Infinite Stratos ~Pupil to Beni from Ao~《瞳は蒼から紅へ》 作:ぬっく~
48時間の休息をもらえた~
「作戦完了ーーと言いたいがが、織斑!お前は独断行動により重大な違反を犯した。だから、帰ったらすぐに反省文と懲罰用の特別トレーニングを用意してやったから、喜べ」
「…………はい」
俺以外は正式な任務で行動していたらしく、俺だけがペナルティを受けることになった。
「あ、あの、織斑先生。そろそろ………怪我人もいますし…………」
「まあ、いい」
山田先生はおどおどとしながら、救急箱や水分補給パックを持って来たりと忙しい。
◇
俺は息抜きの為、食事の後、旅館を抜けだして夜の砂浜に来てた。
「ふうっ…………」
満月の今日は、真夜中でも明るい。
俺は穏やかな波の音を聞きながらぼんやりと空の月を見る。
「い、一夏くん…………」
名前を呼ばれたので、俺は振り向いた。
月明かりに照らされて姿を現したのは、浴衣姿の簪だった。
「簪…………?もう、大丈夫なのか?」
「闇の魔法、使い過ぎちゃたけど……大丈夫だよ」
「そうか……」
簪の両腕を見ながら呟く。
羽の様な白い痣。
闇の魔法を手にした時から現れる呪い。
(だいぶ、侵食が進んでいるな…………)
簪は誤魔化しているつもりだけど、バレバレだった。
「あんまり無理をすんなよ」
「うん…………あ!そうだ、エレンさんから伝言を預かってたんだ」
「エレンから?」
「エレンさんと私の魂の波長が同じでね…………たまに、外に出てこれるって」
どうやらエレンの魂は簪の中にあるらしい…………
「珍しいこともあるんだな…………」
「そうだね」
お互いにエレンの考えながら、間に浮かぶ月が、煌々と俺たちを照らしていた。
◇
「レイジングハートの損傷率95%…………修復には時間がかかりそうだな……」
空中投影のディスプレイに浮かび上がるレイジングハートの情報を見ながら、束は呟く。
その横に水色の髪の少女の映像が流れる。
「更識…………簪か……」
捕まえたと思ったら、いきなり強くなって、逆にやられちゃったことが束にとって気にくわなかった。
「そうだ!今度、殺るときは解剖だとつまらないからおもちゃにしよう!」
「うちの生徒に何をするつもりだ?束」
森から音もなく千冬が現れる。
「やあ、ちーちゃん」
「おう」
お互いに背中を向けたまま、束は岬の柵に腰を掛け、千冬はその身を木に預ける。
二人の間には、どんな顔をしているのか見なくてもわかるほどの確かな信頼があった。
「更識 簪…………かんちゃんは何者なの?」
「更識か?普通の女子生徒だぞ?」
「それはありえない!たがが第2世代が第6世代のISをダメージレベルEまで追い込む事など可能なはずがない!」
これは大きな誤算だった。
「まるで魔法を使ったかのように…………」
「……………………」
千冬は、答えられない。
しかし、束は続ける。
「武器を使ったならまだわかるけど、一切武器を使わなかった。その時点であり得ない。さらに、何もない所から氷を作る、雷の槍を作る。次元を越えた技術…………」
束すら手も足も届かなかった力…………
「残念だが……私もそれに関してはわからない……だが、一夏なら知っていると思うぞ?」
「いっくんか~」
確かに一夏なら簪の秘密を知っていた。
一夏も同じで摩訶不思議な力が使えた。
「ねえ、ちーちゃん。今の世界は楽しい?」
「そこそこはな」
「そうなんだ……」
岬に吹き上げる風が、一度強くなり上げた。
風が止むと束はいなかった。