくなるわけだ。嫌がらせしまくって決闘を受けざるを得ない状況にして、不正しても勝てなそうなら決闘せずに嫌がらせを続けることが出来るこのシステムって……やっぱとんでもないクソルールなのでは?
通ってる奴らがお偉いさんの子供だから学校側はビビって注意しないし、ちゃんと地球寮作ったんなら学校側でその責任とってくれえぇぇぇ!
ま、それはおいといて新入生にも活きがいいのはいるわけで、もう既に明日から決闘の予定が入ってるんだよな。当然トレーニングは欠かしてないから俺はいつでもいけるぜ。
そういや御三家だから仕方なく俺も今年から決闘委員会に入ったんだが、よく考えたら去年は申し訳ないことしてるよな。俺だけで相当な数戦ってその上他の生徒の決闘の会場やルール決めに毎回引っ張られて、みんな疲れ果ててた。
だから前年度決闘委員会メンバーには大きな区切りごとに、俺が飯を奢ったんだが。まぁそれでも嫌なら理事長に掛け合ってこのルール廃止にしてくれって話よ。