グエルなんだがミオリネ抱いた 作:鳥羽
ベネリットグループのとあるパーティーの招待状が届いた。俺は未成年なので適当にジュース飲んで、会社と関わりがあったり無かったりする色々な大人と世間話をするだけだ。つまりここで顔を売って人脈を作れってことなんだけどな。本当に面倒で大変なんだよな。
「ふーん、アンタは行くんだ」
「御三家ともなれば行かないわけにもいかないからな。そういうミオリネはやっぱり行かないのか?」
「そうね。わざわざあんなところなんて行ってクソ親父に会いたくないしね」
嫌な顔をしているミオリネ。総裁がどういうスタンスなのかは知らないが、彼女がこう言ってるなら今はそれでいいのかもしれない。
「今日は早く終わったわね。どうするグエル?」
「あ〜いや、今日はちょっとな。もうすぐ用事があってだな……」
「アンタにしては歯切れが悪いわね。なによ、わたしに言えないことなの?」
「まぁ……言いづらいことではあるな」
「ふぅん、じゃあ言わなくていいわ。行ってくればいいじゃない」
「すまん、恩にきる」
俺は何か後ろめたさを感じて温室を出ていった。そして向かった先にいたのは、一人の女子生徒であった。
元々御三家の御曹司という立場もあってか、プレゼントやラブレターのようなものは貰ってきた。アスティカシア高等専門学園に入ってホルダーになってからはそれが顕著になってきた。いや単純に人数が多くなってきたか異性を意識する年になったと言うべきか。
俺の目の前にあるモノたちの中には、直に手渡してきたものや弟や友人経由で渡されたものもある。かつてはラウダが俺の知らないところで管理してたそうなのだが、せっかく勇気を出してくれたのにそういう扱いはないだろう、という俺の言葉で考え直してくれた。
そういうわけで貰って待たさないように一つ一つ開封している。
言葉での告白ならその場で断れるのだが、手紙だと渡してきたと思ったら大概すぐに逃げられるし読まないで返すのも違うと思って、読んでその後に断っている。時々来る愛人でも良いですみたいのは流石に困るんだが……何とかならないのだろうか。俺は現時点で特に誰かと付き合う気はない。それに今はミオリネという婚約者もいるしな。
そして結局、女子生徒から告白されるところをミオリネに見られてしまった。相手からは見えなかったのは良かったが、その時からミオリネはなんだか不機嫌だ。おそらく婚約者のくせに何告白されているんだってことだろうということは分かる。結局その日はあまり機嫌が良くなることもなかったし、
「ホルダー様は女の子に大変おモテになられるようで良いご身分ね」
と言っていたしな。
隙が多いからされるんだとでも言われそうだな。そう思うとミオリネは美人だが、確かに告白されているところは見たことがない。というかこの学園に友達がいるのを見たことがない。仲良くなれそうなのはジェターク寮だとフェルシーやペトラ、地球寮にはニカ・ナナウラとかいるんだが……かといって俺が彼女たちにそうさせるのはなんか違うよな。
パーティー当日、俺はラウダと父さんと共に出席した。
あの学園にいると、学生服以外を着ることが滅多に少なくなってしまう。なので今着ている少し赤みがかったスーツは何度着ても少し落ち着かない。そもそも俺に関しては馬子にも衣装というわけで、まぁ見た目だけでも立派にしとこうか。
「兄さん、似合ってるよ」
「ありがとうな、そういうラウダもかっこいいぜ。あとついでに父さんも」
「ついでとはなんだ、ついでとは」
父さんはため息をついた。
「そういやデリングの娘とはどうなんだ。上手くやれているのか?」
「ミオリネとは仲良いですね。そろそろトマトが収穫できそうなんで楽しいです」
「おいグエル、何度も言ってるがジェターク社の人間が土いじ……あぁもういいトマトについて聞かされるのは懲り懲りだ。昔から興味あることには全然止まらないからな。まぁとにかく良好ならいい。地球にでも脱走されても困るからな」
「あっ父さん、シャディク見つけたから挨拶してきていい?」
「勝手にしてこい!」
「よし行くぞラウダ!」
「……まったく、いつからこうなったんだグエルは」
「……会った時からこうですよ、兄さんは」
会社仕様の髪を纏めたシャディクと話したあとは、相変わらず無表情のエランにも話をしてきた。学園関係者はもういないだろうと思っていた時、とある集団の中から一際目につく存在が現れた。
ミオリネだ。
いつもの学生服ではなく、パーティー用にドレスを着ている。
下ろしていた長く艶のある白髪はアップでまとめられており、陶器のように色白で透き通るような綺麗な肌が肩から首まで見える、深紅のストラップレスドレスを着ていた。美しく整った顔立ちに存在する唇には、薄い桜色のリップが塗られていて魅力的だ。
彼女のいつもと違う姿に俺はドキッとした。普段から美人だとは思っているが、普段以上に大人っぽく見えて見惚れているのかもしれない。そして俺の視線に気づいたミオリネと目が合った後、周りに失礼しますと言った風にして俺の方を向いて、こちらに向かって歩いてきた。
歩き方すら育ちの良さを伺わせるミオリネは俺の前まで来て止まる。
彼女からふわりと香る甘い匂いに思わずドキドキしてしまう。いつもと変わらない距離の筈なんだが、改めて見ると本当に顔が小さいなとか首筋が細くて白いなとか思ってしまって、余計なことばかり頭に浮かびそうになる。
俺は意を決して声をかけようとする。しかし、いざ言おうとしても言葉が出てこなかった。今までどんな感じでミオリネと話していたのか、忘れてしまったかのようだ。落ち着け、本当にどうしたんだ俺。変わらず行こう。
「……驚いた。ミオリネも来てたんだな」
絞り出した言葉。そして彼女は俺の顔を見上げながら口を開いた。
「本当は来る気なかったんだけどね。それにしてもグエル、緊張でもしてるの? てっきりそういうのはしないと思ってたんだけど」
ミオリネはふふっと笑う。
「しない筈なんだがな……綺麗だなって思ったんだよ、ドレスを着たミオリネを。まぁ早い話が見惚れたってことだな。やっぱりミオリネは凄い可愛いっていうのを実感したわ」
「はぁ⁉︎ ちょっとなんなのいきなり⁉︎ ……ま、まぁ? グエルもそのスーツ似合っててかっこいいわよ。学園じゃ制服とインナー、あとは運動服しか見たことないし、アレも良いんだけどこれも新鮮でいいわね」
ミオリネの表情は急速に真っ赤に染まっていた。なんだか俺も恥ずかしくなってきた。身体が暑くなってきそうだ。そして大事なことを忘れていた。
「そ、そうか。それは嬉しいな。あっ、そういや紹介してなかったな。紹介する、俺の隣にいるのが弟のラウダだ」
「……兄さんの弟のラウダ・ニールだ。いつも兄が世話になっている」
「えぇ初めまして。お兄さんの婚約者のミオリネ・レンブランよ。いつも貴方のお兄さんとは仲良くさせてもらっているわ」
二人が笑顔で握手をしているが……んっ? なんか握手が強張っているな。やっぱりいきなり会ったら緊張するってことだよな。順序よく合わせていこうと思ってたんだが、ここで出会ったんなら意味なかったな。
ジェターク寮のイメージカラーは、赤(マゼンタ)もしくは赤褐色らしいですわ。