グエルなんだがミオリネ抱いた 作:鳥羽
温室に入れるようになり、あれから数週間ほどが経った。
俺はミオリネの手伝いを繰り返して行くうちに度々彼女から説明を受けていき、それなりに植物について知識を得ていた。その中で一つ思い出したことが、理事長室にあった植物はなんなのかということだ。
ミオリネに聞いてみると、じゃあ見に来なさいということで理事長室、というよりもはやミオリネの部屋になってる場所に入ることになった。当然のようにミオリネが理事長室を改造しているため、一階の中央には植物が植えてある。中を見てキチンと整理された部屋だなと感心する。
「なるほど、これがカブなんだな」
「ええ。六、七月頃には食べられるようになるわ」
カブ。別名はすずな、春の七草の一種で根と葉が食用になるんだそうだ。この品種だとだいたい60日くらいで収穫時期を迎えるらしい。こうして知ってみると色々な種類があって本当に面白いな。一日一日の成長は微細だが、それでも確かに成長している姿を見るのは嬉しさや楽しさを感じる。これはジェターク寮で何か育ててみるのも悪くないかもしれん。そう考えた時、ミオリネから休憩を勧められる。
「せっかく来たんだから休んでいきなさい。飲み物くらい出すわよ」
「お、ありがたいな。じゃあお言葉に甘えて」
階段を登るミオリネの後を追うように2階に上がった。栽培室がああなっているのだから、さぞこちらの部屋もこだわって改造されているのだろうと思っていた俺は、その光景を見た瞬間思わず顔を顰めた
「あぁまじか……なんだか頭が痛くなってきた」
何せ机や床には、ゴミ袋だけではなく空になった飲料やカップ麺の容器が、まるで歩く邪魔にだけならないようにとばかりに壁際に大量に置いてあったのだから。いやもう机の下にもゴミがあるんだがっ⁉︎ ミオリネはこんな状態でよく作業出来るな。俺なら気になって気になって仕方ないぞ。
温室や栽培用の部屋は綺麗だったのに、その反動とばかりに私室は汚部屋となっている。ミオリネにとってその二つが大事だとは分かるが、だからって他を疎かにしていいわけじゃないだろ。不幸中の幸いというやつではないが、床一面がゴミ袋で埋まってるとかじゃなくて本当に良かった。
しかもカップ麺の数が多いことから、明らかにインスタント食品ばっか食べているのが分かる。ミオリネの場合、学食を食べようとすれば嫌でも人目についてそれを避けたいのだろう。それと面倒くさいという気持ちも。それにあまり人の食事に口出ししたくはないが……それだけというのは流石に健康に良くない。そういう意味では寮に入った方が良いと改めて思う。
今日は休日、授業はない。時間がある今、少なくともゴミ袋に纏めるべきなんじゃないかと俺は思った。ミオリネは当日に慌てて捨てるような感じではないように見える。
「別にそこまで酷いわけじゃないし、そろそろ捨てようと思ってたのよ」
俺の言葉に納得いってないミオリネは、椅子に座って文句を言いながら小型の冷蔵庫を開こうとしていた。なので俺はそれに待ったをかけるように、扉が開かないようにと手で押さえた。
「待てミオリネ」
「あっ……ど、どうしたの? グエル」
その際、ミオリネと俺の指が僅かに重なってしまった。その時のこちらを見た彼女の困惑にも似た驚いたような顔を見た瞬間、触れていた手を反射的に遠ざけた。今のは俺が悪いな。彼女の方も気恥ずかしいのか顔が少し赤くなっている。
「すまん……いや……あのな、ミオリネ。休憩する前に部屋を掃除しないか?」
「へ?……あぁ〜別に今やらなくてもいいんじゃない?」
「そんなこと言ってたらもっと面倒くさい量になるぞ。溜め込んで悪臭とかし始めたらどうするんだ」
「うっ」
「今なら俺も協力できる。二人でやった方が楽だと思わないか?」
「はぁ……分かったわよ。やればいいんでしょ」
元に戻った彼女はため息をつきながらもやってくれるようだった。既にゴミ袋が散乱していれば一個くらい増えてもいいだろうと人間は思うが、せっかく綺麗にしたから維持しようとも思うのも人間だ。ここで踏み止まらないと、ミオリネがとんでもないことになるのが目に見えている。
「ペットボトルはふたとラベルを取って、本体はこの袋な。カップ麺は俺が回収する」
「シャツは……流石に自分でどうにかしてくれ」
「あとは大きめのゴミ箱を何個か用意して、よし。これでいいだろう」
数多あるゴミを捨て床を拭き、俺たちは掃除を終わらせた。本当に床に直置きカップ麺は酷い。流石にスープは無くなっているが、放置されてれば匂いは残るので辛かった。そしてミオリネが置きっぱなしにしないように容量のある捨てやすいゴミ箱を置いた。これでマシになるだろう、多分。
「なぁミオリネ、前に言ったジェターク寮の件。もし良かったら前向きに検討してみてくれないか? まず大量のゴミを溜め込む原因がそのカップ麺生活だと思うんだ。寮で食べればゴミは出ないし、後は一緒にいた方が楽しいしな」
「確かに味にも飽きてきたしね・・・でもごめん、もうちょっと考えさせて」
「そうか、好きな時でいいからゆっくり考えてくれ」