Infinite Stratos ~Pupil to Beni from Ao~《瞳は蒼から紅へ》 作:ぬっく~
福音は顔を簪に向ける。
そこには無機質のバイザーに覆われた顔から何の表情も読み取れなかったが、そこに確かな敵意を感じた。
「くっ、『解放・固定!千年氷華!!掌握!!』」
もう一度、氷の女王を使おうとした瞬間…………
福音からの正拳突きをもろに受けた。
(え?……)
あまりの速さに警鐘すら間に合わなかった。
そして、頭部からゆっくりと、蝶がサナギから孵るかのようにエネルギーの翼が生えた。
「それでも…………私は…!!『魔法の射手 氷の…………』」
簪は魔法の射手を福音の顔面へと向かって放とうとした瞬間。
ドンッ!!
胸部から、腹部から、背部から、装甲がまるで卵の殻がひび割れ、小型のエネルギーの翼が生えた。それによるエネルギー弾の迎撃が魔法の射手を吹き飛ばし、簪の体も吹き飛ばした。
(そんなっ…………)
威勢を立て直しを計ろうにも、その眼前に福音が迫る。『瞬時加速』ーーそれも、両手両足の同時着火による爆発加速だった。
「くっ?『
光の剣を福音に向かって降り下ろすが、その腕の部分を真横に蹴られてしまう。
そして、次の瞬間には両翼から一斉射撃を受け、反撃らしい反撃も出来ず、簪は近くの岩場に叩きつけられた。
(ごめんなさい。一夏…………)
後方に待機していた専用機持ちは危険と判断し、福音に攻撃に開始したが、ものの数分で撃墜されてしまった。
福音は簪の前に降り立ち。
『危険度Sランク。目標最優先に排除』
福音は止めを刺そうと右手を振りかざした。
◇
さざ波を聞きながら女の子を眺め続けていた。
その歌、その踊りは、何故か俺を懐かしい気持ちにさせる。
(…………あれ?)
ふと気がつくと少女の歌は終わっていた。
踊りをやめ、じぃっと空を見つめる。
俺は不思議に思い、座っていた木から離れ少女の下へと向かう。
波打ち際までやって来た俺を、涼しい水の調べが濡らす。
「どうかしたのか?」
声をかけたが、少女はじぃっと空を見つめたまま動かない。
俺もなんとなく空を眺めると、少女の声が耳に届いた。
「よんでいる…………行かなきゃ」
「え?」
視線を戻すが、そこには少女はいなかった。
ーーあれ?
左右わ見るが、誰もいなかった。
俺は仕方なく木のソファに戻ろうと体を反転させたら、背中に声を投げかけられた。
「あなたは、力を欲しますか…………?」
「え…………」
振り向くと、白い翼を背中に生やした黒髪の中学生ぐらいの少女が立っていた。
「あなたは、力を欲しますか…………?何のために…………」
「ん?随分と難しい事を訊くなぁ」
波だけが俺と少女の間にある。
「…………そうだな。友達をーーいや、仲間を守るためかな」
「仲間をですか?」
「ああ、世の中って結構色々と戦わないといけないだろ?単純な腕力だけでなく、色んなことで」
俺は妙な饒舌に喋っていた。
「そう言う時に、できるだけ仲間を助けたい。この世界で共に戦うーーー仲間を」
その時、少女は静かに笑った。
「だったら、行かなきゃね」
「えっ?」
また後ろから声をかけられた。
振り向くと、白いワンピースの少女が立っていた。
「ほら、ね?」
手を取られ、にこりと微笑みかけられた。
「ああ」
すると、変化が訪れた。
ーー空が、世界が、眩いほどの輝きを放った。
その真っ白な光に抱かれ、目の前の光景が徐々に遠くほやける。
夢が終わる、そんな感じだった。
◇
福音は簪に向かって右手を振りかざすが…………
簪に届くことはなかった。
目を閉じていた簪はそっと開けるとそこにいたのは一夏だった。
「一夏…………?」
「良く頑張ったな。簪」
一夏は福音の右手に掴み簪への攻撃を止めていた。
「さあ、始めようか。福音!!」